Treasure



あんたはあたしにとって、何よりも大切な宝物。
だからずっと、ね。ずっとこうしていてね。


本当は呆れるくらいに、一緒にいたい。嫌になるくらいに、こうしてひっついていたい。
「こら重めーぞ、シャニー」
背後から抱き付いて全体重を掛けてきたシャニーにワードは溜め息混じりに言った。けれどもシャニーは気にする事なく、ワードにぎゅっと抱き付く。そのせいで背中に二つの膨らみが押し付けられて、少し変な気持ちになった。
「いいじゃん。ここ寒いんだもん。引っ付いたって」
「つーかおめー、ひっつくならほらっ」
「わっ!」
圧し掛かってきた身体を引き剥がすと、そのままワードはシャニーに向き合って自らの膝の上にその身体を乗せた。天馬騎士だけあってシャニーの身体は一般女性よりも軽い。けれどもワードの腕力を以ってすれば、シャニーでなくても軽々と持ち上げられるのだが。
「…この方が…いいだろ?……」
照れ隠しのためかぶっきらぼうに言うワードにシャニーは嬉しそうに笑った。こんな所が、大好きだった。凄く、大好きだから。
「へへへ、そうだね。この方がいいね」
大好きだから、キスをした。シャニーの方からキスをしたら。背中に廻されていた腕が、そっと撫でてくれた。



何時も馬鹿ばっかやってるけど。ふたりで喧嘩ばっかしてるけど。
でも好きだよ。でも、大好きだよ。だってちゃんと分かっているから。
分かっているもん。あんたがぶっきらぼうに言う言葉の中には。
その言葉の中にはいっぱい。いっぱい暖かいものが入っているって。
たくさんの、優しさが含まれているって。あたし、知っているから。

だからね、大好き。世界で一番、大好きだよ。あたしの大事な宝物だもん。


唇が離れても、シャニーは自らの唇を突き出して、ワードにねだった。無邪気な顔で、けれどもちゃんと女の瞳でねだってくるから。
「へへ、もっとキス」
「…しゃあねーな……」
少しだけ困った顔で、でも瞳は優しく微笑いながらワードはシャニーにキスをした。何度も何度もキスをする。まだ足りないからと唇を開いたシャニーに、ワードは不器用ながらも舌を絡めた。
「…んっ…ふぅ…ん……」
初めてのキスも、初めてのセックスも、二人で一緒に覚えた。互いに初めてで不器用だったから、大変だったけれど。けれども『ふたり』でするから意味があった。
「…ワード…んんっ……」
くちゅくちゅと音を立てながら舌を絡め合う。決して上手いキスとは言えなかった。けれども気持ちがこもっているキスだったから。それだけでシャニーは溺れた。
「…んっ…はぁっ…んっ……」
舌を絡ませながら、大きな手がシャニーの胸の膨らみに触れる。丁度ワードの手のひらに収まる小ぶりな胸だった。けれども柔らかく張りのある胸は、布越しからでも弾力を手のひらに伝えた。
「…はぁっ…あぁんっ……」
口許を零れる唾液をワードは舐めながら、その胸を鷲掴みにする。ぎゅっと強く揉んでやれば、膝の上のシャニーの身体が小刻みに揺れた。それを確かめながら、ワードはシャニーの服を脱がしてゆく。それと同時にシャニーの手が伸びてきて、同じようにワードの服を脱がし始める。

一緒じゃないと嫌だった。こうして脱ぐ時も一緒じゃないと、嫌だから。

「あんたの筋肉、好き」
シャニーの手がワードの胸襟に触れる。鍛え上げられた逞しい筋肉を、つつつと指で辿った。そのたびにくすぐったそうにするワードが可笑しくて、シャニーは何度も指を行き来させる。
「こら止めろって」
「あんっ!」
そんなシャニーに反撃とばかりに、ワードは直にその胸に触れた。既に乳首は痛い程に張り詰めていて、身体が感じている事を告げている。その胸の果実を指で摘んでやれば、ワードの胸に触れていた手が彼の背中に廻った。逞しいその背中に。
「…あぁんっ…ワード…やぁんっ……」
「嫌って言いながら胸を押しつけてくるのはどこのどいつだ?」
「う、うるさい…いいじゃん気持ちイイんだものぉ……」
「だったら素直になれよ、ほら」
「ああんっ!」
両の胸の乳首をぎゅっと摘まれ、シャニーは耐えきれずに嬌声を上げた。それと同時に腰がぴくんっと蠢く。それがひどくワードの目には淫らに映った。
「…バカ…素直じゃないのは…どっちよ……」
シャニーの指が悔しげにワードの背中をぎゅっと抓った。その痛みに一瞬ワードの表情が歪む。それで少しだけ彼女は満足をした。けれども。
「…少しは素直になんなさいよ…そしてあたしに言ってよ」
けれども。でももっと自分を喜ばせる言葉を言ってくれなければ。言ってくれなければ、許せないから。だから。
「―――何をだよ?」
「…好きって…言ってよ…バカ……」
だから、ちゃんと。ちゃんと言葉で言って、欲しい。



