LEVEL−4



欲望もレベル上げれば ちょっとやそっとじゃ満たせないけれど
是が非でもお願いしたい 君が夢のカギになるから

「…あ、ヨハ…ルヴァ……」
快楽に濡れた甘い声がヨハルヴァの耳に滑り込む。その声に答えるように、彼は薄く開いたスカサハの唇に己のそれを重ねた。
「…んっ…ふぅ…」
生き物のように蠢く舌にヨハルヴァは自らの舌で絡め取ると、それをきつく吸い上げた。
「…んっ…んん…」
ぴちゃぴちゃと淫らな音を立てながら、それは止まる事を知らないかのように深く深く互いを貪った。
「…可愛いぜ、スカサハ……」
息が出来なくなる程の永い口付けから開放すると、ヨハルヴァはスカサハの飲み切れなかった唾液を舌で舐め取った。
敏感になっている顎から首筋のラインに舌を這わすと、ぴくりとスカサハの身体が鮮魚のように跳ねた。
「…もっと…」
「もっと、どうした?」
「…もっと、キス……」
ねだるようにスカサハの両腕がヨハルヴァの背中に廻る。けれどもその指先は高まってゆく快楽のせいで力が入っていなかった。
「…キス…欲しい…」
濡れた瞳がヨハルヴァに媚びるように見上げてくる。その何処か猫を思わせる瞳にヨハルヴァは弱かった。これをされると何でも叶えてあげたいと思ってしまう。
「しょーがねーな。お前本当、キス好きだな」
ヨハルヴァの手がスカサハの顎に掛かるとゆっくりと自分へと向けた。そして濡れた前髪をそっとかきあげてやる。
「何処にして欲しい?お前の好きな所にしてやるぜ」
ヨハルヴァの言葉にスカサハの口許が、微笑った。それは子供みたいな笑顔だった。
「…全部…俺、全部…キスしてほしい……」
そんなスカサハがひどく可愛く思えて。思わずヨハルヴァはその身体をきつく抱きしめた。

…実は初めから、スカサハ狙いだった。
兄貴がラクチェと騒ぐので一緒になって騒いでいたが、実は何時も隣にいる双子の兄貴の方が本命だった。
けれども相手は男だし敵同士だったし、絶対に相手にされないと思っていた。
けれども世の中何処でどう転ぶか分からない。この絶対に手が出せないと思っていた本命は今、この腕の中に包まれている。自分の腕の中でキスをねだっている。
確かにラクチェは可愛い。無茶苦茶自分の好みだ。けれども。けれども、それ以上にスカサハの方が好みだったのだ。
何時もラクチェの隣でにこにこと微笑っていた。穏やかな笑みで、優しい笑みで。決して目立つ存在ではないのに、何時も瞳は奪われていた。その大きな瞳と、柔らかい笑顔に。
…全てが、奪われていた。

「まずはここからだな」
くすりと一つヨハルヴアは微笑うと、形良い額に口付けた。そこから瞼へと唇を移すと、震える睫毛にひとつキスをした。
「…ん…もっと……」
瞼から鼻筋、そして柔らかい頬。その頬に小さな傷口を見つけて、ヨハルヴァはそっと舐めてやった。その途端びくりと、スカサハの睫毛が震えた。
「気持ちイイか?」
ヨハルヴァの声に快楽に重たい瞼を開けると、スカサハはこくりと頷いた。そして首筋に両腕を絡めて。
「…ヨハルヴァ…だから…」
「…スカサハ…」
「…気持ち…いい……」
どうしてこいつはこんなにも可愛いのだろうか?どうしようもない程の愛しさが、ヨハルヴァの胸に込み上げてきた。
「本当にお前は可愛いな」
その言葉を裏付けるかのように、唇にキスをひとつ。それは触れるだけの柔らかい、キス。
「…ん……」
舌でスカサハの薄い唇のラインを辿り、尖った顎先に軽く口付ける。きゅっとスカサハの抱き付く力が強くなる。それを合図にヨハルヴァはその細い首筋に舌を這わした。
「…ふぅ……」
スカサハの指先が自らの口許に運ばれ、その指をきつく噛んだ。それは無意識の内の彼の癖だった。羞恥心の為か、そうやって声を噛み殺す。
そんな初々しいと頃もまた、可愛くて堪らないのだが……。
「…んっ…くぅ…んっ……」
綺麗な鎖骨の線をきつく吸い上げると、堪えきれずにスカサハの身体が揺れる。彼のウイークポイントを知り尽くしているヨハルヴァは、執拗にそこを攻め立てた。その度にぴくりぴくりと、スカサハの身体は跳ねる。
「…やぁ…んっ……」
幾つも付けられる紅い跡が、自らの所有の証だと主張する。それがヨハルヴァには満足だった。そう、彼は自分のもの。自分だけの、もの。
「…指、取れよ。傷がつくだろ?……」
そう言うとヨハルヴァは口許に持っていかれたスカサハの指を外させた。その指先は意外なほどに細い。あれだけ大きな剣を振り回していると言うのに、綺麗な指だった。
細かい傷がたくさんあったけれども…綺麗な指先、だった。
「ここも、キスしてやるよ。全部だからな」
そう言ってヨハルヴァは手の甲に一つ、口付けた。それから無数の細かい傷一つ一つに舌を這わす。どんな小さな傷も、見逃さないように。
「…ヨハルヴァ……」
ヨハルヴァは優しい。すごく、すごく。ぶっきらぼうで口が悪くて乱暴者だけど。だけど。
指を一つ一つ口に含み、舌で包み込む。それは彼の言葉通り全てに口付ける為に。スカサハの全てを、包み込む為に。
「…ヨハル…ヴァ……」
優しい、ひと。スカサハはそれを知っている。たとえ誰一人分かってもらえなかったとしても、自分だけは知っている。
…彼の大きな、優しさを。
だから甘えてしまう。だから我が侭になってしまう。だから、独りいじめしたくなる。
「…もっと…もっと…」
「しょーがねーな、お前は」
くすっとひとつ微笑うと、ヨハルヴァは再び彼の身体に紅の華を散らす。それは互いが望んだ小さな絆。互いが互いの為だけのものだと言う、約束の印。

