Honesty Feeling



瞼を開いた先に重なり合った視線に、無意識に口許から笑みが零れるのを止められなかった。こうして自分が開くよりも先に、その瞳が見つめていてくれた事に。その瞳の優しさが嬉しくて、見ていたいと思った。ずっと、その顔を。
「…ジスト……」
名前を呼べば大きな手のひらがそっと髪を撫でてくれた。その感触が心地よくてついまた瞼を閉じてしまう。今その顔をもっと見ていたいと思った筈なのに。
「まだ夜が明けるまで時間がある…寝ていろ」
微かに掠れた声が耳元に馴染む。こんな声を知っているのはきっと自分だけ。そう思ったらこのまま眠るのが惜しくなって、もう一度瞼を開いた。
「君の顔を見ていたら、目が覚めた」
「何だ、それは?」
「言葉通りだよ」
腕を伸ばしてそのまま背中に廻した。広くて大きくて、そして何よりも安堵出来るその背中へと。裸の皮膚は暖かく、手のひらにすぐにその体温は馴染んでゆく。
「君の顔をもっと見ていたくなったから、眠るのが惜しくなった」
見つめて、見つめ合って。そしてもう一回穏やかなその瞳の色を確認して、そのまま唇を重ねた。決して拒む事のないその唇に。


―――― 一部分でも、いい。何処でもいいから触れていたい。それだけで、しあわせ。


触れるだけのキスなのに、互いの肌に熱が灯る。
「…馬鹿…そんな事したら……」
絡み合う視線が夜に濡れる。吐息が甘い色を滲ませる。
「―――またお前が、欲しくなんだろーが……」
そして、止められなくなる。身体が、想いが、止まらない。


「…私も…欲しいよ…君の全部が……」


触れて離れて、そしてまた重なる唇。それは自然に深いものへと変化し、互いを貪り合う。甘くて熱い吐息と、生き物のように蠢く舌を絡め合わせながら。
「…んっ…ふ…はぁ……ん……」
背中に廻した腕に力を込めれば、熱い肌が重なり合う。そこから伝わる体温が互いに染み込み、混じり合ってゆく。絡み合ってゆく。
「…ジス…ト…っ…はぁん……」
唇が離れた瞬間に零れるのは相手の名前だけ。愛しいその名前だけ。その声に答えるようにジストのざらついた舌が、唾液で照らされた唇を舐め取った。その感触にすらサレフの、睫毛は震えるのを止められない。
「…ぁ…は…っ……」
ちくちくする無精ヒゲの感触と同時に、舌が顎に伝う唾液を舐め取る。ぴちゃりと濡れた音を立てながら。
「サレフ、もう止められねーぞ。いいか?」
「…そんな事…聴くまでもないだろう?」
ジストの問いかけにサレフは自らの脚を絡めて答えた。変化し始めた下半身を押しつけながら。そして同じように熱く硬くなり始めたジストのソレを確認しながら。
「ああ、そうだな。なら遠慮なく…お前を味あわせてもらうぜ」
言葉通りにジストの武骨な指がサレフの胸の飾りを嬲り始めた。敏感なソコはすぐに形を変化させ、ぴんっと張り詰めた。
「…あっ…あぁんっ……」
与えられる愛撫にサレフは堪えることなく喘いだ。恥ずかしがる事も、自分を抑える事もする必要がない。目の前の相手には何も繕う必要はない。感じたままの自分を見せればいい。ありのままの自分を曝け出せばいい。
「―――気持ちイイか?ココが」
もう一方の胸の果実を口に含みながらジストは問いかけた。そのたびに敏感な器官に歯が当たって、サレフの口から甘い喘ぎを零れさせる。甘くて熱い、吐息を。
「…イイ…ソコが…っ…あっ…あぁ……」
こくこくと頷きながらサレフは答えると、髪に指を絡めそのまま胸元に引き寄せた。答えた言葉が正しいとでも言うように。胸の突起を口許へと押し付けて、愛撫をねだった。
「正直だな―――ならご褒美だ」
「―――ああんっ!」
歯を立てられ、そのまま強く噛まれる。その刺激に耐えきれずにびくんっ、とサレフの身体が大きく跳ねた。それを確認するとジストはそのまま指を下半身へと滑らせ、形を変化させたサレフ自身を擦り抜け、その奥にある秘所に指を忍ばせた。
「…くふっ…はぁっ…ぁぁっ……」
前の行為の跡が残っているソコはすぐに指を受け入れ濡れた音を立てる。ぴちゃぴちゃと、指の動きに合わせながら。
「ココと、コッチ、どっちがイイか?」
胸と秘所を交互に弄られながら、低い声が耳元に降ってくる。それだけで、痺れるような快感が襲ってくるのに。それだけで、じんじんと痺れてくるのに…言葉にするのには喘ぎが邪魔をして…言えなくて…だから……。
「そうか、コッチか。なら指よりも…コレのがいいんだろう?」
「…あっ……」
ずぷりと音とともに指が引き抜かれ、その代わりに硬くて熱いモノが入り口に宛がわれる。それだけで、もう。もうどうしようもない程に、身体が濡れてしまう。
「―――お前が欲しいのは、コレだろう?」
入り口を楔の先端が煽るようになぞった。そのもどかしさに身体が震えるのを止められない。入り口がヒクつくのを抑えられない。

