LOVE SICK



追い掛けたら、追い付いた。本気でお前は俺から逃げようとしている訳じゃないのは分かっている。現に後姿でも、分かる。その耳が真っ赤になっている事に。
「お前なんて知らないっ!」
ぷいっと後ろを向いたまま拗ねている。どうも本気で心配してくれていた事が分かる。ちょっと…いやかなり反省だな、これは。
「…あ、わりースカサハ…俺……」
それでもやっぱり愛しいと言う思いを抑えきれなくて、背後からそっと抱きしめた。一瞬ぴくりと肩が跳ねたが、ゆっくりと身体が体重を預けてくれるのが分かってほっとした。
「お前が可愛いから、つい」
「…バカ…本気で心配したのに、さ……」
顔が見たくなって、そのままこちらへと身体を向けさせた。そうしてお前の顔を見下ろせばほんのりと目尻が赤くなっている。それがまた愛しくて俺はそっと頬に手を当てた。
「…ごめんな、スカサハ…でも俺本気だぜ。本気でお前に恋の病に…掛かってる……」
その言葉にやっと。やっとお前は微笑った。その顔が、何よりも俺の病気を増幅させているのにきっと気付かねーんだろうな。まあ、いいけどさ。可愛いから、いいけどさ。
「…うん…その…俺も、だよ……」
微笑って、頬を染めながら。お前から俺に、キスしてくれた。お前の方から…俺に……。


キスしたままその身体を抱き上げた。その途端唇が離れてびっくりしたように俺を見上げる。そんなお前の額にひとつキスをして、そのままベッドへと運んだ。そっと身体を横たえらせる。
「まだ、太陽沈んでいないよ」
そう言いながらも、お前は服を脱がす俺の手を拒まない。時々くすぐったそうにしながらも、されるがままに素肌を曝け出した。
「ってお前がそんな可愛い顔するから…俺が止められねーんだ」
拗ねるように言ったらお前はまた微笑って。そして。そしてキスしてくれたから。俺は遠慮せずにその唇を奪った。
「…んっ…んん……」
唇を開かせ、舌を忍ばせる。少しだけ怯えて縮こまる舌を絡め取って、そのまま根元から吸い上げた。ぴちゃぴちゃと濡れた音が室内に響く。
「…んんっ…ん…はふっ…ん……」
角度を代えながら何度も何度も、キス。その間にお前の着ている服を全て脱がした。そうしてからそっと。そっと肌に、触れる。
「…ん…はぁっ…ん……」
唇を離して、口許を伝う唾液を舌でなぞった。そうしながらも俺の手はお前の小さな胸の飾りに触れる。紅く色付くそれに指を這わして、転がした。
「…あぁ…ん…はぁっ……」
ぷくりと立ち上がった果実を指で摘みながら開いた方の突起を舌で舐めた。ちろちろと嬲ってやると、身体がぴくんぴくんっと跳ねる。またそれがひどく、愛しくなって。
「…あぁ…あぁん…はふっ……」
軽く歯を立ててやれば、耐えきれずにその手がシーツをぎゅっと握り締める。そこから広がる白い波が綺麗だなとふと、思った。
「―――スカサハ、こっちに手を廻せ」
「…あ、…ヨハル…ヴァ……」
握り締めていた手を外させて、そのまま自らの背中へと廻させた。ここがお前の場所とでも言うように。
「幾らでも爪、立てていいかんな」
そうして耳元でそっと囁いた言葉に、お前は小さな声で。俺だけが聴こえる小さな声で゛。
「……バカ………」
―――と、一言、言った……。


「…ああんっ!……」
脚を開かせて中心部分に舌を這わせれば、お前はひどく甘い声で鳴いた。この声が俺の欲望に火を付けて。
「…あぁんっ…あぁ…はぁ……」
微かに立ち上がったソレを口に含み、舌で先端を舐めてやった。そうする事でお前自身がどくどくと脈を打ち始め、形を変化させてゆく。舌で嬲りながら、脚の付け根を指で愛撫してやれば、耐えきれないのか俺の背にぎゅっとしがみ付いてきた。
「…あぁ…ヨハルヴァ…俺…もぉ…あっ……」
口の中に零れてくる先走りの雫を感じて、俺しそっとそこから口を離した。そしてそのまま舌をお前の最奥の蕾へ滑らせる。ぴちゃぴちゃと音をわざと立てながら舐めて、蕾を濡らした。その媚肉がひくひくと震え出すまで。
「…ふぅ…はぁっ…あぁ…ん……」
艶めく声。悲鳴にも似た甘い喘ぎ。その全てが俺にとって。俺にとっては…。
「―――いいか?スカサハ」
充分に蕾を濡らして、俺はそこから唇を離した。そしてゆっくりと起き上がりお前を見下ろす。快楽に溺れ始めたお前の、顔を。
「…うん…ヨハルヴァ…いいよ……」
うっすらと目を開けて、濡れた瞳で俺を見上げる。その瞳が、どうしようもなく綺麗で。そしてどうしようもなく愛しくて。
「…いいよ・…来て……」
背中に廻しているお前の手に力が篭り、それを合図に俺はお前の腰を掴むと一気にその身体を貫いた。


―――滅茶苦茶、惚れているんだ……
「ああああっ!!」
死ぬほど、お前に惚れている。笑ってもいいぜ。でも本気なんだ。どうしていいのか分かんねーくらい、お前の事が可愛くて。可愛くて仕方ねーんだ。
「…あああっ…あああんっ!……」
こうやって懸命に背中に立てる爪すら、その痛みですら愛しくて堪んねー。堪んねーんだ、好きになりすぎたから。
「…あぁ…あぁぁ…ヨハル…ヴァ…あぁ……」
「―――スカサハ……」
「…ああんっ…んんんんっ……」
身体を貫きながら、キスをした。舌を絡めながら。こうして上も下も繋がって。繋がっている瞬間が何よりも俺を駆り立たせる。何よりも。
「…んんんっ…んんん…んんんんっ!!!」
そうして俺は繋がりながら、お前の中に熱い欲望を吐き出した。


恋の病に薬はねーっつーけど。
あれって本当だな。だって俺。
俺の気持ち全然収まらねー。
こうして近付けば近付く程思いは強くなって。
益々惚れちまってゆく。
堪らないほど、俺は。俺はお前に惚れている。


――――世界で一番、お前に惚れてる……



「…あ、どうしよう……」
「どうした?スカサハ?」
「…俺も…掛かっちゃってる……」
「うん?」
「…いっぱい、掛かっている…」



「…恋の…病に……」