Squall



全てをこの雨が、洗い流してくれたらいいのに。


この穢れた想いも、この穢れた身体も、全て。
全てこの雨が洗い流してくれたならば。



「ここにいたの?」
呼ばれる声に振り返れば、僕と同じようにびしょ濡れになっている貴方がいた。水を含んだ碧色の髪がひどく。ひどくけぶる景色の中で、綺麗に見えた。
「…ユーリル様……」
伝説の、勇者様。あの人が探し続けて、ずっと捜し求めていた人。その人が、今。今ここにいる。僕と同じように細かい雨に、打たれながら。
「ユーリルでいいよ、ホイミン。今更他人行儀もないだろう?」
口許だけで微笑う、仕草も。全てが人を惹き付けてやまない存在。どんなに闇に埋もれようともその光は何処までも眩しく照らすのだろう。どんなになっても、その存在は。
「でも貴方はやっぱりユーリル様です。ただ一人の勇者様」
探していた人。あの人がずっと探し続けていた人。あのひとが、自分自身よりも大切な人。
「その呼び方、好きじゃない。僕は勇者である前に…ただ一人の男だよ」
「―――あっ……」
不意に手首を掴まれたかと思うと、そのまま腕の中に抱きしめられた。雨の匂いのする身体。その中に含まれる彼特有の涼しげな薫り。何時しかこの薫りを、僕は憶えていた。身体で、憶えていた。
「だから君からそう呼ばれるのは、不本意なんだよ」
顎に手をかけられ、そのまま上を向かされると。貪るように僕は口付けられた。


これは、背徳の喜びだ。
愛する人の唯一の存在。
貴方が必死で護るものを。
僕はこうして穢している。

…こうして、貴方を想う穢れた身体を…差し出している……。


降り続ける雨。止むことのない、雨。細かい雨が無数に僕らに注がれ、煙った霧がふたりを隠す。罪に濡れたふたりを、隠してゆく。
「…ユーリル様…待っ…こんな所で……」
濡れて剥き出しになった石の壁に身体を押し付けられた。塀の影になって見えない場所だったけれど、絶対に人が通らないとは限らない。それでも貴方は。貴方は僕を、抱く。
「いいよ、誰かに見られたらそれで。そうしたら誰も僕を勇者だとは想わないだろうね」
「…あっ……」
濡れて張り付いた服の裾から手を忍ばせ、貴方は僕の肌に触れる。雨に濡れた肌は冷たく冷え切っていて、そして貴方の手もひどく冷たい。
「…ダメ…ですっ…あぁ……」
けれどもその冷たさもこうして。こうして肌が、指が、触れるたびに熱が灯される。胸の果実に直に指で摘まれ、そこからじわりと熱い熱が広がった。
「…ホイミン……」
「…あっ…んんっ……」
髪に指を絡められて、そのまま貪るように口付けられる。生き物のような舌が僕の口内に忍び込み、そのまま根元から絡め取られた。
「…んんっ…ふぅっ…ん…はぁっ……」
口許から飲みきれない唾液が伝う。その液体が降り注ぐ雨と交じり合って、ぽたりぽたりと、僕の顎筋から零れていった。けれどもそれを拭うことから、貴方の唇が、指が許してくれなかった。
「…ふぅ…んっ…んん……」
肌を弄る指先が、冷たく熱い。触れられるたびに身体に熱が灯り、熱い吐息が零れてゆく。僕の身体を知り尽くした指先が、ただひたすらに追い詰めるためだけに。
「…ユーリル…様っ…はぁっ……」
唇が開放されても、身体と心は開放されなかった。零れる甘い息が、霞んでゆく意識が。その全てが、僕を追い詰め、壊してゆく。
「―――君の髪が好きだよ。金色で綺麗だ。まるで光みたいに」
「…あぁんっ…はぁっ…ユーリル…様っ……」
壊して欲しいなと、想った。そうしたらこの無限のような苦しみからも、逃れることのない切なさからも、解放されるよう気がして。全てから、解放されるような気がして。
「本当は、君は闇なのに…ここだけが光のようだね」
「―――ああんっ!」
髪に一つ口付けられながら、貴方の手のひらが僕自身を包み込んだ。その刺激に僕は自分で立っている事が出来ずに、ぎゅっと貴方の背中にしがみついた。がくがくと脚を震わせながら。
「…あぁ…ダメ…僕…はっ…ぁぁ……」
「ちゃんと脚、開くんだよ。ほら」
「…あぁぁっ…ふぁっ……」
どくどくと脈打つソレを手のひらで包まれながら、敏感になった胸の果実を口に含まれる。歯を立てながら言葉を紡がれれば、予想のつかない刺激に僕の身体は追い詰められた。
「…あぁ…もぉ…ユーリル…様…もぉ…僕は……」
目尻から零れる涙も雨にかき消される。口許から零れる唾液すらも。それでも貴方は分かっているのだろう。僕が堪えきれなくなっていることを。僕を知り尽くした、貴方の指だから。
「イキたいの?だったら『好き』だって言って」
「…ユーリル…様……」
「好きだって言って。あの人よりも、好きだって…言って……」
快楽で潤んだ瞳で、僕は貴方の顔を見つめた。見つめた瞬間に、後悔をした。こんな真剣で痛い瞳を…僕は貴方から見たくはなかった。貴方からは、見たくなかった。


だって僕は貴方に、残酷に。
ただひたすら機械的に。
ただ穢されるためだけに。
その為だけに、抱いて欲しかったから。

――――愛のない冷たい指に、僕は溺れたかったから……



「…言って…ホイミン……」
多分、好きです。貴方が好きです。
「…ユーリル…様……」
でも僕はそれ以上に、あのひとを。
「…好き…で…す……」
あのひとだけを、愛しているんです。


ずっと、そばに。ずっと、一緒に。
あのひとといたかった。あのひとのそばにいたかった。
ただひとり、僕を連れ出してくれたあのひとの。

…あのひとのそばに、ずっといられたら…よかった……。



「―――あああっ!!」
脚を持ち上げられて、そのまま深く貫かれた。壁に背中を押し付けられて、冷たい石と背中が擦れあう。そこから傷が出来て、うっすらと血が滲んできた。
「…あああっ…ああんっ……」
それでもこの行為が止まることはない。そして止めて欲しくなかった。僕は貴方の背中に深く爪を立てて、喉を仰け反らせて喘いだ。
貫かれる痛みと、媚肉を引き裂かれる感触が、何よりも僕を感じさせた。貫かれていると、想うたびに。穢させていると想うたびに、僕は。僕は思う。

――――こうして僕は、この綺麗な勇者様を穢しているのだと……


「…あぁぁっ…もぉっ…ああんっ!!」
綺麗な人。光に包まれた人。あのひとが捜し求めていたひと。
「…もぉ…僕…僕…あぁぁ……」
ただひとり捜し求め、そして願っていたひと。
「ああああ――――っ!!!」
そのひとが僕を抱き、僕を穢している。


自虐的な悦びだと、思った。救われないしあわせだと、思った。
けれどもそれが。それが今の僕自身だから。



「…何時か君を…『あのひと』から……」
口付けられる。髪に、頬に瞼に、そっと。そっと口付けられて。
「…君を必ず…奪ってみせる…僕だけのものに……」
そして与えられる優しさが、何時しか静かに僕の胸を満たす頃に。




何時しか僕のこころは、少しずつ壊れていった。





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