Better Days



―――自分でもどうしようもない程に自覚している。こいつが堪らない程好きだって。


「わあ、可愛いな」
―――そう言っているお前の方が何倍も可愛いぜ、と言おうとして寸での所でヨハルヴァは声にするのを止めた。そんな事でこの屈託のない笑顔を遮ってしまうのはもったいない気がして。
「本当だな、スカサハ」
その代わりとでも言うようにそっとヨハルヴァはスカサハの肩に手を置いた。あれだけ戦場では強く大きく見えるその身体も、こうして肩を抱けば包み込む事が出来る。それがヨハルヴァにとってのささやかな自己満足だった。この手で抱き寄せるだけの細さと、そして何よりもそんな自分の行為を否定しない事に。
「目、大きいなあ。あ、餌を食べているよ」
それどころか子供のようにきらきらとした瞳で自分を見上げてくる。目の前の野兎の動作に一喜一憂しながら。確かに目の前の兎は愛らしいのだが、それ以上に目の前の相手が愛らしすぎてヨハルヴァの視界にはスカサハしか入って来なかった。まあそれも、何時もの事なのだが。そう、何時もの事。こうして目に映る相手はただ一人だけ。
「―――俺も食べてーな」
「ん?ヨハルヴァ、お腹空いたの?」
兎から視線を離しヨハルヴァを見上げてくる瞳は、何処までも無邪気だ。けれども知っている。その無邪気な瞳が別の色彩を見せる事を…そしてそれを知っているのは自分だけだという事を。
「ああ、空いた。だから―――」
「――――っ!」
驚きに見開かれる瞳が何よりも綺麗だと思いながら、瞼の裏にヨハルヴァは焼き付けそのまま唇を盗むように奪った。そして。
「だから、お前を食べさせてくれ。スカサハ」
自らの唇をひとつ舐めながら、悪戯をする子供のような瞳でスカサハにそう告げた……。


