GLAMOROUS



文字に落ちた視線を振り向かせたくて背後から抱きついたら、形良い眉毛の端が少しだけつり上がって不機嫌そうな声が返ってきた。
「私の読書の邪魔をするな、ルーク」
「だってつまんねーんだもん。構ってくれよーロディ」
呆れるようにひとつ溜め息をつきながら、パチンっと手を叩いて手を払いのけようとする。そのつれない態度にめげそうになりながらも、諦めずにもう一度抱きついて告げれば今度は本気で殴られた。
「いってーお前本気で殴ったなっ!」
「殴られるような事を言うからだろう」
「だからってグーで殴る事ないだろうがっ!彼氏に向かってっ!!」
「…誰が『彼氏』だ……」
心底呆れた声でロディは返したが、ルークはめげる事はなかった。それどころか満面の笑みを浮かべて『俺、俺』と自らを指差しながら言ってくる。何処までもお目出度い奴だともう一度深いため息をついたら、そのまま。そのまま覆い被さるように唇を奪われた。
「―――隙アリ」
「…全くお前はどうしてこう……」
その先を告げる前に再び唇が降りてくる。それを寸での所でかわすと、物凄く不満げな瞳で自分を見つめてきた。その表情があまりにも面白かったから、ロディは呆れる事を忘れてそのまま。そのままひとつ微笑うと、ご褒美とばかりに自分から唇を重ねた。


