雲ひとつない夜空にはぽっかりと丸い月が浮かび、瞳に無数の星を映し出してくれた。邪魔な街の明かりがひとつもないこの場所は、幾らでも夜空に浮かぶ星を見せてくれた。
「―――綺麗だ、星」
ほつりと呟いたマリカの言葉に、ジストはまじまじとその横顔を見つめた。その表情は何時もの無表情な顔でしかなかったが。けれどもそれは他人が見ればそう思うのであって、ジストにはもう分かるようになっていた。無表情に見えて、けれどもその時その時に微妙に感情を変化されているマリカの表情を。
「ああ、こんなにたくさん見える場所は中々ねーよな」
都会の雑踏とは違い木々に囲まれたこの場所はただひたすら静寂に包まれていた。戦場へ向かう前の野営という状況でなければ…それはひどくロマンチックなものになっただろう。ましてふたりのこの関係ならば。
「いい場所だ。それに…隊長と一緒だ……」
暗闇でも他人には無表情にしか見えなくても、ジストには伝わった。今どんな気持ちで、その言葉をマリカが告げているのかを。そして。そしてジストの気のせいじゃないだろう、その頬が微かに朱に染まっているのは。
「―――ああ、そうだな。お前となら野営も…悪いものじゃねーな」
そっと肩に手を置いてそのまま引き寄せて唇を奪う。もう何度もこうして唇を重ねているのに、触れる瞬間に肩をぴくりと震わせるのはずっと変わらなくて。そんな所がひどく。ひどく、ジストには愛しかった。
目を閉じれば緑の匂いが鼻腔をくすぐる。木々の優しい緑色の匂いが。それに混じって染み込んでくるのは夜の、薫り。
「…隊、長……」
触れるだけだった口づけは何時しか深いものへと変化してゆく。互いの舌を絡めあい、根元まで弄るようなそんな口づけに。
「…マリカ…いいか?」
肩を抱いていた筈の手は何時しかマリカの胸の膨らみに触れる。それを軽く揉んでやれば、びくんっと身体が跳ねた。
「…聴くな、そんな事…隊長のしたいようにすれば…いい…私も同じだ……」
その言葉を確認してジストはその細身の身体を芝生の上に組み敷く。緑の匂いが一面に広がった。
「…あっ……」
首筋に口づけながら上着の下から手を入れて、直に胸のふくらみに触れた。柔らかい乳房を揉んでやれば、マリカの口からは甘い声が漏れる。
「…あぁっ…んっ…隊長っ……」
普段は無口すぎるほど無口なのに、この時だけはマリカは饒舌になる。ただし喘ぎ限定だが。敏感すぎる身体は熟練なテクニックを持つジストの手に掛かれば、いとも簡単に快楽の波に溺れてしまうのだから。
「―――気持ちいいか?マリカ」
「…そんな事…言うなっ…あぁんっ!」
上着をたくしあげられて夜の闇に白い胸が露わになる。そこにあるピンク色の乳首を口に咥えれば、マリカの無意味な言葉の抵抗はすぐに喘ぎにすり替わった。
「…ぁぁんっ…はぁぁっ…やんっ!」
わざと音を立てながら乳首を舐め、唾液で照るほどに濡らす。ちろちろと舌で舐めながら空いた方の胸を鷲掴みにすれば、耐えきれずにマリカの身体が鮮魚のように跳ねた。
「…駄目っ…隊長…ああっ…あぁぁんっ……」
「駄目じゃねーだろ?もうこんなに濡れてんのに」
「――――ああっ!!」
胸を弄っていた方の手が何時しか下腹部に伸びて、下着の中に手を入れられる。そのまま茂みを掻き分け秘所を弄る指は、マリカから溢れる蜜のせいでしっとりと濡れていた。
「気持ちイイんだろう?マリカ」
「…違っ…あぁっ…ああんっ…あんっ……」
くちゅくちゅと音を立てながら指が秘所を掻き回す。そのたびにマリカの脚ががくがくと震えたが、ジストは構わずに行為を続けた。器用にマリカの下着をはぎ取りながら。
「…あっ……」
ちゅぷんと濡れた音とともに指が引き抜かれる。足首を掴まれ一番恥ずかしい部分を広げさせられる。ひんやりとした感触に瞼を広げれば、そこにはそそり立つジスト自身があった。それはとても巨きくて、硬くて。そんなモノがどうして自分のこんな小さな孔に入るのか何時も不思議でしかたなかった。けれども嫌じゃないから。挿れられて、掻き回されて、ひとつになることは嫌じゃないから。
「…隊…長…もう……」
「ああ、マリカ。今コレをお前の中に―――」
「…隊長…っ…くっ…はぁぁぁぁっ!!」
入り口に当たったと思ったら、ソレはすぐにマリカの中に挿ってきた。ずぶずぶと音を立てながら。奥へと埋め込まれるペニスはマリカの中で圧倒的な存在感を示し、まるで内壁を引き裂くかのように捻じ込まれてゆく。
「…あぁぁっ…ああっ…あ、あ、あ、…もぉ…もぉ…たいちょ…おっ……」
語尾が快楽の涙で滲み、普段では絶対に聴かれない甘い声が口から零れてくる。快楽に溺れる時だけ舌ったらずになるのを知っているのは自分だけで。自分だけがそんなマリカを知っていて。そう思ったら、限界だった。きつく締めつけてくる媚肉の感触を味わいながら、激しく腰を打ち付けジストは自らの欲望をマリカの中へと吐き出した。
汗ばむ前髪を掻きあげてやれば、重たい瞼が開かれる。そこにある瞳はまだ夜と快楽に濡れていた。
「―――マリカ、好きだぜ」
ぼんやりとした視界は焦点が合わず、夜空の星を映していた。けれどもジストの声によってその視界は戻される。星の綺麗な夜空から、目の前にいる恋人へと。
「…うん、隊長…私も…好きだ……」
そして背中に伸ばされ抱きついてきた腕の感触を感じながら、そっとひとつ瞼に唇を落とした。そっと、ひとつ。
――――夜空の星よりも、綺麗な瞳の元へと……
お題提供サイト様 確かに恋だった