漆黒の長い髪から薫る匂いは魅惑的で、その中に顔を埋めれば紅い唇が魅惑的に誘う。まるで血のようなその唇の誘惑に拒む事が出来ずに重ね合わせれば、そのまま。そのまま透明な程に白い肌に指を滑らせた。
想像よりも滑らかできめ細かな肌は指先にひどく馴染み、その感触に欲情するのを止められなかった。止められずにその肌に貪りつき、欲望のままに身を推し進める。脚を開かせ一番深い場所に自らの欲望を突き入れ、深く深く貫く。
そのたびに紅い唇から甘い悲鳴が零れて、快楽を煽ってゆく。その声に導かれるように腰を動かし、見掛けよりもずっと細い身体を欲望の赴くまま…貪り続けた……。
「――――っ!わああああああっ!!!!!」
目覚めた瞬間に口から零れたのは自分でも信じられないような悲鳴だった。何だ、何なんだ、今のは?今の夢はっ?!しばらく何が起こったのか分からずに茫然としていたが、徐々に何が起こったのかを思い出して青ざめた。冗談じゃないほど青ざめて…恐る恐る布団の中を覗いてみた。
―――――…………お、思いっきり…出してやがる……
幾ら否定しようとも現実は容赦なく俺の目の前に突きささる。認めたくなくても、この身体の心地よい虚脱感と、下着の濡れた感触は間違えなく……
「…俺…つまり…その…夢精しちまった訳?!…それも…それも……」
それもあの、あのっカレルとそのつまり…セッ…セックスした夢でっ?!何であの何よりも怖くて何よりも尊大で何よりも恐怖の対象である筈のあの男とそんな事を、俺が例え夢の中でもしなきゃいけないんだっ?!つーか何でそんな夢、俺見てんだよっ!!!
「…マジかよ……」
思わず頭を抱えてしまった。抱えずにはいられなかった。よりにもよってアイツの夢なんかみなきゃいけないんだっ?!ただでさえ普段から付き纏われて恐怖の日々が続いていると言うのにっ!毎日アイツの気配に怯えている日々が続いていると言うのにっ!!何で、何で、そんな奴が夢にまで現れてくるんだっ!!それもそれも……
「うわわわあああっ!!俺は夢とはいえ何でアイツをヤッてんだよっ!!何でヤッて悦んでるんだよっ!!駄目だろうっ自分っ!!駄目過ぎるだろうっ!!!」
思いっきり俺は夢の中でノリノリだった。つーか最高に気持ち良かった気がする…夢なのに…夢なのにっ!!
「…でも…アイツ…夢の中じゃ…すげー色っぽかったよな……」
普段は恐怖しかない相手なのに、その顔を苦痛と快楽に歪ませ欲望のままに貫く事の快感。その時の表情は白い肌を朱に染めて、潤んだ瞳で俺を見つめて、そして甘い吐息を零して…。
「ああっ!!駄目だ駄目だ駄目だーーっ!!何考えてんだ俺はーーーっ!!」
必死に否定して頭を激しく振ってみる。けれども瞼の裏に浮かんでくるのはさっきまでの夢の残像で。そこにいるカレルはまるで悪魔のような瞳で俺を誘ってくる。白い指先を首筋に絡めて、俺の鎖骨に舌を這わせて。そのまま脚を開いて―――
「…そう普段のあいつからは想像できないような色っぽい顔で…って何してんだ、俺はっ!!」
思い返したら堪らなくなって気付いたら自らの手を股間に伸ばしていた。夢精してすっきりしている筈なのに、思い出しただけで俺の息子はムクムクと起き上がってきている。もうこうなってしまったら止められないのが男の哀しい性で。
「…ああ、もうっ!俺は…俺は…駄目だ我慢できねー、ごめんなさい、カレルさんっ!!」
つい何時もの癖で謝って更に『さん』まで付けてしまっている自分が正直情けない。でもあのカレルをオカズにしてしまうなんて、何だかやっぱり物凄く罰あたりな気がしてついそう呼んでしまう。否、呼ばずにはいられなかった。
「…それでは…いただきます…カレルさん……」
そう言って俺は夢の続きを妄想した。激しく乱れる剣魔様をオカズにして、最高に気持ちいい射精をした。
どくどくと手のひらに出てくる精液の量と濃さに我ながら、ため息をつかずにはいられなかった。今までのどんなオカズよりも正直気持ち良かった。気持ち良すぎて、あの後11回もシテしまった。今までの最高記録更新にひそかにガッツポーズを取りながらも、その後に襲ってくるどうしようもない罪悪感と後悔と、そして。そして――――
「…つーか俺…どんな顔でアイツに逢えばいいんだ……」
命狙われている相手をオカズにして自慰をするなんて客観的に見て変態だ。つーか客観的に見なくても間違えなく変態だ。俺は何時の間にこんなに変態になってしまったのかっ?!
「…ああ、どうしよう…俺……」
どんなに後悔しても、手のひらにこびりついた精液が全てを物語っている。そう、全てを。
―――――気付かないうちに、芽生えていたその想いを……
お題提供サイト様 確かに恋だった