何時までも、子供だなんて思わないでね。
女の子はもっとずっと早く。
ずっと早く大人になってゆくのだから。
―――まるで風が駆け巡るように…お前は私に色々な顔を見せるから……
「シャナン様っ!」
たたたっと小走りに駆けながら、ラクチェはシャナンに近付いた。大きな瞳がシャナンを見上げてくる。こんな時の彼女の瞳はひどく真っ直ぐで、そこには何の曇りもなくて。そして。そしてきらきらと、輝いていた。
「どうした?ラクチェ?」
「あの、あの…剣の稽古して欲しくて…何か前よりも流星剣が上手くなった…ような気がして…その…」
普段は気の強い彼女も、シャナンの前では何処かおろおろとしてしまう。けれどもそんなラクチェの分かりやすさが…今のシャナンには愛しかった。愛しくてそして、眩しい存在。
「うむ、来いラクチェ」
「はいっ!!」
ぴょんっと大きく飛び上がって喜ぶ彼女はひどく子供のようで…。シャナンは苦笑を禁じえなかった。
季節が巡るように、少しずつ。
少しずつ代わってゆくもの。
少しずつ、変化してゆくもの。
それは目には見えなくても。確かに。
―――確かにそこに、存在するもの……
「ねぇ、レスター」
森の奥深く、ぶつかり合う剣の音。それを横目で見ながら、パティは大好きな彼の背中にぎゅっとしがみ付く。
「何だ?パティ?」
「あそこ、シャナン様とラクチェが剣の稽古してる」
「あ、本当だ。ってそれを見つつお前は何やってんだよ」
「何ってレスターが押し倒したんでしょっ?!」
むっとして怒るパティにレスターはちょっとだけすまなそうな顔をした。確かに押し倒したのは自分だし…更にパティの服を脱がしたのも自分だし…。
「って俺だったな」
「笑って誤魔化さないのっ!バカ」
「ごめん、パティ。これで許せ」
「あんっ!」
レスターの大きな手がパティの胸に触れる。それを優しく包んでやれば、快楽に慣れた身体はいやがおうでも反応してしまう。
「…もぉ…レスターのバカ…デリカシーないんだからっ!」
「でも好き、だろ?」
そう言って笑ってレスターはパティにひとつキスをした。そのキスがあまりにも優しかったから、パティは許してあげようって…思った。
風に靡く髪が、綺麗だった。さらさらの髪に、汗の雫が飛び散って。漆黒の髪をより艶やかに見せた。
「…はぁはぁはぁ…まだですっシャナン様っ!!」
「の割に息が上がっているぞラクチェ」
肩で大きく息をしながらも、きつく睨み付けてくる瞳。お前は『戦い』の上では全ての感情を――負けたくない…ただそれだけに向けられている。
だからこそ、お前は誰よりも綺麗で強い。一瞬その姿に見惚れてしまうほどに。
「まだですっ!!」
カシャンと剣のぶつかり合う音。私を射抜く瞳。そして、しなやかな肢体。まるで猫化の野獣のように。けれどもその身体はあくまでも女の身体で。
抱きしめたらすっぽりと包まれる華奢な肢体。動く度に揺れる二つの胸。そして艶やかに紅い唇。その全てが、私には。
―――私には…愛しくてそして…そして…どうしようもない程に欲しい存在……
「…あぁっ…レスター…ねぇ…」
「何だよ?」
「…あのふたりって…してる、のかな?」
「―――お前なぁ…そんな事よりこっちに集中しろよ」
「だって気になるんだものぉ」
「…確かに…ちょっと気になるかもな…ラクチェ最近こう身体のラインがセクシーだし」
「…むぅっ…どーせアタシは胸も小さいし色気ないですよーだっ」
「バーカ、お前ほどのイイ女は何処にもいねーよ」
「…レスター?……」
「俺が惚れた女だぜ」
「……レスター………」
「ん?」
「だーいすきっ!!!」
どさりっと音がして、ラクチェの肢体がシャナンの上に覆い被さる。その瞬間、シャナンの耳にはあっけらかんとしたパティの『だーいすきっ!!』声が耳に入ってきた…。
―――………
「…あぁっん…レスター…ソコ…もっとぉ……」
絡み合う裸の身体。剥き出しの胸にレスターの指が触れる。もう一方の指は自然とパティの下半身に伸びていた。
「パティはホントに好きだなぁ」
指を掻き乱すたびに、ぴくんぴくんとパティの身体が揺れる。まるで鮮魚のように。
「…だってぇ…レスターとするのが…好きなんだものぉ……」
それと同じように自分の身体に密着している二つの胸が揺れる。どくん、どくんと。
「俺も、パティとするのが大好きだぜ」
シャナンの上に押し潰された、豊満な胸が……
「どうしたんですか?シャナン様」
けれどもラクチェは自らの荒い息と、戦いとシャナンに夢中になってそんな二人の姿など見えてはいなかった。ただ。ただ真っ直ぐにシャナンだけを見つめていて。
「…ラクチェ…私は……」
「…あっ……」
シャナンはそのままラクチェの肢体を抱きしめた。腕の中にすっぽりと収まるその身体を。どんなに戦場を駆けぬける戦いの女神でも、こうして腕の中に閉じ込めればただの…ただの愛しい少女、だった。
「…好きだ…ラクチェ……」
そのままシャナンはラクチェの唇を塞ぐ。こうした行為は初めてではなかった。唇を合わせるのは、何度かしている。ただ。ただその先は…。