「…あ…ぁ…」
小さな胸の突起を口に含むと、堪えきれずにスカサハの口から甘い吐息が漏れた。その反応に満足すると、ヨハルヴァはそこを軽く噛んだ。
「…あっ…ん…」
ほんのりとスカサハの身体が紅く染まる。その熱さがヨハルヴァにもじかに伝わった。熱い、身体。心も同じくらい鼓動も同じくらい、熱いのだろうか?
「…あっ…あ…」
舌で転がしながら、開いた方の突起を指で摘む。敏感なそこは痛い程にぴんっと張り詰めた。
唾液で濡れて光るそこからヨハルヴァは唇を離すと、口約通りに再び身体中に好きの雨を降らす。甘くて熱い、快楽の雨を。
「…あぁ…ん……」
鼻に掛かる、甘い声。とても同じ男のものだとは思えない。この声だけで自分はイケてしまいえそうだ。それ程までに自分はコイツに溺れているのだろうか?
いや考えるまでもない。こんなに可愛くて、こんなにも愛しい。それだけで充分に答えは出ているのだから。
首筋に絡まる指先。細かい傷だらけの身体。汗でべとついた髪。震える睫毛。どれもが何よりも自分よりも大事なもの。そしてそれは大切なひとの、全て。
「…参ったな…そんな可愛い声出すなよ。益々お前にはまっちまう」
もうとっくに捕らわれているのに、あえて口に出して言ってみた。けれどもスカサハの意識はすでに快楽の波に呑まれていたらしく、その言葉に答えてはくれなかったが。
「しょうがねーな。でも…でもこれだけは、聞けよ……」
もっと、と。ねだるように抱きついて来たスカサハの額に軽く口付けて。
「……愛しているぜ………」
耳元にそっと、囁いた。

