ココロ


ワタシノ名前ハ、エリート言イマス。
ゼボット様ニ作ラレタからくりデス。
からくりダカラココロモ気持モ、何モナイデス。
タダ、命ジラレタママ動ク、タダノ機械デス。
ワタシハ機械ナノデス。


―――何モ分カラナイデス。気持チモココロモ、何モナイカラ。



「僕はもう誰も信じない。人なんて、誰も信じない」
人ヲ信ジナイト、貴方ハ言イマシタ。モウ誰モ信ジナイト。ソシテ。
「からくりは、いい。僕を裏切らないから」
ソシテ、ソウ言ッテ機械デアルワタシヲ抱キ締メマシタ。ワタシハ機械ダカラ、信ジルモ何モナイノデショウ。ワタシハ人デハナイカラ、貴方ニトッテ。
「…僕を…裏切らないから……」
ソウ言ッテ、貴方ハ微笑イマシタ。微笑イマシタ。ワタシハコノ瞬間ニ、自分ガからくりデアル事ガ、機械デアル事ガ嬉シクテ…嬉シカッタンデス。


気持チナンテ、ワタシニハナイノニ。
ココロナンテ、ワタシニナイノニ。

ナノニ、嬉シクテ。トテモ、嬉シクテ。
ワタシハ、貴方ニ作ッテモラエテ。貴方ノからくりデ。

トテモ、トテモ、しあわせダト想イマシタ。
しあわせ。しあわせッテ、言葉シカ知ラナイケド。
デモキット。キット、コンナ気持チダト。
コンナ気持チガ、しあわせダト、想イマシタ。



タダ毎日ガ静カニ過ギテ、行キマシタ。
ワタシト、貴方ダケノ静カナ日々。トテモ静カデ、優シイ日々。
ワタシト誰カヲ、貴方ガ重ネテイルト、分カッテイテモ。
ソレデモ、しあわせデシタ。貴方ガ、クレマシタ。
からくりノ、ワタシニ。ココロノナイワシタニ。魂ノナイワタシニ。

貴方ダケガ、クレマシタ。タダヒトツ、しあわせヲ。


ゼボット様。ゼボット様。
ソバニオイテ、クダサイ。ワタシ何モ出来ナイケド。
デモ。デモ貴方ノ為ダケニ生キタイカラ。
ダカラ、ソバニ。ソバニ、オイテクダサイ。

ア、 デモ…からくりナノニ…生キテ、イルッテ…可笑シイデスカ?



「…エリー…僕のエリー……」
息ガ、途切レテユク。ソレデモ、呼ブ名前。
「…エリー…ずっと…僕は……」
ソレハ、ワタシデナクテモ。ワタシノ事デナクテモ。
「…君を…ずっと……」
デモ、ワタシノ『名前』ダカラ。


ゼボット様。ワタシ、しあわせデス。
貴方のからくりデ、しあわせデス。
貴方ノソバニイラレテ、しあわせデス。




ダカラ、モウ一度、瞳ヲ、開イテクダサイ。




私は、エリー。ゼボット様に作られたからくりです。
ただの機械です。ただの冷たい入れ物でしかないのです。
でも。でもゼボット様は私にただひとつのものを、与えてくれました。
自らの死と引き換えに、私が貴方を永遠に失う事と引き換えに。
ただひとつのものを与えてくれました。


それが、この『こころ』です。貴方を愛した私のこころです。


「…ゼボット様……」
私の手は冷たくて、貴方に体温もぬくもりも分け与えることは出来ないけれど。それでも。それでも何度も何度も私は貴方の頬を撫でた。
「…ゼボット様…大好きです……」
しわくしゃに年老いた貴方でも。真っ白な髪になった貴方でも。私は愛している。ずっと、愛している。永遠に貴方だけを、愛している。
「…愛して…います……」
たって貴方だけか私にこころを植えてくれた。貴方だけが私に与えてくれた。この作られた身体でも、作られた命でも。それでも貴方だけが。貴方だけ、が。
「…永遠にエリーは…貴方のからくりです…貴方だけの……」
貴方の頬が水滴で濡れた。零れ落ちる水。これは、何?これは、なに?


私の瞳から零れ落ちるもの。
私の頬から流れゆくもの。



「…エリーは…ずっと貴方だけの『からくり』です……」



そっと指先で零れる雫を拭いました。そして。
そして冷たくかさかさになった貴方の唇にひとつ。
ひとつキスを、して。私は。私は、壊れました。




貴方が宿してくれたこころだから。貴方だけのものなのです。






「ゼボット様、オハヨウゴザイマス」
ベッドの上には腐敗した原型を止めていない、屍。その屍に目の前のからくりは『ゼボット様』と、呼んだ。
「オハヨウゴザイマス。今日ハイイ天気デスヨ」
外からは横殴りの雨が降っているのに、からくりはそう言った。



…外からは激しい雨が、降っているのに……


 

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