欲しい。ソレが、欲しい。中に挿ってきて欲しい。媚肉を押し広げて、中を掻き乱して欲しい。ぐちゃぐちゃにして、欲しい。

腰に絡めた足に力を込めて引き寄せた。けれども楔は入り口を優しくなぞるだけで、中へと挿ってきてくれない。楔を打ち付けてくれない。
「…ジストっ…もうっ……」
耐えきれずに悲鳴のような声がサレフの口から零れる。そんな様子を見下ろす唇は意地悪げに微笑っていた。その笑みにすらひどく雄の匂いを感じて、サレフの身体は熱を増す。
「もう?どうして欲しい?」
「…しい…君が……」
分かっている癖に聴いてくる相手を少しだけ恨めしいと思いながらも、それ以上にソレが欲しかった。欲しくて堪らなかった。その熱くて硬いモノが。
「…君の…ソレが…欲しい…だから挿れて…くれ…私の中にっ……」
「―――ああ、幾らでも挿れてやんよ。お前が欲しいだけ、な」
「あああっ!!」
ずぶずぶと音を立てながら、一気に楔が打ち込まれる。その圧倒的な存在感に焦らされた媚肉は、浅ましい程にソレを締め付ける。きつく、締め付ける。
「―――くっ…さっきヤッたばっかなのに…キツいなお前のココは…このままでも出ちまいそうになるぜ……」
与えられた言葉にすら、身体は反応する。千切れるほどにきつく肉棒を締め付け、もっともっとと深い快感を求めた。
「全く、しょーがねーな」
「…ああっ…ああああんっ……」
締め付けに抵抗するように、腰を打ち付け楔は抜き差しを繰り返す。そのたびにソレは硬く強く、そして巨きくなってゆく。媚肉の抵抗すらも突き破るように、奥へ奥へと打ち込んでゆく。
「あああっ…あぁぁぁっ!……」
がくがくと揺さぶられ、接合部分が擦れ合う。ぐちゃぐちゃと濡れた音を立てながら。そのたびに悲鳴のような喘ぎがサレフの口から落ちてきて。そして。
「ち、限界だ…出すぜ、サレフ」
「――――っ!!あああああっ!!!」
そして弾けるような感覚とともに、サレフの中に熱い液体が注がれる。それを感じながら、自らも白濁とした液体を吐き出した。


離れるのが嫌だったから、繋がったままでキスをした。欲望を吐き出した後でもこうして繋がっていたかったから。
「このままじゃ、夜が明けても…離れられねーな」
睫毛を重ねながら囁かれた言葉にサレフはひとつ微笑った。そして告げる―――離れたくない、と。ずっとこうしていたいと。



「―――ああ…俺もだ…サレフ…自分でも悔しいくらいに俺は…お前に惚れているみたいだ」