one for me



――――大切なものは、今ここに。この手のひらの中に。この、腕の中に。


きっとこんな風に微笑う事が出来るのは、貴方が何よりも優しいから。優しすぎて、そして。そして泣きたくなるくらいに、しあわせだから。
「…リ、リリーナ…な、泣くな…その泣いたら…おれどうしていいのか分からない……」
傷だらけの不器用で大きな手のひらが、そっと零れる涙を拭う。それは壊れものを扱うように、そっと。そっと優しい手のひらで。普段の力強い腕とは全く別のもののようだった。けれども、貴方の手だ。これは貴方の、手。
「…ごめんね、ゴンザレス…私…嬉しくて…嬉しいから……」
世界でただひとつだけ、ここにある貴方の手。不器用で優しい貴方の腕。それがどんなに私にとって大切で大事なものなのか気付いたのは、こうして真っ直ぐに貴方を見つめる事が出来たから。覆われていた全ての細かい傷たちをひとつずつ解いていって、その先にあるただひとつの綺麗な心を見つめられたから。
「嬉しいの、ゴンザレス。貴方に出逢えて」
「―――お、おれも…おれも嬉しい…リリーナにこうして出逢えて…そして俺なんかと一緒にいてくれて」
「俺『なんか』なんて言わないで。貴方はとても立派なひとよ、そして」
偽善だと言われてもいい。同情だと言われてもいい。どんな風に廻りから言われてもいい。だってもうそんなものはどうでもいいの。どうでもいいの、私にとっては。
「そして、大好きよ。ゴンザレス」
この気持ちだけがあればいい。これだけで、いい。これだけが本当の事。この想いだけが私の本当の気持ち。それを貴方だけが知っていてくれればいい。それだけで、いい。


そっと触れた時の溢れるほどの優しさに、ただ泣きたくなった。ただどうしようもなく泣きたくなって、そして気がついた。私は貴方が好きなのだと、気がついた。


触れる手のひらが、嬉しい。何時までたっても、ずっと。ずっと不器用で優しい手のひらが嬉しい。どんなになっても変わる事のない貴方の想いが私には嬉しい。嬉しいよ。
「リリーナ、その…あんたに触っても、いいか?」
「触って、いっぱい。いっぱい、触って欲しいよ。だって…」
頬に触れる手のひらに自らの指を重ね、そのまま胸の膨らみへと導いた。その瞬間びくんっと反応した手のひらが愛しかった。ずっとこんな風に変わらない貴方が愛しいと思った。
「こんなに貴方に触って欲しくて、胸どきどきしているんだよ」
「同じだ、リリーナ。おれと、同じだ」
「うん、同じだよ。同じだから…だから…さわって…っあっ!」
大きな手のひらがそっと私の胸を服の上から揉みし抱く。包み込むような優しい刺激なのに、思わず私の口からは甘い吐息が零れた。
「…ぁぁっ…ゴンザレス…っもっと…」
与えられる愛撫の優しさにもどかしくなって、重なった指先に力を込めた。胸を手のひらに押し付け、もっと強くと。
「リリーナ、いいか?もっと、もっと強くしても」
「…うん…強く…強くしてっ…ああんっ!」
ぎゅっと乳房を掴まれ、堪え切れずに喘ぎが漏れた。服の上からなのに乳首が尖っているのが分かる。それがひどく恥かしくて唇をぎゅっと噛みしめたら、心配そうに貴方が私の顔を覗き込んできた。
「い、痛いか?リリーナ」
「違うの、これは…これは恥ずかしかったから…でも平気。貴方の前で恥ずかしがる事なんて本当は何もないものね」
手を伸ばしてその背中に腕を廻した。そうすればおずおずとその腕で抱きしめてくれる。きっとこのぎこちなさはずっと消えないのだろう。ううん消えなくていい。そんな所も貴方の好きな所のひとつだから。
「何も、ないよね。私達の間にあるものは、もう何も」
偏見も身分も、生まれの違いも、生きてきた道も、もう何もないよね。ふたりを隔てるものはなにもないから。だから、全部。全部見せていいんだよね。
「ない、おれたちの間にはあるのは、おれがリリーナを好きで」
「うん、私が貴方を好きだという事だけ。それだけだよね」
こつん、と額を重ねて。そして見つめあう。見つめあって微笑った。これだけだ。これだけで、いい。この笑顔の時間があれば何も。何も、いらない。


