海を渡る船



――――何時か、俺はあの海に還えるから……


「あんたの髪は、潮の匂いがするね」
鎧を脱ぎ捨てた身体は、リアルに俺に『女』を見せつけた。あれだけ戦場で剣や斧を振り回しているのにこうして肌を晒せば、丸みを帯びた女の身体だった。
「そりゃーね、俺はずっと海で生きてきた」
ベッドの上に座る俺の膝の上にその身体を乗せ、そのまま髪に顔を埋める。何も身に付けていない肌からは微かな甘い薫りがした。それは本当にこんなにそばにいかなければ分からない微かな、薫り。でもそれが逆に俺にとってはひどく。ひどくそそるモノだった。
「あんたにとって海は…故郷みたいなもんなんだろうね」
口許にうっすらと笑みを浮かべて俺を見下ろした。その顔は戦いの女神と言われた、その顔とは全く別の。別のひどく優しい顔、だった。
「ああ故郷だ、俺にとって海は」
その笑顔を瞼の裏に刻みながら、その唇を思いのままに塞いだ。


何時か俺はあの海に還えるから。あの蒼い海、へと。
その時にお前が作った街の人達を運ぶ、船となって。
俺の故郷をもうひとつ。もうひとつ、作りたい。

…海とは別の故郷を…お前の中に…作りたい。


重なり合う唇が濡れた音を立てる。その音に煽られながら、何度も何度も唇を重ねた。舌を絡めあい、吐息を縺れさせて。お前の指が俺の髪に絡まり、そのまま強く引き寄せる。
「…んっ…ふっ…ん……」
被さるようにお前の唇が俺の唇を吸い上げ、飲みきれなくなった唾液が伝った。お前の口許を流れ俺の顎に掛かり、そのままぽたりと白いシーツの上に零れていった。
「…はぁっ…ぁ…んっ……」
素肌が俺の身体に押し付けられる。二つの胸の膨らみが俺の胸板で押し潰される。その膨らみに触れたくて手を伸ばそうとしたが、唇を貪るお前の身体がより押しつけられ手を挟む余裕はなかった。
何度も何度も俺の口中を弄る。唇が、こめかみが、痺れるほどに。とろりと溶け合う唾液が髪に絡まり、顎を伝い、シーツに染みを作るまで。
「…はあぁ…あっ!……」
唇が解放されたと同時に耐えきれずに俺はその白い胸を鷲掴みにした。強く揉めば、ぴくんっと白い肩が跳ねる。そこに顔を埋めながら、俺は柔らかい乳房の感触を楽しんだ。
「…あぁっ…そんな強く…揉むなっ…あぁっ……」
「お前が俺を焦らすからだ」
「…ひどいこと言うねえ…あたしはそんな事…してないよ…ああっ!」
背中に腕を廻しそのまま強く引き寄せた。胸に顔を埋めその谷間に舌を這わす。同時に手のひらから零れるほどの乳房を揉みながら。
「…はぁんっ…あぁ…んっ…ふ……」
胸の谷間からとろりと唾液が伝った。それが白い肌を伝い、茂みに落ちた。そこに指を触れようとして、お前の手で静止させられる。そしてそのまま俺の身体をベッドに押し倒して。
「…もっとイイ事しようじゃないか……」
艶やかに濡れた唇から紅い舌を覗かせながら、お前は妖艶に微笑った。


「…んっ…はむっ…んん……」
お前の指が俺自身を掴みそのまま先端に舌を這わせる。その間にも肌に押し潰された胸の感触を感じて、俺の欲望は増殖させられた。
「…ふ…んんっ…は……」
先端の割れ目を何度か艶めく舌が行き来をし、そのまま窪んだ個所をぺろりと舐める。側面のラインを辿るように舌が伝い、袋の部分を指で転がされた。
「…ギース…あたしのも…はぁんっ!」
脚を広げ俺の顔眼下に茂みの奥の花びらを、晒す。それは既に薄く色付き、ひくひくと蠢いていた。その入り口に舌を忍ばせれば、ぴくんっと身体が跳ねる。
「…はぁっ…んんっ…はふぅ……」
ぴちゃぴちゃと音を立てながら俺はお前の秘所を舐め続けた。その間にもお前の口に俺自身が含まれる。生暖かい口内に肉が包まれ先端をきつく吸われ、俺のソレはどくどくと脈打った。
「…んんっ…んんんっ!」
腰を押し付けより深い刺激をもねだりながらも限界まで膨れ上がっている俺を口に頬張る。ぽたりと俺の脚の付け根に落ちた雫は、唾液なのか涙なのかここからは見えなかったけれど。けれども嬲っている器官は淫らに蠢き蜜を滴らせている事から、お前が感じている事は分かった。そして。そして俺は。
「…エキドナ…俺…もう……」
「…いいさ…出しなよ…あたしの顔に……」
そう言ってお前の爪が抉るように俺の割れ目を引っかいた。その刺激に俺は耐えきれずに白濁した液体をお前の顔にぶっ掛けた。


顔に散らばった白い液体がひどくお前を淫乱な生き物に見せた。普段戦場で戦うお前とはまるで別人の淫らな生き物に。
「…今度はあたしも…満足させてよね」
お前は身体の方向を変え、吐き出したばかりの俺自身を掴んだ。そしてそれを自らの入り口に当てると、そのまま一気に腰を下ろして俺を飲みこんだ。
「…あっ!…ああああっ!!」
「――――っ!」
果てた開放感に浸っていたはずの俺自身に再び強い刺激が与えられる。きつく俺を締め付ける内壁が、淫らに収縮してゆく。
「…あああっ…あああっ…イイ…イイっ…あぁぁ……」
ずぶずぶと音を立てながらお前の秘所は俺を飲み込み、そのままお前は自分から腰を振った。擦れ合う肉の摩擦がひどく熱い。溶けそうな熱さだった。
その熱さに俺の楔はたちまちに回復をし、お前の媚肉を突き刺した。強い抵抗を押し広げるように、奥へと。
「…ああんっ…ああっ…もっとっ…あああ……」
髪が乱れ汗と顔に掛かった精液が交じり合い、ぽたりぽたりと俺の腹の上に落ちた。その熱さに眩暈すら覚える快楽が俺を襲い耐えきれずにその腰を掴み、自ら揺さぶった。
「…あんっ…あんっ…イイっ!…イイよぉっ……」
がくがくと腰を揺すればそれと同時に胸が揺れた。白い剥き出しになった乳房が振動で揺れて。そして。
「ああああああっ!!」
そして子宮まで届くほどに深く突き上げ、俺達は同時にイッた……。



「…あんたの…船…最高にイイ…あたし…あんたに…酔わされた……」



繋がったままで覆い被さるようにまた唇を重ねてくる。
俺は積極的にそれに答えた。
ぬちゃぬちゃと音を立てながら、何度も何度も舌を絡め合わせて。


「…ずっと…あたしを乗せて…いて……」
「…ああ…俺はお前専属の…船乗りだ……」
「…ふふ…最高だねぇ…あんた……」



何時かお前が俺のとっての最期の故郷になるように。
海を渡り続ける俺の…俺の、最期の場所になるように。そして。
そしてお前にとっても俺がただひとつの船になるように。



――――何時かあの海を渡る船に…ともに乗ってゆこう……