Friends



友達の境界線を越えたのは、何時だった、かな?

自分を抱きしめるその顔を見つめながら、ふとそんな事を思った。でもその思考は途中で停止される。何時ものようにそっと、キスしてきたから。
「――アーサーってホント、綺麗な顔しているよね」
唇が離れて、至近距離で見つめれば。見つめたら思わず口に出てしまった。何時も思っていた事だけれども。でもずっと言わなかった。ちょっと悔しいから…女の子の立場がないからって思っていたから。でもどうしてかな?今はすんなりと思っている事を口にした。
「フィーのが綺麗だよ」
「嘘ばっか、そんな事全然思っていないでしょう?」
「どうして?フィーは僕の可愛い人だもの」
「むぅ、ほら…『可愛い』人…でしょ?」
拗ねて上目遣いに睨んで見た。けれどもあんたは相変わらずニコニコしている。考えてみたら何時もアーサーは微笑っているような気がする。気が付けば優しい瞳であたしを見ている。
―――その瞳に見つめられていると…素直になれない気がして…素直になれるような気がする……
矛盾しているかもしれない。でも本当の事だった。あまりにも優しい瞳ばかりするから、どんな事をしても優しくしていてくれるかな?って思って冷たく当たってみたり。けれどもやっぱりその瞳が大好きだから、素直に好きって言ってみたり。私ってきっと凄く我が侭なんだと思う。でもそんなあたしをあんたは好きだって言ってくれたから。
「態度が可愛い人って事だよ…フィーは綺麗だよ。誰よりも」
「…あっ……」
抱きしめていた筈の腕があたしを抱き上げる。見掛けは華奢なのに、本当は全然そんな事はなくて。こうしてあたしの身体を軽々と抱き上げてしまう。
「僕の大事なお姫様、だからね」
そのままひとつキスをされて、あたしはそのままベッドの上に運ばれた。


友情と愛情の境界線って何だろうって考えていた。
だって『好き』って言う気持ちは全然変わらないんだもの。
大事な人で、大切な人で、何時も一緒にいたい人。
好きだって気持ちを告げあって、変わって事と言えば。
こうして、抱き合って、そしてえっちな事をするくらい。
それ以外にあたしたちは何も変わってはいない。

…ってそれが一番大きく変わった事なのかなぁ?……


「あんっ!」
服を脱がし合うのは何時もの事。だって自分だけが脱がされるのは悔しいから。そんな事を言ったら『フィーらしい、ね』って笑われたけど。でもやっぱりあたし、あんたとは何時も同じ場所にいたいんだ。ずっと、一緒の場所に。
「…あぁっ…アーサー……」
胸を揉まれ、あたしは甘い声を上げる。初めてこんな声を出した時に自分じゃないみたいで凄くびっくりした。でも今は。今は堪えないで上げている。だってあんたとあたしの間には隠すものなんて何もないんだから。だからこうやって求めるままに。
「…ああっん…はぁ……」
ぷくりと立ちあがった乳首を吸われながら、空いている方の胸を指でぎゅっと揉まれる。少し強いくらいのその刺激があたしには堪らなくよかった。つい声も大きくなってしまう。
「…ああ…アーサー…もっと……」
「もっとどうして欲しいの?」
顔を上げて律儀に尋ねてくる所があんたらしくて、好き。でも胸はその唇を、舌を望んでいる、欲しがっている。
「…もっと…吸って…お願い…」
「くす、フィーのココはやらしいんだね」
「…もぉ…アーサーのバカっ…」
「ごめんね、つい可愛くて」
「…ああんっ……」
ぺろぺろと舌で舐められて、そのまま先端でつつかれた。柔らかく歯で噛まれると、耐えきれずに乳首が真っ赤に染まる。でもそれが凄くよかった。
「…あぁ…ん…アーサー…イイ…凄く…イイ……」
「気持ちイイ?」
口に含まれながら言葉を紡がれて、あたしはこくこくと頷いた。どうせ気持ちイイ事するならば素直にならないと損だってそう思っているから。
「…ぁぁ…あん…もっとぉ…もっと…」
「もっと?でも他の所は欲しくないの?」
「―――ああんっ!!」
突然指が脚を割って、一番奥へと忍び込んでくる。そこは胸への愛撫のせいで、じわりと濡れ始めていた。
「…あぁっ…ああん…アーサーっ……」
「胸よりもコッチのが本当はいいんだよね、フィーは」
「…やあんっ…そんな事…言わないで…はぁぁん…」
くいっと中で指が折り曲げられる。そのままくちゅくちゅと掻き乱されれば、ふわりと宙に浮くような感覚が押し寄せてくる。ぼんやりとした感覚と、ひどく気持ちイイ感覚が。
「でもココは正直だよ」
「…もぉ…言わないでよぉ…あぁ……」
「どうして?もうぐしょぐしょなのに」
「…くぅっん…あぁんっ…バカ…恥ずかしいでしょ?…あぁ…ん……」
「フィーには似合わないよ」
「もうムカツクっ…あっ!!」
反抗しようとしたら指が引き抜かれた。そして間髪入れずに脚を限界まで広げられて、そのまま秘所を舌で舐められる。ひくひくと震えていた花びらは、そのもどかしいほどの刺激にたっぷりと蜜を滴らせていた。
「…あぁん…ふぅっ…はぁぁ……」
ぴちゃぴちゃとした音とざらついた舌の感触が堪らなく…堪らなく良くて…頭の芯がぼーっとして何だかよく分からなくなってくる。
「…ひゃんっ…ああんっ……」
快感のせいで剥き出しになったクリトリスに軽く歯が立てられる。もうそうなるとあたしはどうにも出来なかった。ただ与えられる刺激を追うのみで。何時しか腰を押し付けて、もっともっとと求めていた。
「…あぁ…アーサー…もぉ…ダメ…へんに…なっちゃ…あぁ……」
「もっと乱れていいよ。フィーの乱れた姿見たい」
「…やぁぁんっ…あぁ…だめぇ…もぉ…あぁ…あつくて…あたし…あたし……」
「くす、イッちゃう?」
「…あぁ…もお…もぉ…イッちゃ…あああっ!!」
かりりとソコに歯を立てられて、あたしは大量に愛液を分泌させた。


