父なる天と母なる大地に、誓う。
貴方だけを、護ると。貴方だけを護る、と。
この身体を盾にし、この腕を剣にし。
――――私は誓う…貴方だけの武器になると。
剥き出しにされた白い脚に、シンは口付けた。スーの前にしゃがみ込み、しなやかなその脚に。
「…シン……」
頭上から零れるスーの声が微かに震えていた。口許から零れた小さな吐息は甘く、白い素肌がほんのりと朱に染まる。
「―――スー様…無理をする事は私が許しません」
サカ人特有の黄色を帯びた肌をしながらも、スーのそれはひどく透明感があった。同じサカ族のシンの肌が褐色に近い色をしているのに対しても、スーのそれは真珠を思わせるほどだった。それでもエトルリア人のような白とは違う…暖かみのある色だったが。
「私は無理などしていない」
「ならばこの傷は?」
「…あっ……」
スーの太腿にシンの手が触れ、そこにくっきりと浮かんだ朱の線にざらついた舌が触れる。シンの唾液が傷に染みこみ、微かにスーの眉が歪んだ。けれどもシンは舌の動きを止めずに何度も何度もその傷を舌で辿る。その感触が傷口を行き来するたびにスーの口からは痛みとも、甘さとも取れる吐息が零れて来た。
「私がスー様の傍にいながら…こんな傷を付けさせてしまった」
「それは違う…私は貴方が敵から狙われたから…」
「私が敵から狙われなければ貴方が傷を負う事はなかった」
「…シンっ……」
唇が離れて見上げてくるシンの双眸がひどく真剣で、スーは胸の痛みを抑えきれなかった。何時も、こうだ。彼は何時もこんな瞳を自分へと向ける。自分が傷つくのは幾らでも構わないのに、自分が少しでも傷つけられるとそれが許せないと。許せないのだと、瞳が告げる。
「―――貴方に傷を負わせるものは…私ですら許せない」
「…あっ……」
シンは起き上がるとそのままスーを座っていたベッドの上へと押し倒した。傷の手当てのために上着しか身に着けていなかったスーは、たちまちにシンの手によって生まれたままの姿にされ、肌を剥き出しにされる。その肌にシンの手が、触れた。
「…シン…あっ……」
大きな手がスーの胸に触れる。しなやかな獣を思わせるスーの身体は、無駄な肉は一切なかった。逆に女らしい丸みを帯びた身体でもなかった。それでもこうして。こうしてシンの手に暴かれ、女としての悦びを刻まれた肌は、微かな刺激ですら反応を寄越すようになっていた。
「…ダメ…あぁっ……」
小ぶりな胸の膨らみをシンの大きな手が鷲掴みにした。それをぎゅっと揉めば、スーは耐えきれずに身体を小刻みに震わす。それを確かめながらシンは胸への愛撫を重ねた。乳房を手のひらで包み込みながら、尖った乳首を指先で摘む。そのたびに組み敷いた身体がびくびくと痙攣し、感じている事をシンに伝えた。
「…あぁ…シン…いやぁ…んっ……」
「嫌なら私の身体を引き剥がせばいい。そうしたら止めますよ」
「…そ、そんな事…あ……」
そんな事、出来る訳がなかった。どんなに口で嫌と言っても身体が求めている事がスーには分かるから。シンによって女として開発された身体が刺激を求めてうねるのを、自分が止める事が出来ないのも。
こうやって指で触れられて、強い刺激を与えられて、身体が濡れてゆくのを…止められないから。
「…あぁんっ…はぁっ……」
肌に熱が灯り、ほんのりと汗ばんでゆく。乳首は痛いほどに張り詰め、無意識にその手に胸を押し付けているのが。指の腹で擦れ合う突起の感触に睫毛を震わせるのが、止められないのを。
「スー様、貴方は私が護ります」
「…シ…ン……」
「誰にも傷つけさせない…私が貴方の全てを護るから」
「…やぁっ…あっ!」
足首を掴まれそのままMの形に曲げられた。そして露わになったスーの花びらにシンは舌を忍ばせる。薄い茂みを掻き分け、中の媚肉をぴちゃりと舐めた。
「…ああんっ…シン…そんな所…あ……」
外側の柔らかい肉を舌が辿り、そのまま秘所へと忍びこんでゆく。中の濡れた媚肉を舌でつつけば、耐え切れずスーの手が強くシーツを握り締めた。
