曖昧な朝



―――目覚めた瞬間に、その瞳があったならば。きっと。きっとそれだけで、嬉しい。


朝なんて来なければいいのに…そんな我が儘な想いが溢れて止まらないのは、この腕の中の暖かさと心地よさを知ってしまったから。
「クーガー」
名前を呼んでみる。それだけで湧き上がってくる想いがある。それが全身に満たされた瞬間、泣きたくなるほどの幸せを感じる。
「どうした?姫」
こんな風に夜を重ねる関係になっても、律儀に自分を『姫』と呼ぶ彼をひどく可愛いと思う。普段は強くて誰よりも頼りになる男の人なのに。なのに、こんな時は。
「何でもない、ただ名前呼びたかっただけ」
自然と口許が綻ぶのを止められない。止められないから、そのままぎゅっと抱きついた。それだけで、幸せ。幸せすぎて、壊れてしまいそうな程の。
「ふふ、大好き。クーガー」
でもまだ、壊れたくないから。もっともっと幸せを感じたいから。だからこうやって名前を呼んで、気持ちを伝えて。そして。そして確認するようにキスをする。たくさんの幸せを。


生まれて初めて、諦められない感情がある事を知った。どんな事をしても、どんな手段を 取っても、諦められない事があるんだと。だから捜した。必死になって捜した。貴方だけを、捜した。
「大好き、クーガー」
唇を、重ねる。何度も何度も。角度を変えて触れあうだけのキスを、いっぱい。その合間に零れるのは、好きという言葉と想いだけで。
「―――俺もだ…姫……」
真っすぐな瞳に見つめられて嬉しくてずっと見ていたら、そのまま口づけられた。だから瞳を見ている事が叶わなくて瞼を閉じたら、そのまま深く貪る口づけを…くれた。
「…んっ…ふ…んんっ……」
忍び込んでくる舌を必死で絡め取る。そのまま唾液ごと混じり合わせ、深く溶け合った。
「…はぁっ…クーガー…私……」
唇が紅く染まるほど口づけられて、意識が蕩けてゆくのを止められない。じいんと身体の芯が疼いてくるのも。もう、止められなかった。
「…私に…触れて、ね……」
逞しいその指を自らの胸のふくらみに当てた。それだけで身体に熱が灯るのを抑えられない。
「…ね、…クーガー……」
上から重ねて胸のふくらみごと握れば、逞しい指が乳房を包み込む。そのままぷくりと立ち上がった乳首を指先で捏ねられた。
「…あぁ…あんっ……」
「気持ちいいか?ココが」
「…うん…気持ち…イイよぉ…もっと…もっと触って……」
指で胸の突起をきつく摘ままれれば、その刺激に痛い程にソレは張りつめる。そのまま空いた方の乳首を口に含まれれば、もう耐えきれなかった。
「…ぁぁ…あんっ…気持ち…いい…もっと…もっとぉ……」
ぴちゃぴちゃと濡れた音が響く。唾液でべっとりになるまで、乳首を舐められれば、無意識に腰が揺れた。下半身が熱くなって、脚が動くのを止められない。股をきつく閉じて、内股を擦り合わせた。
「胸よりも、コッチの方が感じてるのか?」
「ああんっ!」
自分で擦り合わせていた内股を強引に開かされた。そしてそのままじっとりと濡れた秘所に指が忍び込んでくる。その刺激に、喘いだ。気持ちよくて、声を上げた。
「…あぁんっ…あんっあんっ…イイよぉ…ああ……」
指が中を掻きまわす。くちゅくちゅと、濡れた音とともに。そのたびに蜜が滴り、腰が蠢く。もっと深い刺激を求めて、もっと激しい快楽を求めて。
「…クーガー…ああんっ…あんっ…ひゃぁ…んっ………」
中を蠢く指の本数が増やされ、それが好き勝手に媚肉の中を動き押し広げられる。ぐいっと限界まで広げられれば、悲鳴のような声が口から零れた。
「…あっ……クーガー……」
指が引き抜かれる瞬間の喪失感に、ぶるりと身体が震えた。何も与えられなくなったソコは、もどかしげにひくひくと震えている。もっと、と。もっと激しい刺激が欲しいと。
「姫、コレが欲しいか?」
「…あ……」
腕を掴まれ上半身を起されれば、口許に熱く硬いモノが当たった。どくどくと熱く脈打ち、十分な硬度を持ったソレが。
「…欲しい…欲しいよぉ…クーガーのコレが……」
ソレの先端部分が唇の上をなぞってゆく。それだけで、もう堪らない。堪らないから、そのまま。そのまま唇を開いて、その肉棒を口に含んだ。
「…んっ…んんんっ…ふぅ…んっ……」
既に十分な硬さと巨きさを持ったソレは、直ぐに口の中をいっぱいに満たした。喉の奥まで貫くような巨きさが、下半身を濡れさせる。コレが、自分の中に挿いるんだと想像するだけで。
「…んんんっ…んんんっ……」
首を前後に動かし、何度も何度もソレを口に含んだ。出し入れを繰り返すたびに、肉棒はより巨きく、硬くなってゆく。こうして口では呑みきれなくなるくらいに。
「…んんんっ…はあっ……」
髪が掴まれたと思ったら、口の中の楔が消滅した。うっすらと目を開くと、目の前にそそり立つ肉棒は既に先端から先走りの雫を零し、どくんどくんと熱く脈打っていた。
「…クーガー…コレ……」
「…姫……」
「…コレが…欲しい…欲しいよぉ…いっぱい…欲しい……」
「ああ、姫。俺も早く姫の中に入りたい。この中に」
「―――あっ……」
足首を掴まれ、そのまま肩に担がれた。そして入り口にソレが当てられる。熱くて、硬くて、巨きなソレが。その圧倒的な存在感に、満足したように口からは甘いため息が零れた。


