Xmas Night



四角く区切られた窓の外は一面の銀世界に染まり、聖なる夜をより鮮やかに演出していた。その様子は普段こう言ったイベントや行事には興味のない自分ですら、何処か心を弾ませるものになっていた。
「凄いぞっアベル。外は真っ白だ」
そう言って振り返ったカインの顔がひどく無邪気でアベルは口許にひとつ笑みを浮かべた。こんな時に素直に感情を表現する相手をひどく愛しいものに感じ、そしてそんな相手だからこそ色んな表情を見たいと願った。どんな顔も見たいと思った。
「そうだね、クリスマスにはぴったりの景色だ。そんな景色に乾杯かな?」
「おーシャンパンだ、気が利くな!アベル」
「君にそう言ってもらえると嬉しいね、はい」
そう言ってアベルはシャンパンの入ったグラスをカインに差し出す。そして自らの手に持ったそれをカチャリと重ねて乾杯と呟くと、ゆっくりとグラスの液体を飲み干した。そんなアベルに合わせるようにカインも一気にシャンパンを飲み干す。液体が喉を通りぬけ体内を巡るにはそう時間は掛からなかった。アルコールにあまり強くないカインの頬は直ぐに朱に染まる。そんな様子を眺めながらアベルは口許だけで微笑った。
「美味しいかい?」
「ああ、これぞクリスマスって感じだ」
「そうか、それは良かった」
にっこりと微笑うアベルの顔を改めて見つめたら、何故か視界がぼんやりとしてきた。それと同時に頬が、身体が、じわりと熱くなってくる。あまりアルコールに強くないとはいえ、こんなにも早く廻る訳がない…そう思い首を左右に振ったが効果がなかった。それどころか益々身体が火照ってくる。更に何だか妙な気持ちにさえなってきた。そう妙な気持ちに。
「―――驚いたな、こんなに効き目があるとは」
「…え?……」
アベルの言葉の意味を確認する前に、そっと唇が降りてくる。その柔らかさに意識が溶かされ、無意識にカインはその唇を吸った。その様子を薄目を開けながらアベルは見ていたが、そんな事に気付く事すら出来ずに夢中になって唇を重ねてきた。
「…んっ…ふっ…んんんっ……」
薄く口を開いてやれば待ち焦がれていたかのように舌を絡めてくる。それに答えてやりながら、アベルはカインの紅い髪を撫でてやった。
「―――君からキスしてくるなんて積極的だね、カイン」
唇が離れればもどかしげに自分を見上げてくる潤んだ瞳に、焦らすように口許だけで微笑うと瞼にひとつキスをして。
「それよりもケーキも用意したんだ。せっかくのクリスマスだしね、食べよう」
「…アベル…俺……」
その先の言葉を言わせる前にアベルは台所へ向かい買ってきたケーキを運んできた。苺の乗ったチョコレートケーキはクリスマスに花を添えるものだった。
「ほら、カイン。君はみかけによらず甘いものが好きだろう?」
「あ、ああ…好きだけど…その…」
その場にしゃがみ込み下半身をもぞもぞとさせる相手に対し、わざと普段通りの顔でアベルは告げた。予想以上の効き目に心の中でほくそ笑みながら。
「ほら、あーんして」
フォークに刺されたケーキを言われた通りに口に含んだ。口の中に広がる甘さに一瞬思考が戻されるが、それ以上に身体の中に湧き上がってくる熱がじわりじわりとカインを蝕んでゆく。下半身から広がる熱が。
「もっと欲しい?」
「…あ……」
ケーキの破片を口に咥え、そのままカインの口内に移される。ケーキの甘さよりも触れた唇の感触にカインは眩暈を覚えた。もっと、と。
「…もっと…欲しい…アベル…俺……」
「君は本当にケーキが好きなんだね、ほら」
今度は舌の上にケーキの破片を乗せて近付いてきた。それを迷うことなく自らの舌で絡め取り貪る。その瞬間ケーキの破片が床に落ちたが、構わずカインはアベルの唇を求めた。もう、止まらなかった。止められなかった。

――――こんなにも薬が効くなら…もっと早く試しておけば良かったかな?