――――ずっと結んでいたいから。この指先を、この手のひらを。ずっと、ずっと。


衣服をたくし上げられ小振りの胸が露わになる。まだ少女の面影を残した瑞々しい乳房だった。その白い胸に日焼けした大きな手のひらが触れる。柔らかく揉みながら、尖った乳首を指の腹で転がす。それだけでリリーナの口許からは甘い喘ぎが零れた。
「…ゴンザ…レスっ…ここ、…ここ、ねっ…吸って……」
ぎゅっと摘ままれた乳首を指に押し付けながら、リリーナは懇願した。そのたびに形良い胸がぷるんっと揺れる。それはひどく欲望を誘うものだった。
「いいのか?リリーナ。おれ…我慢出来なくて強く…強く吸ってしまう…痛くしてしまう…」
「…いいの、痛くして…いいからいっぱい、いっぱい吸って…あっ!!」
熱い口中に尖った乳首が含まれる。その熱さに満足気にリリーナは甘いため息をひとつ零した。けれどもそのため息すらも次の瞬間に訪れた刺激によって激しい喘ぎにかき消されてしまう。
「…っ!あっ…ああんっ…あぁぁんっ!!!はぁぁっ…あんっあんっ!!」
ぺろぺろとざらついた舌で何度も何度も乳首を舐められる。まるで子犬のようなその動作を愛しいと思いながらも、それ以上に身体を駆け巡る刺激にリリーナはそんな思考すら止められることになる。思考よりも先に身体が反応をする。
「…ゴン…ザレスっ…あぁぁっ…イイ…っ…いいよぉっ…気持ち…っ…イイよぉっ…」
「い、いいのか?リリーナ。いいのか?」
指先で先端を摘ままれながらぺろぺろと舐められるたびに、こくこくとリリーナは頷いた。気持ちいいのだと伝えたくて。気持ち、イイと。
「…イイょぉっ…だからもっと…っ…もっとぉ…っああああんっ!!」
きつく、乳首を吸われた。ちゅうちゅうと音を立てながら。そこから母乳が出る訳でもないのに、飲み干そうとでも言うように。強く、吸われる。
「…あああんっ…あぁんっ!!…イイっ…イイよぉっ…おっぱいっ…おっぱい…気持ち…イイよぉっ…もっと…もっと…吸ってぇっ…いっぱい…いっぱいっ……」
髪に指を絡め胸元を突き出して、もっともっととねだった。それに答えるようにゴンザレスの口許の吸い付く力が強くなる。このまま乳首が引き千切られるのではないかと思う程に。けれどもその激しさが何よりもリリーナの身体を疼かせる。疼かせ火照らせ、痺れさせる。何も考えられないほどに。
「…ああんっ…もぉっ…もぉっ…わたしっ…わたしっ…あぁぁぁんっ!!」
限界まで尖った乳首にがりりと歯を立てられて、リリーナは耐え切れずに小刻みに震えると、そのまま―――イった。


