水面に溢れるほどの星を浮かべよう。手のひらでも掬いきれないほどのたくさんの星を。
ぽちゃんと雫が顔に跳ねた。それが嫌で指で払いのけようとしたら、白いその指先がそっと絡んできた。
「駄目よ、ガイツさん」
くすくすと微笑ってフィオーラはその雫を自らの舌で掬いあげた。その瞳が悪戯をしている子供のように思えて、ガイツは苦笑するしかなかった。普段は気真面目で、ひどく大人びて思えるのに、こんな時はひどく子供じみた行為をする相手に。
「本当にあんたは物好きだな」
「どうして?」
絡んだ指先はそのまま結ばれる。触れているぬくもりが水の冷たさを忘れさせた。ひんやりと包み込む、この広い星屑のプールを。
「夜の海に行きたいなんて言うし、それに何よりこんな俺に惚れてるし」
「こんなじゃないわ。ガイツさんは私にとっては何よりも素敵な人よ」
裸の胸が重なる。何もつけずに飛び込んだ海で、ふたりは生まれたままの姿になって子供のようにはしゃいだ。はしゃいで、そして。そして子供ではない行為をする。
「私にとって一番カッコいい人よ」
嬉しそうに微笑むフィオーラの顔を見ていたら、再び目の前の肢体に触れずにはいられなかった。先ほど重なりあい欲望で果てたばかりなのに、再び欲望に火が灯り上半身を水から引き上げると、曝け出された乳房に吸いついた。
「…あっ…もうっ…ガイツさんっ…あぁっ……」
赤ん坊が母親の乳房に吸い付くように、ガイツは執拗にフィオーラのソレに吸いついた。先ほどの行為の残り火はすぐに灯され、フィオーラの身体を火照らせた。
「…ぁぁ…もうっ…さっき…したばかりなのにっ…あぁんっ……」
冷たい水も身体から湧き上がる熱で打ち消された。下半身からじわりと快楽が襲ってくる。すぐにそれは濡れた液体となってフィオーラの秘所を濡らす。けれども水に浸されているせいで、濡れているくらい感じている事を相手に伝える事が出来なくて。
「…ガイツさん…っ…ココ……」
「ん?」
フィオーラの声にガイツは胸の愛撫を止めて、膝の上に乗せた相手を見上げた。その瞳が濡れているのは目の前に広がる水面のせいだけじゃないのだろう。
「…ココ…ね、…ココ…触ってほしいの……」
手を掴まれそのまま秘所へと導かれる。水に泳ぐ茂みを掻き分け、蠢く媚肉に指を挿れれば、ソレはすぐにきつく締めつけてきた。
「あ、あ、あっ!」
水の中で行われる愛撫はどんなに激しい動きをしても、何処か宙に浮いているようだった。水が刺激を緩和して、もどかしい愛撫へと変化させるせいで。けれども。それでも、フィオーラにとっては十分だった。大好きな人の手が自分を掻き乱していると感じるだけで、それだけで濡れられるから。それだけで、溺れられるから。
「―――フィオーラ…俺の……」
「…んっ…んんっ……」
長い髪が裸の胸に当たり、そのまま唇が重なった。下腹部を指で弄りながら、何度も何度もキスをする。身体だけじゃなくて、心も繋がっているんだと、こうして求めあっているんだと確認するために。
「…んんんっ…んっ!!!」
舌を絡め合いながら、身体を繋げた。水すら侵入出来ないほど、みっしりとその楔に埋められる。埋められて、ゆく。
「ふっ…んんっ!…んんんんっ!!」
ぴちゃぴちゃと揺れるたびに水滴が跳ねた。けれども構わずに腰を揺らし互いの媚肉を擦れ合わせる。抜き差しを繰り返し、硬さと熱さを確かめ合う。
「―――――っ!!!」
ぐいっと強く引きつけられて体内に精液が注ぎ込まれる。どくどくと重なっている腹の筋肉が蠢くのを感じながら。
ぽたぽたと零れる水滴が月の光に反射している。
「…もう…ガイツさんったら……」
それがひどく綺麗で。とても綺麗だから。
「…でも…嬉しい…貴方とこうして繋がっていられて……」
指先で、触れた。唇で、触れた。
―――――身体を繋げたままで。こころを結んだままで……
「…俺の方が…嬉しいんだぜ…」
唇が離れてぼそりと俯き加減にガイツは呟いた。それが照れ隠しだとすぐに分かるようになった事が、フィオーラには嬉しかった。このひとの不器用な優しさと、愛情がこうやって手に取るように分かるようになった、自分が。
「…その、お前がそばにいてくれて…俺を好きになってくれて…」
そしてそんな貴方だから、私は好きになったんだと。不器用だけど誰よりも優しい貴方だ゛から、私は恋をしたのだと。
手のひらで掬いきれない星屑はまるで。まるで、溢れて零れる貴方への想いのようだった。
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