――――我が儘なくらいに、ずっと。ずっと俺だけを見ていて欲しい。その瞳にずっと俺だけを映してほしい。呆れるくらいに我が儘に、ずっと。


ぱさり、と音がして、床の上に読み掛けの本が落ちる。けれども構わずに唇を重ね続けた。それは次第に互いの息を貪るような激しい口づけへと変化してゆく。深いキスへと。
「…ふ…んっ…んんっ……」
飲みきれなくなった唾液がロディの口許を伝う。けれども構わずにふたりは舌を絡め合わせた。何度も何度も、根元まできつく。
「…ぁっ……はぁっ……」
呆れるほどに互いの口内を堪能して名残惜しげに唇を離せば、ふたりの唇を透明な糸が結ぶ。それがぽたりとロディの口許に落ちて流れた。それすらも欲しくてルークは舌で跡を辿った。その柔らかい刺激に無意識にロディが肩を竦めれば、愛しげにルークは自らへと引き寄せると、そのまま胸元へと指を伸ばす。
「…馬鹿…よせ……あっ!……」
服の上から胸の突起を弄り、そのまま指でぎゅっと摘まむ。その刺激に耐え切れずにロディの唇から甘い悲鳴が零れた。
「…止め…っ…あっ…あぁ…っ……」
首を左右に振り手を引き剥がそうと指先を伸ばせば、そのまま絡め取られもう一方の指で嬲られる。指の腹で転がされ弄られれば、服の上からでも淫らに乳首が尖っているのが分かった。
「…駄目だっ…こんなっ…ぁっ…」
「何で?お前のココ、服の上からでもはっきりと分かるほど…立ってるぜ」
楽しげな声で胸を弄られる。何時しか絡められた指は解かれ、両の突起をそれぞれぎゅっと摘ままれた。その刺激に耐え切れずロディの身体はびくんっ!と跳ねた。それと同時に座っていた椅子が揺れる。その様子をルークは満足気に眺めた。普段は冷静沈着でどんな時にも表情を変えない相手が、自分の指先でそのポーカーフェースが淫らに解かれてゆく様子を。自分だけが知っているその顔が暴かれる瞬間を。
「…駄目だ…ルーク…こんなっ……」
「―――こんな?何がこんな、なんだ?」
耳元に息を吹きかけながら囁かれる言葉に、ロディは上目遣いに睨むように見つめた。けれどもその瞳は何処か快楽に濡れていて、ルークの欲情を一層煽るだけだった。お陰で一端止めた筈の指の動きを再び始めてしまう程に。
「…だめ…だっ…こんな…こんな格好じゃ……」
「こんな格好?ああ…椅子の上よりも、俺の上がいいのか?」
――――こんな時に何を馬鹿な事を言って…そう思っても胸元を嬲る指が、その言葉を声に出す事を許してはくれなかった。口から零れるのは嫌になるほどの甘い声だけで、甘い喘ぎだけで。
「しょうがないな、俺の上がいいんだろ?」
「―――あっ……」
違う馬鹿と言う前に胸の愛撫が止まった。その代わりに背後に居た相手が自分の前に立つと、ひょいっと椅子から持ち上げられる。何を?と思う間もなく背後から抱きしめられ、そのまま相手の膝の上に座らせられた。―――言葉通りに、上に乗せられた。
「じゃあ続き、な」
「この馬鹿っ…あっ!」
指が服の裾から忍び込んでくる。そのまま直に胸に触れられた。既に痛い程に張り詰めているソレに、直接指の刺激が与えられる。その刺激を待ちわびていたように胸の果実は反応し、ロディの意識を溶かしてゆく。何も考えられなくなるほどに。
「…あぁ…ぁぁっ…やっ……」
「嫌じゃねーだろう?だってコッチもこんなだぜ」
「―――っ!ああっ!!」
いつの間にか大きな手のひらがロディの股間へと辿り着くと、布の上から撫でられた。何度か布越しに形を辿られて耐え切れずに身体を小刻みに震わせた頃、腰を持ち上げられてズボンを降ろされた。けれどもそれは中途半端な個所で止まり、ロディの動きを不自由にした。多分、これはわざとだ。
「…お前っ…ちゃんと…っ!あぁっ!」
脚の動きを封じられ身動きが出来ないロディに、楽しげにルークは愛撫を重ねた。抵抗しようにも与えられる刺激に耐え切れず、されるがままに声を上げるだけだった。
「…あっ!…くふっ!……くふっ…んっ……」
前を弄られる手が止まったと思ったら、そのまま後ろに指が滑ってゆく。先ほどから与えられた刺激のせいでひくひくと切なげに蠢いている秘所に、ずぷりと指が埋め込まれていった。
「…ふあっ…あぁっ…ぁぁぁっ……」
抜き差しされる指に無意識にロディの腰が動いた。刺激を追うように、動きを合わせる。その様子にロディの双丘に当っているルーク自身の形が変化してゆく。巨きく、硬く。その変化すら淫らに解かれたロディの秘所は感じた。ソレに貫かれる瞬間を無意識に思い浮かべ、ジンと疼いた。
「どうした?ロディ。そんなに押し付けてきて」
「…違っ…これは…っ…くふっ…はぁっ……」
「何が違うんだ?こんなに腰を振りながら俺のコレを擦ってきて…」
違うと首を左右に振っても、動きは止められなかった。欲しかった。ソレが欲しかった。熱く滾るソレが、欲しい。欲しくて、堪らない。
「欲しいなら、そう言えよ。ほら」
「―――あああんっ!!」
先端の割れ目を指で抉られ先走りの雫が零れてくる。それと同時に埋められた指を掻き回されれば、もう耐えられなかった。耐える事が、出来なかった。
「……し…いっ……」
「聴こえないぜ、ほらちゃんと言えよ」
「…ほしいっ…お前の…ソレが…欲しいっ!」
「よし、ちゃんと言えたな。ほら、欲しいだけやるぜ。たっぷりと味わえよ」
「ああああっ!!!」
ずぶずぶと濡れた音とともにロディの待ちわびていたモノが埋め込まれる。それは狭い入り口を容赦なく広げ、ロディの中にみっしりと埋まった。
「あああっ…ああああっ…あああんっ!!」
腰を、振った。もっと、もっと、と。喉をのけ反らせて喘ぎ、貪欲なまでにその楔を欲しがった。その肉棒を咥え込んだ。
「いいぜ、ロディ。お前の中、すげー気持ちいい」
「…はぁっ…あああっ…ああんっ!!…あんっあんっ!!」
はあはあと荒い息を立てながら告げられる言葉に、ロディの身体は反応した。咥え込んだ肉棒をきつく締め付ける。そのまま腰を振り続ける。ぐちゃぐちゃと媚肉の擦れる音がする。濡れた音が室内に響く。その全てがロディの意識を飲み込み、狂わせてゆく。
「…もぉっ…もぉっ…ああああっ!!!」
「―――くっ!」
先端を強く擦られ、先端から勢いよく精液が飛び散る。その瞬間咥えていた肉棒をきつく締め付け、その刺激にルークも耐え切れずにロディの体内に白い欲望を吐き出した。


――――この恰好じゃ…お前のイク顔が…見られないだろう…馬鹿……


意識が途切れる前に恨みごとのひとつでも言おうとしたが、それは言葉にならなかった。その代わりに零れた言葉は相手の名前だけだった。だから――――

「…ああ、大好きだぜ、ロディ……」

だから、見られた。お前のイク顔よりも、もっと。もっといいものが見られたから。だからそれで許してやろうと思った。しょうがないから、許してやろうと……。



子供みたいに嬉しそうに、本当に嬉しそうに微笑ったお前の顔が見られたから。