唾液でべっとりと濡れた胸元をそっと指で辿り、そのまま自らの下半身へと指を滑らせた。そこはまだ直に触れられていないのに、じっとりと濡れていた。
「…ゴンザレス…ココ…ココも……」
自ら脚を開き、ゴンザレスの前に茂みの奥を差し出す。指先でひくひくと痙攣する媚肉を広げ、濡れた秘所を暴いた。
「…ココも…いじめて…おっぱいみたいに…いじめてっ……」
ざらついた舌が秘所に忍び込んでくる。その感触にびくびくとリリーナの身体が震えた。生き物のような舌が奥へ奥へと侵入してくるたびに。
「…はぁっ…ぁぁっ…ああんっ…ふっ……あんっ!!」
奥の一番な個所を突かれ、びくんっ!とリリーナの身体が鮮魚のように跳ねた。ソコからまた淫らな蜜を滴らせながら。その蜜をゴンザレスが音を立てながら吸えば、また止めどなく溢れてくる。とろり、と。
「…あぁぁっ…もぉっ…もぉっ…わたしっ…もぉっ……」
「リリーナ、もういいのか?もう、コレを挿れても」
「…うん、挿れて…貴方の大きいの…挿れて…ココに…っ」
限界まで膨れ上がったゴンザレスの逞しいソレがリリーナの入り口に当たる。その感触にまた、リリーナは身体を震わせた。強くて巨きくて硬いモノが、自分の中に挿ってくるのかと思うと、淫らに睫毛を震わせずにはいられなくて。
「…そう…きて…私の中に…中に…っあああああああっ!!!」
ぐいっと腰を掴まれそのまま肉棒がリリーナの秘所に突き刺さった。小柄な彼女のソコは体型と同じように狭くてきつかったが、肉棒はみるみる内にリリーナの中へと挿っていった。
「――――くふぅっ…はっ…あああああっ!!ああああんっ!!」
未だに挿入する瞬間の痛みは消えなかったがけれどもそれは一瞬の事で、次の瞬間にはゴンザレスの巨根をずぶずぶと呑み込んでゆく。貪欲に奥へ奥へと、呑み込んでゆく。
「う、動くぞ。いいか?リリーナ」
「…動いて…動いて…ゴンザレス…動い…ひっ!!あああっ!!!」
腰を掴まれがくがくと揺さぶられる。そのたびに訪れる、引き裂かれるような痛みを伴う快楽が、リリーナの意識を飛ばしてゆく。真っ白にして何も考えられなくなって。
「はぁはぁ…リリーナ…リリーナ…いい…おれ…気持ち…いい…おれ…もう……」
「…出して…だして…ゴンザレス…私の中に…だしてぇっ!ああんっ!!」
「…だすぞ…リリーナ…あんたの…なかに…うっ!!」
「――――っ!!!ああああああっ!!!」
ぐいっと腰を引き寄せられ最奥まで貫かれる。その瞬間ドピュっ!と弾ける音とともに、生暖かい精液がリリーナの体内に注がれる。それを感じながらリリーナはイッた。意識を飛ばす程の快楽に襲われながら。



あんたが、微笑う。それはとても、とても、綺麗で。こんなおれが本当にこの手で触れていいものなのか。こんなおれがあんたに触れて、いいのか。今でも戸惑う事があって。けれどもそんなおれにあんたが微笑うから。微笑って言ってくれるから。


『――――触って、ね。ゴンザレス…いっぱい、いっぱい、触って』


おれはとても醜くて。おれはとても怖くて。けれどもあんたは真っ直ぐにおれを見てくれる。逸らさないで、真っ直ぐにおれをみてくれるから。


意識のないその髪にそっと触れる。汗でべとついたその髪に、永遠に消える事のない戸惑いと、それ以上の愛しさと優しさを込めて。そっと、ふれる。
「―――ありがとう、リリーナ。おれといてくれて、おれを好きだと言ってくれて…ありがとう」
そこから零れる優しさと暖かさに、どうしようもなく胸が締め付けられて泣きたくなる。けれどもそれ以上に込み上げてくる喜びとぬくもりが。
「…あんたといるとおれも…おれも綺麗になれる気がする…あんたのそばにいるとおれも…優しくなれる…しあわせになれる……」
なにもないけれど、なにももっていないけれど。けれどもこうして触れた指先は、こうして触れ合っている手のひらは誰よりも優しくありたいと願う。誰よりも優しく暖かくあればと祈る。それだけが、自分に出来る事だから。自分が出来る唯一の事、だから。


――――大切なものは、今ここに。この手のひらの中に。この、腕の中に。