OVER



――――境界線を越えた先に、あるものは。


子供だからってお前は言った。
ガキはガキらしくしろよって。
でもガキだって。でも子供だって。
精一杯生きて、そして。そして、俺は。


…お前のことが、好き…なんだ……



まだガキだからって、何時も言っていた。いやそう言う事で自分に言い聞かせていた。こんなガキに俺が本気になって、そして。そして夢中になっているのを自覚するのが怖かったから。夢中になっているのを、認めるのを。
でも。でも、今。今俺は自分の気持ちを否定も隠すことも出来ないことに、気が付いた。今この瞬間に、気が付いた。
「…ヒュウっ…何すんだよっ!…」
大きな瞳が驚愕に見開かれている。こんな顔はまだ何処か幼くて、俺の良心がちくりと痛むけれど。けれどもそれ以上に、俺は。
「何ってガキじゃねーんだから、分かるだろう?」
「って何時もお前が俺をガキだって言ってんじゃねーかっ!」
噛み付いてくる元気よさに俺は無意識に目を細めていた。こんな所が俺は。俺はどうしようもなくお前に惹かれているんだって。
「だからガキ扱いして欲しくねーんだろ?」
「だっだからっていきなりこんな…っ!」
暴れて振り上げてきた手首を掴んでそのまま強引に唇を塞いだ。キスしたのは初めてじゃなかった。何度も唇は重ねてきた。重ねたというよりも触れただけだったけれど。触れるだけの子供でも出来るキス。それが俺達の『今』の関係だった。けれども。
「…んっ!んんっ……」
けれども今。今自分からその関係を壊そうとしていた。


きっかけは本当に些細なことだった。本当に些細な、事。
お前とお前の双子の兄貴と一緒に楽しそうに笑っていた。
俺の知らない顔で。俺が見たことない顔で。そんなお前を見ていたら。

――――俺はどうしようもなく、嫉妬していた。


「やめっ…ヒュウっんんっ!」
触れるだけじゃないキスをした。顎を捕らえて強引に唇を開かせて、そのまま舌を忍びこませる。逃げ惑うソレに自らの舌を絡めて、音を立てながら根元から吸い上げた。
「…んっ…んんっ…んんんっ!」
苦しいのか首を左右に振りながら身体を擦り上げて逃げるお前を抑えつけ、深く口中を弄った。びくびくと組み敷いた身体が震えるのを感じながら。
「…んんっ…ん…はぁっ……」
息が苦しくなるほど唇を合わせ、やっとの事で解放してやる。そのとたん零れた甘いような声に、俺は。俺はひどく欲情していた。

ガキだと思っていた、コイツに本気で欲情していた。

「…なっ…あっ……」
髪を撫でてやれば驚いたように瞳が見開かれる。それを瞼の裏に焼きつけながら、口許に零れる唾液を拭ってやった。その感触に戸惑うような顔をしたから、また。また髪を撫でてやった。
「…何で…いきなり…こんな……」
抵抗は、止まっていた。ただ呆然とした顔で俺を見つめて。見つめながら困ったような表情を浮かべる。それが。それが俺にとっては。
「―――お前が楽しそうにしてたら」
「え?」
「ルゥに向かって…俺が見た事ない顔して笑ってたから……」
それ以上はあまりにも情けない気がして俺の口からは言えなかった。ってここまで言ってしまえば同じような気がするのだけれど。けれども何となくそれ以上口に出すのは。
「………」
そんな俺にお前は何も言わなくなった。何も言わずに俺の顔を凝視して。凝視して、そして。そして次の瞬間に、微笑った。子供みたいに声を出して、お前が笑った。



何時も俺をガキ扱いして、子供のキスしかしてくれなくて。
俺はもっと。もっと違うものが欲しいのに。欲しいのに、お前。
お前全然くれなかったから。だから俺はお前にとって。
お前にとってやっぱりただのガキでしかないんだって、思っていた。