なにも、いらない。
こうして指を絡めて眠れるのならば。
なにも、望まない。
こして瞳を交わす事が出来るのならば。

「…あっ…あんっ…」
ヨハルヴァの舌がスカサハの最も敏感な所を捕らえると、そのまま口内に含んだ。
「…ふ…う…んっ……」
淫らに絡みつくヨハルヴァの舌先に堪えきれずにスカサハの目尻から快楽の涙が零れてくる。ぽたりとひとつ、シーツに染みを作った。
「…あっ…あぁ…もう…」
先程からの愛撫のせいでスカサハのそれは堪えきれずに、先端から先走りの雫を滴らせていた。その先に舌を尖らせてやると、ぴくぴくと生き物のように蠢く。
「…あっ……」
不意に外された愛撫に、スカサハは恨めしそうな瞳で見上げて来た。そんな彼をあやす代わりに軽く、ヨハルヴァは口付けて。
「…イキてえか?でももうちょっと、我慢しろよ……」
ひどく優しい声で囁いて、自らの指をスカサハの口内に銜えさせる。
「…んっ…んん……」
ぴちゃぴちゃと淫らな音だけが室内に響き渡る。スカサハは必死でその指を舐めた。その仕草がひどく、ヨハルヴァの‘雄’を刺激した。
「もい、いいぜ。入れてやるよ」
一筋の糸を引いて、指はスカサハの口から離れた。そして考える間もなく、その指先は彼の最奥へと忍び込んでゆく。
「…んっ……」
太く節くれだった指がスカサハの中で蠢く。その淫らな動きに堪えきれずに、スカサハの口許からは甘い息が零れ落ちた。
「…んっ…ふ…」
指の本数を次第に増やしてゆき、それぞれが身勝手な動きをする。その動きに淫らなスカサハの内壁は、それを逃がさないと言うようにきつく締めつけてきた。
「…あっ…やだ…」
充分にその肉圧を感じると満足げにヨハルヴァの指が引き抜かれる。そしてその腕をスカサハの背中に廻すと、そのまま彼の上半身を起こした。
「この角度から見るのも中々新鮮だな」
スカサハの髪から頬から汗が落ちてくる。ぽたり、ぽたりと。その雫はひどく甘い想いを巡らせる。甘いを想いを。
初めてこうして身体を重ねた時も、彼の髪からは雫が滴り落ちていた。
「睫毛、長いな」
限界まで溢れた快楽のせいで、スカサハの身体はヨハルヴァに支えてもらわなくては起き上がっている事が出来なかった。けれども逆に。逆にその腕さえあれば。その力強い腕が、支えてくれれば。自分は何も、怖くない。何も、怖くはない。
「綺麗だな」
「…ヨハ…ルヴァ……」
「なんて男に使う言葉じゃねーな。でも言わせてくれよ」
真剣なヨハルヴァの瞳。この視線になら、貫かれてもいい。貫かれて傷つけられたとしても、構わない。
「綺麗だ、お前は誰よりも」
片方の腕でスカサハを支えながら、ヨハルヴァはもう一方の手で彼の頬を包み込んだ。大きくて強くて、優しい手。
「でも、俺だけのものだ」
ヨハルヴァの言葉に。スカサハはこくりと、頷いた。

欲望もレベル 上げれば
ちょっとやそっとじゃ 満たせないけれど
是が非でも お願いしたい
君が夢の カギになるから

…お前だけの…ものだ…
と口にしようとして、けれどもそれは言葉にする事は出来なかった。
ヨハルヴァの熱い楔がスカサハの体内に埋め込まれる。その硬さと熱さに、全ての言葉は喘ぎへと擦りかえられた。
「あああっ」
限界まで喉を剃り返させ、スカサハは甘い悲鳴を上げた。自らを貫く凶器に身を委ねながら。引き裂かれる痛みと快楽に全てを預けながら。
「…ああっ…あぁ……」
ぐちゃぐちゃと接合部分が淫らな音を上げている。その音に呑まれるようにスカサハは激しく腰を振った。抜き差しを繰り返すたびに膨れあがってゆくヨハルヴァのそれが、嬉しくて。ただ自分の望むままに腰を振りつづけた。
「綺麗だぜ、スカサハ」
快楽を追い続ける彼は何よりも綺麗だった。髪から零れる汗もほんのりと上気した頬も、快楽に濡れた瞳も、全部。全部綺麗だった。
「…ああっ…あぁ……」
あまりにも綺麗だからずっと見つめていたくなる。ずっとずっと。けれども淫らに締めつけてくるスカサハの内壁がそれを許してはくれなかった。
「…もぉ…ダメ…イク…あっ…」
「一緒にイコうぜ」
ヨハルヴァは自らの上半身を起こすとそのままスカサハの唇を奪った。そしてそのまま最奥ので彼を貫いて、そして体内に白い欲望を放った。

快楽も 知ってしまえば
ちょっとやそっとじゃ 満たせなくなるよ
ハーレムを 作りたいとか
そーいや昔 思ってたっけな

気だるい身体を持て余しながらも、スカサハは広くて厚いヨハルヴァの胸に顔を埋めた。そこから聞こえる心臓の音に、心地よい疲れを傾けながら。
「汗でべとべとだ」
ヨハルヴァの指がスカサハの髪を優しく撫でる。そこから香る彼だけの匂いに、幸せを感じながら。自分だけが知っているこの匂いに。
「ヨハルヴァのせいだ」
「ハハ確かに…俺のせいだな。でもお前だって良かっただろう?」
「…バカっ…」
それ以上何も言わずに耳まで真っ赤になったスカサハに。ヨハルヴァはこれ以上に無い程幸せそうな笑顔を、浮かべて。そっと耳元に、囁いた。

「俺も…最高だった、ぜ…スカサハ……」

是が非でも お願いしたい
夢に遜色 劣らないヒトよ
欲望のレベル 振り切れ
君がカギを 握ってるから