自ら抱きつきキスを求めるカインを受け止めながらアベルはひとつ思ったが、これもクリスマス故の羽目を外した行為だったとすれば単純なカインなら騙せそうなので、これはこれでいいような気がしてきた。それならばこの状況を楽しまない手はない。むしろ積極的にクリスマスを演出しようと思った。―――自分なりのクリスマスを。
「…なに…これ…あっ……」
「今日はクリスマスだからね、せっかくだしね」
唇を重ねている間に上着を脱がされ上半身が剥き出しにされる。下界の冷たい空気に触れただけで敏感になった身体は反応した。そしてこれから触れられるであろう、触れてくれるであろう指の感触に睫毛を震わせたが、予想していた感触は肌に触れてはこなかった。
「こんなのもたまにはいいだろう?」
それどころか触れてきたのは尖った葉っぱだった。それが飾られていたリースだと気付くのには、身体を滑る感触のもどかしさに焦れた瞬間だった。
「…こんなっ…お前っ…あっ…はっ……」
チリンと音が、する。リースの真ん中についた鐘が鳴った音だった。その冷たい金属が火照った肌を滑る。その次に硬い松ぼっくりが鐘の後を辿り、また細かい葉が肌を刺した。
「…ぁっ…やぁっ…こんなっ……」
「そうか、じゃあ別のものにしようか―――ほら」
「―――あっ!」
鋭い感触が敏感になった乳首を突いた。それはツリーの天辺に掲げられていた星の飾りだった。
「…それもっ…やだっ…違っ……」
「我が儘だな、カインは。せっかくのクリスマスなのだからもっと楽しまないと」
「…あっ…あぁっ…んっ……」
片方の乳首を星の先端で突かれ、もう一方をアベルの口に含まれる。ざらついた舌の感触が胸の突起を痛い程に張り詰めさせた。それと同時に堪え切れないのか、組み敷いた両脚がもぞもぞと蠢めいた。
「もうコッチも感じたの?」
「ああんっ!!」
布越しから自身を触れられ、カインの口からは上手い悲鳴が零れる。けれどもそれ以上にアベルはソコには触れず、カインの下半身に覆われた布を外すとそのまま起き上がって離れた。伸しかかる重みが消えた事にカインは瞼を開ければ、にっこりと笑ったアベルが手にリボンを持って戻ってきた。
「…な、何を…アベル……」
「クリスマスと言えばプレゼントだからね。俺にとっての一番のプレゼントは君だ」
告げられた言葉はクリスマスらしくロマンチックな言葉だったが、それに伴う筈の行為はそれとは正反対だった。何故ならそのリボンでびくびくと勃ち上がったカインのソレを根元からきつく縛ったのだから。
「や、止めっ!アベルっ!やだっ!!」
「何時も君の方が先にイっちゃうからね、今日は一緒にイコう」
優しく告げながらも限界まで膨れあがったソレを手で包み、そのまま上下に擦った。それだけで敏感なカインのそれはイキそうになるのに、きつく根元を締め付けられて吐き出す事は叶わなくて。それは狂いそうになる苦痛と、おかしくなりそうなほどの快楽を同時にカインにもたらした。
「…やだっ…やだぁ…もおっ…もおっ…俺……」
「もう?どうして欲しい?」
耳元に息を吹きかけられながら囁かれる言葉に、カインの身体はびくんっ!と鮮魚のように跳ねた。もう限界だった。暴走した熱は身体中を駆け巡り、吐き出し口を求めてカインを狂わせてゆく。もう…もう……
「…イ…きたい…イカせろっ!……」
「―――ふふ、君らしいね。じゃあ君にもプレゼントを上げるよ。コレをね」
足首を掴まれそのまま限界まで広げさせられる。カインの一番恥ずかしい場所が剥き出しになって、その入り口に硬いモノが当たる。ひくひくと厭らしく蠢く蕾に尖った先端を何度もなぞり、カインを煽った。煽って、焦らして―――
「だからコレも俺にちょうだいね」
「―――!!!ああああっ!!!!」
ずぶずぶと濡れた音とともにアベルの肉棒がカインの中に捻じ込まれてゆく。引き裂かれるような痛みはすぐに脳天を突き刺す程の快楽に変わり、貪欲にソレを飲み込んだ。
「…あああっ…あああっ…アベっ…アベルっ…あんっあんっあんっ!!」
腰をがくがくと揺さぶられ何度も抜き差しを繰り返し、そのたびに中で圧倒的な存在感になってゆくソレをカインの秘所は貪欲に味わった。きつく締め付け、千切れるほどに。そして。
「駄目だ、もう限界だ。出すよ…カイン」
「ああっ!!あああ―――っ!!!」
塞がれていたリボンが解かれる。その瞬間勢いよく白い欲望を吐き出す。それと同時に、カインの体内に熱い精液が注がれた。


「――――メリークリスマス・カイン」


繋がったままで唇を重ねた。上も下も繋がってひとつになって体温を分け合えるこの瞬間が、本当は一番好きな時間かもしれない。一番好きな瞬間かも、しれない。
「…アベル……」
唇が離れまだぼんやりとした意識のまま名前を呼べば、答える代りにキスをしてくれる。そっと髪を撫でてくれる。その優しさがある限り、きっと。きっとどんな事をされてもこいつを好きなのだろうと思った。自分は、こいつが好きなのだと。


何時しか意識を落とし眠りに着いたカインを抱きしめながら、アベルはひとつ微笑う。そして誰にも聴こえないように呟いた。


「次に使うのはハッピーニューイヤーかな?」