けれども違うって。違うんだって、分かったから。今、分かったから。


「笑うなっ!」
好きだ。俺お前が、好き。
「だってお前のがガキみたいだ」
本当に、好きだ。何時も意地悪だけど。
「う、うるせー」
でも本当は誰よりも優しいお前が。
「でも…俺……」
そんなお前が、好きなんだ。


俺からキスした。さっきお前がしてくれたみたいに、子供じゃないキスを。



ぱさりと音ともにお前の身体をシーツに埋めた。さっきみたいには乱暴にしないで、そっと。そっと寝かせてやる。
「…あっ……」
やたら暑苦しい服を脱がせて、そのまま小さな胸に触れた。飾りのように付いている乳首を指の腹で転がせば、細い身体が小刻みに揺れる。そんな所が、愛しかった。
「…あぁっ…ヒュウっ……」
潰すように突起を転がしながら、空いた方のソレを口に含む。痛いほどに張り詰めた胸の果実を舌で舐めれば、お前は面白いほどに反応を寄越した。
「…あぁぁ…んっ…はぁっ……」
「お前の声、可愛いな」
「…!…な、何言って……」
「可愛い、レイ。俺の」
「…ああんっ!……」
胸を指で弄りながら手を下腹部へと伸ばした。まだ完全に大人になりきっていないお前のソレに指を触れる。手のひらで包み込んでやれば自身は少しずつ立ち上がり始めた。
「…あっ…あぁっ…ぁ……」
刺激に耐えられないのか首を左右に振りながら、身体をずらそうとする。それを抑えこむように覆い被さり、顔中にキスをした。睫毛から頬から鼻筋から、全部。全部、キスをした。
「…はぁっんっ…ヒュウっ……」
白い肌が朱に染まる。普段素肌を露出させていないせいか、お前はひどく白い肌をしていた。その肌に紅いシルシを付けられる事が、ひどく俺を喜ばせる。
「俺のモンだ、レイ」
「…あぁんっ…あぁ…俺…俺っ…もぉっ……」
手の中のお前の分身がどくどくと震え、先端からは先走りの雫を零していた。それを割れ目に擦りつけてやって、強く扱けばあっけなく俺の手のひらに白濁した液体を吐き出した。


「――――ひゃんっ!」
脚を広げさせ双丘を指で割った。そしてまだ何も知らない蕾にゆっくりと舌を這わす。入り口を丹念になぞり、そのまま舌を侵入させた。
「…あ…ぁぁ…そんなトコ…舐め…あ……」
「舐めねーとお前が後で辛いぞ」
「…って…だからって…あぁっ……」
唾液で何度も入り口を濡らしながら、奥の媚肉へと舌を伸ばした。ちゅぷりと音がするほどに、蕾を湿らせる。充分に濡らした所で舌を外し代わりに指を入れた。
「…くっ!……」
流石に指とはいえ異物など飲み込んだ事のないソコは入り口を閉ざし、指を受け入れてはくれなかった。何度か入り口をなぞりながら少しずつ蕾を開かせてゆく。それでも中々受け入れてはくれなくて。
「…くふっ…はっ…あっ!」
このままでは埒があかないと判断し、俺は一度果てたお前のソレにもう一度指を這わした。一度正射した分身は刺激に敏感になっていて、たちまちに形を回復させる。その快楽に緩んだ隙に指を一気に引き入れた。
「…あぁっ…いたっ…くっ……」
それでも異物に痛がるお前の額にキスをしながら、指を奥へと進めた。初めは閉ざされていた蕾も前への愛撫と繰り返される挿入に、何時しか異物を受け入れていた。
「…くんっ…はぁっ…ん……」
それを証明するようにお前の声が艶めいてくる。それを確認しながら中の指の本数を増やした。中でくちゅくちゅと掻き乱しながら、媚肉を広げてゆく。何時しかその蕾が刺激を求めてひくひくと震えるようになるまで。
「――――あっ……」
ずぷりと音ともに指を引き抜いた。引き抜かれた感触が名残惜しいようにお前の腰が揺れる。そんな様子を見下ろしながら俺は硬くなった自身を取り出した。
「…レイ……」
名前を呼ぶ。そうすれば大きな瞳は見開かれた。涙を滲ませながら、それでも懸命に俺を見上げる。
「…ヒュウ…俺……」
戸惑いながら俺の名を呼ぶ。こんなお前を知っているのは俺だけだ。何時も生意気で大人びた事しか言わないお前の。そんなお前のこんな所を。
「怖いか?」
俺だけが、知っている。俺だけが、ひとりいじめ。そんな事を思ったら、どうしようもない程にお前の事が好きだって。好きだって、思った。
「…少し…怖い……」
「なら、俺の背中にしがみ付いていろ」
俺の言葉に小さく頷いて、そして。そしてその両腕が背中に廻される。それだけでひどく。ひどく満たされるのは、お前だからだ。他でもないお前、だからだ。


