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追憶


―――壊れた記憶の、破片。

あれは夢か現か…それとも幻だったのか?
分からない。ああ、分からない。
ぼんやりとした薄い膜の中に捕らわれているようで。
内面を静かに抉られ、そして壊されているようで。
それでも何かから逃れるように必死に。
必死に護っている自分がいた。

でも僕は何から自分を護っていたのだろう?


君の首を締めながら、僕はその腕に抱かれていた。君の熱い塊を身体の中に感じながら。
「―――ああっ!!」
奥深く貫かれ、僕は悲鳴のような声を上げた。身体を真っ二つに引き裂かれるような痛み。そしてそれと同時に激しく襲う快楽の波。意識が飲まれてゆく。飲まれていきたいと思った。
「…関口……」
名前を呼ばれているのが分かる。何時もと同じように冷たい声で。何時もと同じように冷めた声で。でも何時もと違うのは、僕の身体を貫く熱さと…言葉とは裏腹の優しい腕。
「…ああっ…はぁ…京極…堂……」
顔を見たくて。今どんな顔をしているのか見たくて、目を開こうとしたけれども。けれども開く事は叶わなかった。中の楔が乱暴に動いて僕を追い詰めてゆく。意識すら何処かへと消費されて、感覚すらも分からなくなって。ただ、ただ熱だけが。熱さだけが僕を支配する。
「…あぁぁ…あぁ……」
理由のない空洞と不安が僕を押し寄せ、それから耐える為に背中に腕を廻した。きつく、廻した。


これは、現実?これは、夢?それとも願望?
僕は君にこんな風にされたかったのか?こんな風に。
女のように腕に抱かれ、女のように貫かれて。
声を上げて。君の名を呼んで、そして。

そして君に支配されたかったのだろうか?


もしもこれが現実だとしたなら、この行為を受け入れているのは僕自身だし。
これが夢だとしたならば、この行為を望んでいるのは僕自身だ。
どっちに転んでも、僕は。僕はこうして君の腕の中に…君の腕の中に、いたかったのか?
…分からない。ああ、分からない。僕は。僕は……


鋭い刃物が、心臓を抉っているみたいだった。


背中に爪を立てた。ばりばりと音がして、皮膚を引き裂いているのが分かる。君の皮膚を引き裂いているのが。
「…はぁぁっ…ああ……」
犯されているのは僕なのに。組み敷かれているのは僕なのに。どうしてかな?どうして僕の方が加害者のような気がするのは。
「君はよほど僕を血塗れにしたいらしい」
血塗れに?ああ、背中ぺっとりしているよ。僕が爪で引き裂いたからだね。ぽたぽたと、血が流れているよ。
「…京極…んんっ……」
僕からキスをした。激しく舌を絡めながら。絡めてそして吸い付いて。噛みきった。舌を、噛み切った。
「…んんんっ…んんっ!!…」
それでも君は僕から離れない。より深く僕を抉って。より深く舌を絡め合わせて。僕の中に入ってくる。僕の中を犯してゆく。身体も心も、魂も。僕は捕らわれそして。
「んんん―――っ!!!!」
そして僕は、真っ白になった。


そのまま僕は手を伸ばす。
腕に廻していた手を君の首に。
君の首に手をかけて、そして。
そして、きつく締めた。


―――ああ、これは夢?ああ、これは現?





君がうっすらと笑った。君は多分僕をこうしたかったのだろう。
首を締めて殺して、そして。そして全てのものから君自身を護りたかったのだろう。
僕と云う存在がなくなれば『君』は護られる。
少なくとも内側から暗いつく闇に、浸透する狂気から。けれどもそれ以上に。
それ以上に僕が君に対する執着と、君が僕に対する執着が勝ったならば。
それは。それはただの破滅行為でしかない。

剥き出しにされた君に、もう他に何も護る術はない。


君の心の塊を取り出して。
その心臓に刃物を突き立てて。
抉って、掻き乱して。そして。
そして君を壊したならば。



「――――しているよ…君を………」



君が、笑う。うっすらと笑う。
指の力が弱くなって、そして。
そしてぱたりと手が落ちて。落ちた手が。
その手がそっと僕の背中に廻る。

ぽたりぽたりと、血を零しながら。


もうどれが夢で、もうどれが現なのか。
僕にすら分からなくなるほどに。



「…京極…堂……」



ひどくあどけない瞳が僕を見上げた。その瞳を見つめながら僕も微笑う。
きっと君はこの記憶すらも閉じ込めるだろう。自分自身を護る為に。自分自身を壊す為に。
でも僕は憶えている。この笑顔と、この狂気を。



何時か君が真実と向き合うその日まで。




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