Will



日差しが遮られた事に気付き顔を上げれば、そこには予想通りの見慣れた顔があった。読書をする手を止められて少しだけ表情に出したケントに対して、セインは悪びれもせずに何時もの笑顔を見せる。
「―――眉間にしわが寄っているぜ、せっかくの美人な顔が台無しだ」
「…誰が美人だ……」
「決まってんだろ、今俺の目の前にいる誰かさんに」
底なしの能天気な顔で告げてくる言葉に、益々眉間にしわが寄る。けれども相手は気にすることなく満面の笑みで答えてくると同時に、目線を同じ高さまで降ろすとそのまま盗むように唇を重ねてきた。
「な、ななっお、お前はっ!!」
反射的に顔を離して背後に後ずさるが、背中の大木のせいでその行為は無意味だった。それどころか相手は調子に乗ってどんどん自分に近づいてくる。それこそ息の掛かるほどの距離で。
「いいじゃないか、挨拶のキスくらい」
「…だからってこんな…誰が来るとも分からない場所で…」
「そうか、ケント。誰も来ない場所ならばいいのだな。ならばさあっ!」
「そういう意味じゃないっ!」
手を掴まれて立ちあがるセインに怒鳴ってみても意味がなかった。ケントの意思を余所にぐいぐいと引っ張って連れて行ってしまう。手を解こうとしても読み掛けの本を落とさないようにする事に精一杯でそれどころではなくなってしまう。
「しょうがない。恥ずかしがり屋の恋人の願いを叶えるのも彼氏の大事な役目だからな」
「誰が彼氏だっ!」
「まあまあそんな照れなくてもいいから、さあさあ」
人の話など全然聞いてないのは何時もの事だった。そんなセインに深いため息をついても、全然気付いてもらえないのも慣れてしまっていた。そしてそんな彼に結局は丸めこまれてしまうのも。――-自分でも呆れるほどにそれは、ふたりの『日常』になっていた。


歯の浮くようなセリフもすらすらと述べられる相手に半ば感心し呆れながらも、こうして抱きしめられて髪を撫でられれば何処か心地よくて。
「ここなら挨拶じゃないキスも出来るぜっ相棒。もちろんその先もっ!」
「―――お前は…それしか頭にないのか」
「そんな事はないぞ、でも恋人同士には一番大事なことじゃないか。身体のコミュニケーションは」
「…身体だけか?……」
「まさかっ!身体も大事だが、もちろん心も大事だ。お前と名のつくものならば俺は全部大事だ」
戸惑うことなく胸を張って告げる相手を少しだけ羨ましく思いながら、それ以上に自分は誰よりも知っている。こんな大げさとも思える言葉も全て本気だという事に。全て本音だという事に。誰よりも一番近くにいる自分だから…知っている。
「…本当にお前は……」
だから呆れながらも、好きなんだ―――と、言葉にする事が出来なくて自分から唇を重ねた。でもきっとこれで。これで伝わるだろうから。言葉にするよりも、ずっと。