「―――ひぁっ!」
脚を広げさせて先端部分を埋め込む。それだけでお前の額からは痛みのための汗が零れて来た。
「力抜け、レイ」
「…ふっ…くっ…あぁぁっ!」
言われた通りに身体を弛緩させようとしても、中々出来ないらしい。それでも少しだけ緩んだのを確認して、俺は身体を進めた。
「…あぁっ…痛い…っヒュウっ!……」
「痛いのは最初だけだ。だから少し我慢しろ」
そう言われても出来る訳ねーよなぁと思いながらも、俺は身を進める事を止められなかった。中途半端に止める方が逆に辛いだけだし、それに。それに何よりも俺自身の欲望が、持ちそうになかった。引き裂くような音ともに俺はお前の中に楔を埋めこんでゆく。
「…あああっ…あぁ…ヒュウっ…痛いって…言って…ああっ!!」
楔を全て埋め込んだ所で、一端動きを止めた。それと同じに痛みのせいで萎えていたお前自身に手を添える。その途端ぴくんっと小さな身体が鮮魚のように跳ねた。
「…ああっ…あぁ…待って…動くなっ…あぁぁ……」
それを確認してから俺はお前の中を動き始めた。中を突きながら、お前の一番感じる個所を探り当てる。ある一点を突いた途端、お前の身体が電流を流したように反応をした。俺はソコを集中的に突いて、お前を攻め立てる。
「…あぁっ…あぁんっ…あぁぁ……」
ソコを突けば突くほど、お前の声は甘い悲鳴へと変化していった。お前の中の俺もきつく締め付けてくる。その熱さと媚肉に俺自身も限界だった。そして。
「―――出すぜ、いいか?」
耳元で囁いた言葉にお前はこくこくと頷いた。多分意味なんて分かっていないだろう。けれども、頷いたから。
「ああああっ!!!」
抉るように中を貫くと、その熱い媚肉の中に俺は自らの欲望を吐き出した。



「…痛いぞ…ヒュウ……」
「って俺も痛いぞ。お前のせいで背中」
「そんな背中ぐらい俺に比べたらっ!」
「ああ、そうだな。俺が悪かった」
「…謝るな……謝ると怒るぞ」
「何でだよ?」
「…だって…それじゃあ……」


「…俺とした事…後悔しているみたいじゃんか……」


自分の言った言葉に照れたように視線を外してシーツに顔を埋めるお前を。そんなお前を抱き寄せて。抱きしめて、俺は。
「―――する訳ないだろ?…俺のモンになったんだし」
俺はその額にキスをする。その髪にキスを、する。大事な大事なお前にキスをする。
「…ヒュウ……」
「へへ、俺だけのモンだ」
そして俺はお前よりもガキみたいに、ぎゅってお前を抱きしめた。




「…大好きだぜ、レイ……」