少し照れたような顔をして。
「…あー…そ、その……」
相変わらず舌噛みそうになって。
「…す、好き…だかんな……」
でも言ってくれた。言ってくれた、から。


「へへへへ、あたしも大好き。あんたが、一番大好き」



「ひゃんっ!」
大きな指がシャニーの秘所に忍び込んで来る。くちゅりと音ともに指が中を掻き乱した。その動きに合わせるようにシャニーの腰がワードの膝の上で蠢く。
「…ひゃぁ…あぁんっ…あんっ……」
大きな指がシャニーの割れ目を広げ、内壁に指の腹を擦り合わせる。その摩擦にシャニーは耐えきれずにぎゅっとワードの背中にしがみ付いた。ちゅぷちゅぷと濡れた音がリアルにシャニーの耳に届いて、それだけで身体が火照った。
「…あぁんっ…ワード…ワードっ……」
「―――っ」
シャニーは必死になって背中から手を離すと、そのままワード自身に触れた。それは既に硬くなっていて、触れただけで熱かった。それでもシャニーは指を這わして、ワードを追いたてた。その間にもワードの指はシャニーの花びらを犯し、攻めたてる。
「…あぁっ…ワードっ…ソコが…ソコがイイよぉ……」
ワードの指がシャニーの一番感じる個所に当たるたびに、彼女は腰を押し付け刺激を求めた。その間シャニーの手の動きが止まったが、構わなかった。乱れるシャニーの姿があれば、手など必要なかったから。
「―――シャニー、もういいか?」
指がずぷりと音ともに引き抜かれる。中を乱すモノがなくなってもどかしげにシャニーは腰を振った。そのたびに当たるワード自身の外側の熱さに瞼を震わせながら。
「…いいよ…いいから…早く…早くあたしの中に…ね……」
「ああ、俺も限界だ」
そう言うとワードはシャニーの細い腰を掴み、その身体を持ち上げ、一気に自らの上に落とした。
「ああああんっ!!!」
ずぶずぶと音ともにワードの逞しい肉棒がシャニーの中に埋め込まれてゆく。媚肉を押し広げられる感触に、内壁を抉られる感覚に、シャニーは悲鳴染みた声を上げる。けれどもそれは、すぐに甘い喘ぎへと摩り替わった。
「…ああんっ!…あああんっ…あんあんっ!!」
腰を上下に揺すられるたびにシャニーの小ぶりの胸が揺れる。桜色の乳首が痛いほど尖って、敏感になっていた。
「イイか?シャニー?」
「…イイっ…イイよぉ…ワードっ…ああんっ」
耳元で囁かれる言葉にシャニーは素直に頷いた。こくこくと何度も頷きながら、突き上げられる刺激に身体を悶えさせる。
「俺もすげー気持ちイイ」
「…あぁっんっ…あぁぁっ…もっと…奥まで…あたしをぐちゃぐちゃにっ……」
「ああ、もっと。もっと感じろ」
ズンっ!と音とともに深い場所までワードの凶器がシャニーの中を抉った。その痛みすら激しい快楽にしかならなかった。シャニーはワードの腰の動きに合わせ、自分からも積極的に動いた。がくがくと揺さぶられる振動すら、堪らなかった。
「あああっ…ああぁっ…熱い…熱い…よぉ…ああっ……」
目尻からはひさきりなしに涙が零れ、唇からは唾液がぽたりと滴る。それでも構わずに二人は夢中になって腰を振り、激しいリズムを作った。室内は肉の擦れ合う濡れた音と、シャニーの喘ぎだけが響いた。そして。
「…もぉっ…もぉっ…ワード…あたし…あた…あああああっ!!!」
「―――くっ!」
子宮にまで届きそうなほど貫かれ、熱い液体がシャニーの中に注がれる。それを感じながら、シャニーは意識を真っ白にした。



「駄目だ…おめえ…可愛すぎるぜ……」
ワードの膝の上に乗ったまま意識を失ったシャニーにぽつりと、告げた。それは彼女が起きている時には、絶対に言えない言葉だった。
「…畜生…何でこんなに可愛いんだよ……」
華奢な身体を抱き寄せながら、髪を梳いてやった。柔らかいふわふわのその髪を。そして。そして額にひとつキスをして。
「…悔しいくらい…好き…だぜ……」
普段滅多に言えない好きを、そっと。そっとシャニーに告げる……。


「…あたしも、好きだよ……」


「わっ、て、てめーお、お、おきて……」
「へへへ、聴いちゃった」
「………」
「また舌噛んでる、ワード」
「う、うるせーっ!!」
「でも、嬉しいな。へへへ、嬉しいよ」


「大好き、ワード」


ぎゅっと抱き付いてくるシャニーに溜め息混じりにワードはその身体を抱き止めながら、心の中で呟いた。――――惚れた方が、負けだと……



大好きだから。一番大好きだから。
大事な大事な、宝物なの。あたしの。
大切な宝物なの。あんたは、あたしの。



――――世界で一番、暖かくて大きな…宝物なんだよ。