夜がずっと続いてくれればいい。ずっと、ずっと。
こうして永遠に抱き合えたらいい。抱き合って、溶け合って。
身体という境界線が曖昧になって。曖昧に、なって。
そしてぐちゃぐちゃに溶け合えてしまえたら。全部、ぜんぶ。


――――ふたりぐちゃぐちゃに、まじりあってしまえたならば。


繋がった個所から濡れた音が響く。ぐちゃぐちゃと、濡れた音が。それと同時に襲ってくる激しい熱。接合部分から全身に広がってゆく、熱いモノ。
「…ああんっ…あああんっ…あんあんっ!!!」
媚肉は限界まで広げられ、望んでいた楔がぎっしりと埋め込まれている。欲しくってたまらなかった、その肉棒が。
「…いいっ…いいよぉ…クーガー…気持ちイイよぉ…ああああ……」
腰を掴まれ何度も何度も出し入れを繰り返される。ぱんぱんと激しく腰を打ちつけられながら。そのたびに貫く楔が存在感を大きくしてゆく。中を広げてゆく。
「…あああ…あああんっ…もぉ…もぉっ…!…」
「イクか?姫――― 一緒に……」
「イクっ…イクよぉ…イッちゃうよぉっ!!」
「―――ああ、イコう…だすぞ」
「ああああああっ!!!」
どくんっ!と激しい振動とともに、体内に熱い液体が注がれる。その熱さと激しさに満足したように喘いで、そのまま。そのまま、意識を真っ白にさせた。


夜と朝の境界線が曖昧になって。このぬくもりがずっと。ずっと、続いてくれれば。それだけで、しあわせ。それだけで、うれしい。私は貴方を感じられれば、それだけで何もいらない。いらないの、あなた以外。



指先に暖かい感触を感じて、水面下から意識が呼び戻される。そのまま重たい瞼を開ければ、優しい瞳がそこにあった。それを確認して再び瞼を閉じる。その口許は無意識に…微笑って、いた。