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正しい猫の手懐け方


―――気まぐれな猫を手懐けるのは中々大変だ。

「オスカー様、仕事はいいんですか?」
ただいま俺が口説いているのは、この極上の毛並みを持つ綺麗な猫。決して他人に懐かず、そして何時も毛を立てながら他人を踏み込ませない猫。
「仕事など何時でも出来る。でもお前にこうやって逢えるのは今しかないだろう?」
「別に明日でも明後日でも逢えますよ」
「でも今この瞬間のお前に逢えるのは、今しかないからな」
そう言って細い腰を抱き寄せても、ぴしゃりと俺の手を撥ね退ける。―――中々、手強い。
「それならばずっと僕と逢っていないといけないんじゃないですか?」
「それでもいいな。色んなお前が見える」
「…何をバカな事を…オスカー様は仕事があるんでしょう?炎の守護聖様」
だけど手強ければ手強いほど、落としがいもあると言う事で。俺は日々こいつを口説く手間を惜しまない。どんなに手厳しくフラレても。
「仕事などとっくに片付けてきたさ。お前に逢えるのかと思うと仕事もはかどるものさ」
「…本当ですか?」
「本当さ、俺の瞳が嘘を付いているように見えるかい?」
「見えます」
ってきっぱり言いやがって…本当にこいつは手強い。何時になったらその綺麗な顔に笑顔を刻ませる事が出来るのか?俺は何時もそんな事ばかりを考えている。
―――笑ったら絶対に、綺麗なのにな……。

猫に、なる。
貴方好みの猫になる。
気まぐれで我が侭で、そして。
そして絶対に懐かない猫に。
そうしないと貴方は、僕に飽きてしまうでしょう?
貴方を取り囲む人間は無数にいるから。
堕ちてしまったら、貴方はもう僕に興味を見せないでしょう?
だから。
だから僕は貴方に堕ちない。
貴方がずっと僕を追い掛けてくれるように。

貴方の大好きな猫に、なる。

「お前の、髪」
貴方の大きな指が僕の髪に触れる。その手が見掛けよりもずっと。ずっと優しい事を僕は知っている。
「気安く触らないでください」
ずっと触れていて欲しいと…そんな事を思ってしまうから。だから僕はその手を遮る。そうしないと、きっと。きっとこのままどうなってもいいと思ってしまうから。
「髪にも触れさせてもらえないのか?本当に猫だなお前は」
「どんな猫に見えますか?」
―――貴方好みの猫に、見えますか?
「プライドの高い、気まぐれな猫だな。高級で非常に俺好みだ」
「貴方好みですか?」
「ああ、最高に俺好みだぜ」
……その言葉に僕は無意識に、微笑った………

第一印象は、ひどく美人だと。それだけを思った。
今まで口説いて落としてきたどの女よりも綺麗だとそう思った。
そして気が付いた。何故お前が綺麗なのかと。
そのこころが。そのこころが、何も塗られていないのだと言う事が。
今まで俺が出会った女たちは皆「仮面」を少なかれ被っていた。
巧みな駆け引きと、作られた笑顔。
どう言う顔をしたら自分が一番綺麗に見えるかを知っていた彼女達。
でもお前は、違った。
お前は自分を作らない。自分の『顔』に対してひどく無頓着だ。
だから惹かれた。惹き寄せられた。
お前には駆け引きがないから。作られたものがないから。
だからどうしようもなく惹かれた。

―――時々ガキみたいな恋をしているんじゃないかと、思う。

「イイ顔しているぜ、セイラン」
微かにお前が笑うのを、俺は決して見逃さなかった。どんな時も冷たく俺をあしらうお前が無意識に見せたその笑みに。その笑みに俺はどうしようもない程惹かれるんだ。
「別に何時もと変わりありませんよ」
「いや今、笑った。俺は絶対にお前の変化は見逃したりはしないぜ」
「……笑ってません………」
「笑ったぜ、最高にイイ顔でな」
珍しく敗北したのかお前は何も言わなくなった。そのスキにその無防備な唇を奪う。油断していたのかお前はそのキスを受け入れる。そして。
「―――僕は貴方好みの猫ですか?」
そして降参したのか、不意に聞いてきた。その言葉に俺はどうしようもない程、バカみたいに幸せそうに笑って。
「…最高に、好みだぜ…」
そう耳元に囁いて、そっと抱きしめた。お前は抵抗、しなかった。

貴方好みの猫になりたい。
貴方に好きになってもらいたい。
―――貴方に愛されたい……。

子供みたいな事をしているなと、僕は時々思う。

抱きしめられた腕の優しさに、僕は不意に泣きたくなった。だけど泣いてしまったら、もう何もかもが戻れなくなってしまう気がして我慢する。
「逃げないのか?珍しいな」
耳元で囁かれる優しい響き。本当は初めから、貴方から逃げる事なんて出来ない。逃げたいなんて思っていないから。だけど。
だけど逃げ続けた。貴方に追い掛けてもらいたいから。だから逃げ続けた。貴方に愛されたいと思っているから。
でも。でも本当は…その腕の中に捕らわれたいってずっと思っていた…。
「…たまには、いいでしょう……」
「ふ、今回はお前の敗北か?」
「―――そう言う事にしておきますよ、オスカー様」
そう言って僕は。僕は自分から貴方に口付けた。貴方のキスは溶けるように甘くて、そして焦されるに激しい。
そのキスに何時までも、溺れていたいけど…溺れていたら、ダメになってしまうから。
だってまだ。まだ貴方の心を全て僕に向けていないから。まだ貴方に追い掛けて欲しいから、だから。まだ。
―――まだ、貴方から逃げる。貴方の気まぐれな猫になる。

可愛い、俺だけの猫。
手懐けるにはひどく時間が掛かるけど。
けれどもそれだけの見返りはあり過ぎる程にあるから。
だからもっと。
もっと我が侭を言って俺を困らせてくれ。
もっと冷たくあしらってくれ。
だってそれだけ。
それだけ俺に関心があるって事だろう?

あまのじゃくで気まぐれなお前のこころなんて…俺には手に取るように分かるんだから。

「―――最高に俺好みの猫だぜ…お前は……」


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