薔薇の女王



――――私の頭上に掲げられた冠は、薔薇の棘で出来ている。


私は悪女になろう。誰に何を言われてもいい。私は私の信じる道を生きるから。
ただ一つ、信じた道を。その為ならば、私はどんな女にでもなれるから。


「…あっ…ギネウィア様っ!……」
その胸に顔を埋め、尖った乳首を吸った。きつく吸い上げればその白い素肌が朱に染まり、ぴくんっと跳ねた。
「…ミレディ……」
「…あぁっ…んっ…はぁっ……」
普段はその身を鎧で隠し、男にも負けない強さで大空を駆け巡る私の竜騎士。でも今は。今はこうして私の指に、舌に身体をくねらせ震わせている。
「…ギネヴィア…様…私は…あぁっ!……」
かりりと歯を立て、桜色の突起を噛んだ。それだけで普段は無表情とも言える彼女の顔が快楽へと摩り替わる。
「…ミレディ…私のも…私のも……」
「…ギネヴィア様…あぁ…ん……」
胸を突き出しその手を取ると、そのまま上から重ねてぎゅっと握った。その下で貴方の手が私の胸に触れる。
「…あぁ…ミレディ…もっと…もっと強く……」
「…ギネヴィア様…はっ…あぁ…んっ……」
互いに胸をもみ合いながら、何時しか脚を絡ませていた。剥き出しになった下半身を擦り合わせる。羞毛が擦れ合い、そこから肉が触れ合う。くちゅくちゅと濡れた音を立てながら。
「…んんっ…んんんんっ……」
唇を重ねあって、舌を絡めた。その間も花びらを擦り合わせ、胸をもみ合った。それだけで。それだけで、もう。もう全てがどうでもよくなって、くる。



――――私はギネヴィア様の騎士です。


貴方にそう告げた日から、私の運命は決まった。愛する恋人よりも貴方を選んだ。貴方を、選んだ。それが答え。私の答え、だから。
だからこうして身体を重ね合う事も。こうして肌を合わせる事も。それすらも私にとって。私にとっては貴方への忠誠の証で、そして。そして私が何よりも貴方を選んだと言う事の、自分へのシルシだった。


「…はぁっ…ぁ……」
唇が離れ、唾液がぽたりと私の口に零れた。それを貴方の綺麗な指が拭う。白く穢れのない指。けれどもこれから先貴方はこの指に無数の穢れを、刻んでゆくのだろう。ベルンの歴史の中で、国を売った悪女として。それでも。それでも私は貴方に着いてゆく。貴方だけに、着いてゆく。
「…ミレディ…私は愚かな女でしょうね……」
例えどんな事があろうとも、私の信じたのは貴方だから。貴方が選択した真実が、私にとっての真実だから。
「いいえ…ギネヴィア様…貴方の取られた道こそが……」
ただひとつの、真実だから。貴方が国を売ってまでも捕らえたものが。何よりも望んだものこそが。
「…私にとっての…誇りです……」
ベルンの国よりも名誉よりも、一番貴方が選んだもの。それは『平和』。それこそが。それこそが何よりも人が望んでいるものだから。


綺麗な貴方の髪がふわりと揺れ、そのまま。そのまま肌に落ちてゆく。貴方の舌が私の身体を駆け巡り、敏感な個所を攻め立てた。
「―――ああっ!!」
身体の位置を変えた貴方は、そのまま私の脚を開かせ花びらに触れた。私の顔に自らの濡れた性器を押し付けながら。
「…ミレディのココ…綺麗ね…」
「…そ、そんな事…言わないで…ください…あっ……」
外側の肉を指で押し広げ、中の蕾に舌が触れる。先を尖らせながら奥へ、奥へと濡れた感触が私の中へと挿ってくる。ぴちゃぴちゃと音を立てながら。
「…ああんっ…あんっ…はぁぁんっ!」
舌が奥―と侵入するたびにがくがくと立てた膝が震えた。それでも動きは止まる事無く、それどころか外側をなぞっていた指までもが中へと入ってきた。濡れぼそった媚肉を指が押し広げてゆく。
「…ミレディ…私のも…舐めて…ねぇ…」
「…ギネヴィア…様……」
「…ねぇ…もう私…私我慢が出来ないの…ねぇお願いだから……」
顔に羞毛が当たりその奥にある媚肉はひくひくと刺激を求めて淫らに蠢いていた。とろりと蜜が溢れだし、それが私の顔に落ちてくる。ぽたり、と。
「…ああんっ!…ミレディっ!!」
私はその蠢く蕾を恐る恐る舐めた。舌先に蜜が零れ、その液体を内側に擦りつける。それだけで耐えきれずに貴方の腰が蠢いた。
「…んんっ…はぁっん…ギネヴィア…様…んんっ……」
「…はああんっ!…ああんっ…イイっ…イイっ!ミレディっ!」
私は懸命に主君である貴方のソレを舐め続けた。まるで犬のように。けれどもそれを何処かで。何処かで望んでいる自分がいるのもまた…気付いていた。


「…あぁっ…ミレディ…あぁんっ……」
互いの性器を舐めあい、蜜を止めど無く溢れさせる。
「…ギネヴィア…様…ギネヴィ…ア…あぁぁ……」
肌を朱に染めながら、喘ぎだけを部屋に埋めながら。


――――まるで獣のように、欲望を求め合う……



貴方の頭上の冠が、薔薇の棘で出来た冠が。
私の全身を絡め取り、紅い血を流させる。けれども。
けれどもそれを望んだのは。望んだのは私自身。
貴方が悪になるのならば、私がこの身を血に染めよう。
そうしてともに。ともに、堕ちてゆくから。




「ああああんっ!!」
「―――ああああっ!!」




堕ちてゆく。何処までも堕ちてゆく。
その先にある求めるものを掴むために。
私たちは深く、堕ちてゆく。


どんな女にでもなろう。どんなひどい女にでもなろう。
本当に願ったものを手に入れる為に。未来を、手に入れる為に。



…それでもふたりならば。ふたりでならば、堕ちてゆけるから……