「…あぁっ…ダメ…そんな…汚いっ……」
「貴方のモノならどんなモノでも綺麗です…スー様」
「…くふっ…はぁっ…あぁぁ……」
ぴちゃりぴちゃりと舐める音がスーの身体に響く。その音に耐えきれずスーは顔を横に向けてシーツに顔を埋めた。それでも濡れた音は身体中に響き、スーの羞恥を煽る。刺激から逃れようとすればするほど意識はそこに集中してしまい、スーの下半身を濡らした。
「…あぁ…ダメ…シン…そんなっ…あ……」
耐えきれずに零れた蜜をシンは音を立てながら舐めた。ちゅぷちゅぷと聴こえてくる淫らな音に、スーの神経が痺れてゆく。身体の熱が一心に集まり、肌の火照りを止められない。小刻みに身体は痙攣し、ひくひくと蕾は蠢いた。
「…ああっ…あんっあんっ!……」
剥き出しになったクリトリスを歯で捕らえられカリリと噛まれた瞬間、スーの身体は電流を流されたように大きく跳ねた。それを確認してシンはそこから顔を離した。そして。
「――――スー様」
「…あっ!……」
再び足首を掴まれ、そのままシンの肩に乗せられた。そしてスーの入り口に硬いモノが当たる。それの正体に気付いてスーは睫毛を震わせた。けれどもシンはそれをスーの中に収めようとはせずに、入り口を先端でなぞるだけで。
「…シンっ…!……」
じらされて耐えきれずにスーは腰を揺らした。知らなかった快楽を教え込まれた身体は、それを抑える術を身に付けてはいなかった。与えられた悦びを享受する事しか。だからどんな淫らな姿か頭で理解していながらも、スーはそれを止める術を知らなかった。
「欲しいですか?コレが」
「…シン…私……」
「欲しいなら貴方の口から聴かせてください…スー様……」
耳元で囁かれた言葉の恥ずかしさにスーは頬をさぁぁっと朱に染める。けれどもそれを言わなければ、自分はずっとこのままで。このまま、火照った身体を持て余すだけで。
「…シン…私…欲しい……」
「何が、欲しいのですか?」
「…貴方が…貴方の…ソレが…欲しい…私の中に……」
「中にどうして、欲しいのですか?」
「…中に…挿れて…っそして…掻き乱して…ぐちゃぐちゃにっ……」
「分かりました、スー様」
シンはひとつ口許だけで微笑うと、そのままスーの細い腰を自らへと引き寄せた。
貴方の長い髪が、シーツの波に揺れる。髪の先から雫を零しながら。
それをひどく綺麗だと思いながら、この熱い身体を貪った。
脚を限界まで開かせ、自身を飲み込ませ肉を擦り合わせる。
痙攣する身体を何度も何度も貫いて、自らの欲望を内側に吐き出した。
「…あああっ!…ああああっ…シンっ…シンっ!……」
与えられる激しい快楽に、スーの意識は何処かへと飛び去った。ただ揺さぶられる腰の動きを追うだけで。与えられるリズムを追いかけるだけで。
「…ああんっ…あああんっ!……」
髪が揺れ汗が飛んだ。身体を動かすたびに胸が揺れ、その振動にシーツが乱れた。それでも動きは止まる事無くスーに与えられ、その刺激に溺れてゆく。捕らわれ溺れ、堕ちてゆく。
「スー様…私の…私だけのスー様」
「…あぁ…ああんっ…あ…ああああっ!!」
深く、深く、堕ちてゆく。それを止める事は誰にも…出来なくて。
父なる天と母なる大地に誓った事。
どんなになろうとも、貴方を護ると。
自らを滅ぼしても貴方を護ると。
それが、私がサカ人でありクトラ民族であり、男としての誇りだから。
「…シン…シンっ……」
快楽に溺れ必死にしがみ付く腕を。
「…スー様…私のスー様……」
愛しく、そして愛し。私は祈る。
「…貴方は私が護る…どんなになろうとも……」
大地に祈り、天に祈り。そして貴方に祈る。
私が存在する理由はただ一つ。貴方がこの地上に生ける華となる為の大地になることだから。
痕が残らないようにとその太腿に再び唇を落とし、私は心の中で祈った。
ただひとつ、祈った。貴方を護れるだけの強さが欲しいと。