―――知っている。誰よりも知っているから。お前の事は私が一番、知っているから。


唇を塞がれながら器用に上着のボタンを外された。そのまま暖かい手が胸元に忍び込んできて、ケントの胸元の飾りに触れる。その刺激にびくんっとケントの肩が跳ねた。
「…んっ…んんっ…ふっ……」
胸の飾りを弄られながら唇をきつく吸われる。息を吸いたくて口を開ければ、生き物のような舌が口内に忍び込んでくる。そのまま舌を絡め取られ根元を吸われた。
「…ふっ…はぁっ…あっ…あんっ!……」
ぎゅっと胸の突起を指で強く摘ままれ、思わず唇が離れる。同時にケントの唇から細い悲鳴が零れて、それがセインの目を細めさせた。
「気持ちイイ?ココもっと弄って欲しい?」
「…ちがっ…あ、…あぁっ……」
それを素直に認められなくて首をイヤイヤと振れば、益々セインの指はソコを攻め立てた。爪先で抉られ指の腹で擦られる。その刺激に耐え切れず、ケントの口からはひっきりなしに甘い吐息が溢れて止まらなかった。
「イイんだよね、ココが。気持ちイイんだよね」
「…あぁっ…ぁ…ちがっ…ああんっ!」
ざらついた感触がケントのソコに触れる。それが舌だと気付いた瞬間に、ぷくりと立ちあがった突起はその中に包まれていた。先端で突かれ、ぺろぺろと舐められる。唾液で照る程に嬲られ、そのまま強く吸われた。
「…ああんっ…駄目…だっ…ソコは…駄目っ…あっ…あぁんっ……」
口と指で両の突起を支配され、ケントの意識は溶かされてゆく。何時しか下半身は変化を見せ、ズボンの中で苦しそうに膨らみ始めていた。それと同時に自分に伸しかかる相手の股間も同じように膨らんでいる。それが布越しに伝わって、ケントのソレを益々熱くさせる。
「ん?こっちも弄って欲しいの?」
「―――っ!ああんっ!!」
布越しに手のひらでなぞられ、ケントのソレはビクンと反応する。既にズボンの上からでも分かるほど形を変化させ、狭い布の中に閉じ込められているのが苦しげで。
「触ってあげるよ、いっぱいね」
「やぁっ…だめっ…ああんっ!!」
下着ごとズボンが降ろされる。一気に解放されたソレはこれから訪れる刺激を待ちわびるように、一気に勃ち上がった。その肉棒にセインの手が添えられると、一気に扱き始めた。
「…ああんっ…あああっ…やぁっ…駄目…だっ…出る…出ちゃうっ…!」
「いいよ出して。ほら」
「―――!!!くっ…はっああああっ!!!」
ぎゅっと先端の割れ目を扱かれる。その刺激に耐え切れずにケントはセインの手のひらに白い欲望を吐き出した。
「気持ち良かった?じゃあ今度は俺を気持ちよくさせてね」
はあはあと荒い息のままのケントの耳元にひとつセインは囁くと、精液で濡れた指先を最奥へと忍び込ませる。先ほどの刺激で開き始めた蕾の中へと指を埋めてゆく。
「…くっ…ふっ…はっ、……」
「もう簡単に指が挿いるな、狭さは変わらないのに」
「…そんなこと、…言うな…あっ…ぁぁ…」
「ほら、もう全部指が挿った。でも指じゃ足りないよな」
快楽のせいで重たい瞼を必死で開けば、舌をぺろりと舐めながら自分を見下ろす相手の顔は何処までも『雄』の顔だった。その表情に背筋がぞくぞくするのを止められない。止められ、ない。
「足りないよな、相棒。欲しいのはコレだよな」
指が引き抜かれる。脚を限界まで開かされる。腰を掴まれて、そして。そして入り口に当たるモノは指なんか比べ物にならないモノで。比べ物にならない巨きくて硬くて熱い、モノ。
「欲しいだろ?コレが」
煽るように入り口をなぞられ、浅ましい入り口はひくひくと刺激を求めて切なげに蠢く。首を振って否定しても無駄だった。何よりも正直な場所が、目の前の『雄』を求めている。求めて、いる。
「挿れてって言えば挿れてやるよ、ほら」
「――-っ!あっ!……」
入り口を先端が擦ってくる。熱く脈打つソレが。硬くて巨きい、ソレが。何よりも欲しいモノが。何よりも欲しい……
「…れて…くれ……」
欲しい。ソレが欲しい。欲しくて堪らない。その楔で中を掻き回してほしい。ぐちゃぐちゃに掻き回して、奥まで貫いてほしい。一番深い場所まで、ソレを。
「…挿れて…くれ…ソレを…私の…私の中に…っ!」
「良く言えました。じゃあたっぷりと味わってね、相棒」
ぐいっと腰を引き寄せられる。その瞬間に望んでいたモノがケントの中に挿ってくる。ずぶずぶと濡れた音と共に。
「――――-ああああああああっ!!!!」
「気持ちイイ?俺も気持ちいい。お前の中凄く、凄く、気持ちいい」
がくがくと腰を揺さぶられる。そのたびに媚肉が擦れ合い淫らな音を立てた。その音すら、身体を火照らせ痺れさせてゆく。
「…ああああっ…ああああっ…あ、あ、あ、――-もぉっ…もぉっ…!……」
「イイよ、ケント。俺もう限界…出す…くっ―――」
「―――――っ!!!!!」
弾ける音が、する。その瞬間熱い液体が体内に注がれる。どくどくと注がれる。それを感じながら、自らも今日二度目の射精をした。


当たり前の事になってゆく。お前とともにいる事が。お前に背中を預け寝お前に心を預け、そして。そしてこうして肌を重ねる事が。当たり前の日常になってゆく。ふたりでいる事が、ふたりで『在る』ことが。


――――それはひどく、ここちよいもので。ひどく、みたされるもので。


意識のないその瞼にひとつ唇を落として汗ばむ前髪を掻きあげてやれば、ひどく幼く見える寝顔だった。その寝顔を何よりも愛しげな瞳でセインは見つめて、そして。そしてひとつ呟いた。


「―――お前のこんな顔知っているのは、俺だけなんて…何よりも贅沢だな…でもまあ、『恋人』の特典って事で満喫させてもらうさ……」