ためらい



声にしようとして、そして出来なかった言葉。


言葉として口に紡げば、それで。
それできっと分かったことなのに。
言葉にしてちゃんと。ちゃんと確かめれば。


確かめれば、分かったこと。言葉にすれば、伝わったこと。


「…アレン……」
僕を抱きしめるその腕はひどく優しい。何時もそうだった。何時も、優しかった。優しかったけれど、でもそれ以上に。
「何?カイン」
それ以上に壊れるほどに僕を抱きしめて、そしてそのまま。そのまま僕の全てを奪うから。だからどうしても。どうしても、僕は。
「…何でもない…ただ」
僕は何時も君に聴こうとしている言葉を、告げようとしている言葉を、奪われてしまう。その激しい熱さと、熱の前では。
「―――ただ?」
見下ろす漆黒の瞳は、何時も僕だけを見ている。それに気付いたのは、何時だった?何時かこの視線に僕は気付いていた?そして何時から僕はこの視線を、自ら望むようになっていた?
「…どうして僕に……」
その先を告げれば答えは出るのに。どうして僕は何時も聴くのを躊躇っているのだろう?


マリアが来るまでは、ふたりだった。
ふたりでずっと、旅していた。他の誰もいないふたりだけの旅。
その時には何も思わなかった。その時には、感じなかった。
こうして抱きしめられても、身体を重ねても。
言葉も特に必要としなかったし、望みもしなかった。
けれどもマリアを護る君を見ていると。女の子だからと護る君を見ていると。

―――ひどく胸が、苦しかった……

ちくりと胸が痛んで。分かっていることなのに、苦しくて。
僕は男だから君に護られたいわけじゃない。一緒に戦いたいと思ってる。
けれども。けれども君が。君がマリアを傷だらけになっても護ろうとするのが。


どうしても、苦しい。どうしても、切ない。


聴いたこと、なかった。聴く必要がなかったから。
「…僕に…キスするの?…」
違う、本当は聴くのが怖かったんだ。怖かったんだ。
「―――カイン?」
もしかしたらこんな風に君が僕にするのは、深い意味などなくて。
「…どうして僕を…抱くの?」
ただの退屈しのぎなのかも、しれないって。
「どうしてって、そんなの決まっているだろう?」


「君が、好きだからだよ」


耳から降って来る言葉に、僕はそっと目を伏せた。聴きたかった答え。ずっと聴きたかった言葉。それはいとも簡単に僕に与えられた。こんなにも簡単に、僕に。
「もしかして、俺の気持ち信じていないとか?」
僕に君は、与えてくれた。こんなにもすんなりと、僕に君だけが与えてくれた。
「…ち、違う…そんなんじゃ…ただ僕は……」
いっぱい、いっぱい悩んで、聴けなかった想いを。どうしても聴くのが出来なかった想いを。
「…僕は……」
「僕は?」
「…その…僕が勝手に自分だけが…君を好きなのかなって…」
僕の言葉に君は驚いたような顔をして。そして。そして次の瞬間に、何よりも嬉しそうに微笑って、僕をきつく抱きしめた。


不安だった。やっぱり不安だった。
何も言わない君と、そしてマリアの存在が。
今まで言葉なんて特別に必要としなかった分だけ。
その分だけ、改めて気付かされた時には。
ただひたすら不安だけが胸に染みついて。胸に広がって。
どうしていいのか、どうしたらいいのか分からなくなって。

言葉にすることを、どうしても躊躇わずにはいられなくて。

でもちゃんと。ちゃんとこうして言葉にして。
想いを告げて。気持ちを告げて、そして。
そして戸惑っていた気持ちを、吐き出したから。


「君が好きだよ、カイン。ずっと、好きだよ」
抱きしめてくれる腕と、降り注ぐ言葉。その全てが。
「…アレン……」
少しずつ胸の痛みを消し去ってくれる。痛みを何処かへと。
「…うん、僕も…僕も、好き…」
遠い場所へと、連れ去ってくれるから。だから。
「…大好き……」
だからもう。もう何も、戸惑うことも躊躇うこともないんだと。


見つめ合って、そして微笑って。
そのままキスをした。いっぱい、キスをした。
大好きだって想いを込めて、いっぱい。


いっぱい、キスを、した。




「―――俺も少しだけ不安だった…君からその言葉を聴くまでは」



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