えっちするのは好き。だって気持ちイイから。
でもあんたと以外だったらしたくない。
他の誰でもダメだから。
だってあんたとだからこんなにも気持ちイイんだもの。

やっぱりそれって『好き』だから、だよね。


「あああああっ!!!」
ぐいっと腰を引かれて、熱い塊が侵入してくる。そのままズブズブと濡れた音を立てながらあたしの中へと入ってくる。
「…あああっ…あぁ…あああっ!」
根元まで楔が埋められると一端動きが止まる。そしてそのままあんたはあたしを見下ろした。その瞳はやっぱり何時もの優しい瞳。
「――フィー、綺麗だよ」
快楽のせいで瞳が潤んで、視界がぼやけているけれど。でもあんたのその笑顔だけはあたしにはちゃーんと分かるから。
「…当たり…前…でしょ?…あんたの…恋人…なんだから…」
「そうだね、フィー。大好きだよ」
手が伸びてきて、見掛けよりずっと大きな手が伸びてきて。あたしの頬に触れて。触れてそして、キスしてくれた。甘い、甘い、キスを。
「…んっ…んんんっ…んん…」
あたしは忍び込んでくる舌を一生懸命に絡めた。それと同時にあたしの中のあんたが動き出す。最初はゆっくりと、次第に激しく。
「…んんんっ…ふぅ…んんんん……」
懸命に舌を吸いゲ上げていたけど、中への突き上げが激しくて次第に動きが散漫になっていった。何時しか唇が解かれて、あたしはあんたの動きを追うのに夢中になっていく。
「…あああ…はぁぁんっ…あぁ……」
ぐいっと媚肉を抉られて、粘膜まで破かれそうで。子宮まで突き上げられて、あたしはもう何が何だか分からなくなって。
「――――あああああっ!!!!」
最期に感じたのは、あたしの中に熱いモノが注がれたと言う事だけ、だった。


友達の、境界線。友達と恋人の境界線。
でも本当はそんなもの。
そんなものあたしとあんたの間には。
間には初めから、なかったのかもしれない。

だっていらないもの。
そんなもの必要ないもの。

あたしとあんたの関係は、そんなモノじゃ。
そんなモノじゃ決められなくて。
そしてそんなモノなんて関係ない所で。
関係ない所で、繋がっているんだもの。

親友で、恋人。
恋人で、親友。

どっちだっていいじゃない。
どっちだけって構わない。
だって大切と言う気持ちに。
好きだと言う気持ちに。

―――嘘は何一つ、ないんだもの……



「アーサー」
「うん?」
「あたしたちずっと」
「うん、フィー」

「ずっと、一緒にいようね」



ふたりで同時に言った言葉に。
見つめ合って、笑った。大きな声で、笑った。
あたしたちは何時もこんな感じで。そして。
そしてこれからもずっとこんな感じで。
よぼよぼのおじいちゃんとおばあちゃんになっても。
ずっとずっと、親友で恋人で、恋人で親友でいようね。



―――友達の境界線なんて、あたしたちには何処にもないんだから。