久々の休日だからとふたりで近くの森へと出かけた。特に何をする訳でもなく、ただ。ただのんびりと森の中を散策するつもりだった。そうして普段の疲れを取って明日からの忙しい日々に備えるつもりだったのに。
「…今日は…ゆっくりするんじゃなかったのか?……」
草の匂いがふわりとスカサハの鼻孔をくすぐった。けれども今はそれどころじゃない。この自分の上に伸しかかってきた逞しい肉体のせいで。
「そのつもりだったんだけど…お前が悪い」
「何でだよ、ヨハルヴァっ?!」
「だってお前がそんな無茶苦茶可愛い顔するから」
真顔で告げられた言葉にスカサハの耳がみるみるうちに真っ赤になる。身近にいるヨハルヴァでなくても分かるほどに。それがあまりにも可愛くて堪らずにヨハルヴァは組み敷いた身体をぎゅっと抱きしめた。
「畜生、何で…もうお前はそんなに可愛いんだ。我慢出来ねー食べさせろ」
「…食べさせろって…お前そんな…っあっ!」
ヨハルヴァの手がスカサハの上着の裾から滑り込み、そのまま胸の飾りに触れた。その刺激だけで敏感なスカサハのソレは反応を寄こした。
「…っ駄目だって…っこんな…誰かに見られたら……」
「こんな場所に誰も来ねーよ、だから、な」
「…だからって…あっ…あんっ…!……」
親指と人差し指でぎゅっと胸の突起を摘まんでやれば、スカサハの口からは耐え切れずに甘い声が零れてくる。それと同時に組み敷いた脚がもぞもぞと動き出す。
「どうした?脚が動いてるぜ、気持ちいいのか?」
「…違っ…これはっ…ぁぁっ……」
息を吹きかけられるように囁かれ、ぺろりと耳を舐められた。その瞬間にびくんっ!とスカサハの身体が反応し、組み敷いた下半身に変化が現れてくる。それを感じたヨハルヴァはにやりとひとつ、微笑った。
「気持ちいいんだろ?ほら」
「―――っ!ああんっ!!」
胸を弄られながら、布越しに膨らみ始めた自身をすっと撫でられた。それだけで感じてしまう身体を恨めしく思いながらも、与えられる愛撫を堪える事が出来なくて。
「もうこんなになってるぜ、ほら」
「…あぁっ…ああっ…あぁんっ……」
ジィと金具が降ろされる音がして、スカサハ自身が外に晒される。一瞬ひんやりとした空気のせいでソレは縮こまったが、すぐに熱い手のひらに包まれてすぐに大きくなってゆく。
「ココ、こうされるとお前弱いんだよな」
「――!あああんっ!!駄目っ!ソコはっああああっ!!」
先端の窪んだ部分に爪を立てられ、耐え切れずにスカサハのソコからは先走りの雫が零れてくる。それを人差し指の腹で掬い取ると、そのまま先端の割れ目の部分に擦り付けた。そのたびにどくどくと手のひらの中のモノが脈を打った。
「…やぁんっ…ヨハル…ヴァ…そんな…意地悪…するなよぉっ……」
快楽に飲まれそうになる意識を必死で留めて、スカサハは濡れた目で伸しかかる相手を睨んだ。けれどもヨハルヴァにとってはそれすらも可愛くて堪らないもので。食べちゃいたいくらいに、可愛いもので。そう、食べちゃいたいくらいに。
「意地悪なんてしねーよ。俺はお前が大好きだから。だから」
汗ばむ前髪を掻きあげて、形良い額にひとつキスをした。そうすれば腕の中の相手がぎゅっと瞼を閉じるのを知っているから。その顔を堪能して、ヨハルヴァはスカサハのズボンを降ろした。そしてそのまま最奥に指を忍ばせる。先走りの雫で濡れた指を。
「…くふっ…はぁんっ…ぁっ……」
くちゅくちゅと音を立てながら、狭い穴を掻き乱す。奥へと進むたびにきつく指を締め付けてくる媚肉の圧迫感を楽しみながら、ヨハルヴァは抵抗するように中を押し広げた。
「…やぁっ…んっ…ヨハル…ヴァっ……」
いやいやと首を振りながらも艶めいてくる声に満足し、指の本数を増やして中を掻き廻した。ぐいっと押し広げ、媚肉の抵抗を楽しむ。そのたびに組み敷いた身体はびくびくと鮮魚のように跳ねた。
「肌が朱く色づいて、すっかり食べごろだな。スカサハ」
ジィと、金具の音がする。その音にうっすらと目を開けば、仰け反るほどに巨きくなっているヨハルヴァ自身がそこにあった。そう何時も。何時もこんなに巨きなモノが自分の中に挿って、中をぐちゃぐちゃに掻き回す。こんなら巨きなモノが。
「…もぉ…何言って……」
「―――それじゃあ、美味しく頂くぜ」
にやりとヨハルヴァはひとつ微笑うとスカサハの細い腰を掴んで、そのまま自らへと引き寄せた。スカサハの狭い入り口にソレを充てれば、びくんっ!と身体が跳ねた。その反応を楽しみながら、ヨハルヴァは自らの楔をその狭い秘孔に突き入れた。
「―――っ!!ああああっ!!!」
ずぶずぶと濡れた音を立てながら、肉棒がスカサハの中へとめり込んでゆく。きつく閉じられた蕾を押し広げ、奥へ奥へと。そのたびにぎゅっとヨハルヴァの楔を締め付け、逃さないとでも言うように咥え込んだ。
「…あああっ…ヨハル…ヴァ…あああんっ!あんっ!あんっ!!」
がくがくと腰を揺さぶりながら抜き差しを繰り返す。そのたびに貫く凶器は巨きく硬くなり、内壁は貪欲に締め付けてくる。引き千切るとでも言うように。
「…いいぜ、スカサハ…お前のココは最高だ……」
「…そんな…事…言う…なぁっ…あああっ」
「最高に気持ちイイぜ。こんなにぎゅうぎゅうと締め付けて…もう堪らねー出すぜっ!」
「…まっ…待って…ヨハルヴァ…まっ…ああああああっ!!!!」
どぴゅっ!と弾けるような音とともにスカサハの中に熱い液体が注がれる。どくどくと音を立てながら。その熱さに溺れながら、スカサハ自身も自らの腹の上に精液をぶちまけた。


自覚、している。どうしようもない程に惚れているって。
「ごちそうさま、スカサハ。美味しかったぜ」
本当に自分でもあきれるほどに、こいつに惚れているんだって。
「…もぉ…ヨハルヴァの馬鹿…せっかく…」


「…せっかく…お前をゆっくり休ませてやれるって思ったのに……」


スカサハの言葉にヨハルヴァは微笑う。何よりも嬉しそうに微笑う。それはスカサハが何よりも大好きなヨハルヴァの笑顔だったから。だから。


「…まあ、いいか…お前が嬉しいなら…俺も…嬉しいから……」