「…んっ…んん……」
シャナンの舌がラクチェの口中に忍び込んでくる。初めての深いキスにラクチェは戸惑った。戸惑ってどうすればいいのか分からなくて、そのままシャナンのなすがままにされる。
「…ふぅっ…んん……」
舌が絡められ、そのままきつく吸われる。その今までにない感覚にラクチェの頭の芯がぼんやりと霞んでくる。ふわりと靄が、掛かったように。
「…んんん…ん…はぁっ……」
何度も舌で中を弄ばれてやっと唇が開放される。その頃にはラクチェの目はうっすらと潤んでいた。
「…シャナン…様?……」
「―――お前が…欲しい……」
ぼんやりとした頭の中に刻まれるシャナンの言葉を理解するのに、ラクチェはしばらくの間時間を要した。そしてその意味が分かった瞬間に、頬がかぁぁっと真っ赤になる。
「駄目か?」
髪を優しく撫でる指。そっと抱きとめる腕。そして優しい口付け。その全てが。その全てが、ラクチェは好きだから。
―――こくりと…小さく頷いた……
「…あっ…」
服を脱がされて、胸に指が触れる。最初は優しく、次第に強く揉まれるその指先にラクチェの口からは小さな声が漏れる。それでも必死に声を押さえようとしているのは、羞恥心の為なのだろう。
「…あぁ…あぁ……」
シャナンの大きな手でもラクチェの胸は収まりきらなかった。柔らかい肉の部分が指の間から、はみ出て来る。けれども乳首は小ぶりで、綺麗なピンク色をしていた。それが無意識にシャナンの口許に笑みを浮かばせる。
「…ああんっ!……」
胸の突起をシャナンは口に含んだ。そしてそれを舌でころころと転がす。敏感なそこはたちまちにぴんっと痛い程に張り詰めた。そのまま舌先で突ついて、軽く歯を立てる。その途端ラクチェの身体はまるで電流が走ったかのようにピクンっと大きく跳ねた。
「…ああっ…シャナン…様…私…私…あぁ……」
背中に腕を廻して、そして必死にラクチェは耐えようとしていた。けれどもシャナンからもたらされる未知の快楽が、ラクチェを知らない場所へと連れて行こうとしていた。知らない、場所へと。
「――ラクチェ…可愛いよ…私の…ラクチェ…」
「…ああんっ…あああんっ……」
身体が揺れる度に胸も揺れて。そして、心も揺れる。
「…んんっ…レスター……」
レスターのモノを口に含みながら、パティは横目で二人を見た。何時の間にか向こうもお楽しみになっていた事に気付いて、つい視線を巡らせてしまう。
「…って止めるなよ、口を……」
「…だってぇ…向こうも…ほら…」
「あ、やってる。つーかラクチェ胸デカイなぁ。シャナン様は巨乳好きなんかな?」
「…もぉ…何バカ言ってんのよ……」
ちょっとむかついてパティは軽くレスターの先端を噛んだ。けれども可愛いパティの歯ではレスターに、より気持ちイイ刺激を与えるだけでしかなかったが。
「つーかこっちも楽しもうぜ、あっちには負けないくらい」
「うんっ!」
レスターの言葉に嬉しそうに笑って、パティはもう一度レスターの分身に奉仕を始めた。
「―――ああっ!!」
脚を広げられ、ラクチェの茂みを掻き分け、シャナンの指が中へと入ってくる。初めて触れられた刺激に、ラクチェの肢体は小刻みに震えるのを押さえられなかった。
「…くぅっん…はぁっ……」
指とは言え入って来る異物が、ラクチェの蕾を悩ませる。それでも根気よくシャナンは硬く閉じられた蕾を解していった。それが功をそうしてか、くちゅくちゅと濡れた音がソコから零れて来る。
「…はぁぁっ…あぁ……」
じわりと指先に濡れた感触を感じて、シャナンは指の本数を増やした。そして丁寧に中を抉りながら、ラクチェの一番感じる個所を探り出す。そしてそれをやっと、見つけ出して。
「…あああんっ!!……」
甘い声が、ラクチェの口から零れて来る。その声に的を得たシャナンは、何度も何度も執拗にソコを攻め立てた。剥き出しになったクリトリスが痛い程に膨れ上がる。それが何よりもの証拠だった。
「…ぁぁ…ああ…ん…シャナン…様ぁ…あぁ……」
「――ラクチェ…いいか?…」
充分に濡れたのを確認して、シャナンは指を引き抜いた。そしてさっと耳元に囁いた。全ての愛しさを、込めて。
「…は…い……」
そんなシャナンにラクチェは小さく笑って…こくりと頷いた。
連れて行って、ね。
頑張って追い付くから。
私、追い付くから。だから。
だから一緒に。
―――私を、連れて行ってね……
「――――ああああっ!!!!」
ピキィ…と何かが引き裂かれる音とともに、ラクチェの中熱い塊が入ってくる。身体を真っ二つに引き裂かれる痛みと、同時に。
「…ラクチェ…大丈夫か?……」
苦痛に歪むラクチェの額にそっと。そっとシャナンは口付ける。そこから染み出る優しさが…ラクチェの痛みを少しづつ和らげてゆく。
「…あぁ…シャナン…様…私…平気…です……」
「…ラクチェ……」
「…シャナン様…だから…私……」
「―――ラクチェ…愛している……」
「あああああっ!!」
ぐいっと腰を引かれ、シャナンの熱い塊が奥へ奥へと入ってくる。きつく締め付ける媚肉を掻き分けながら、深く入ってくる。
「…あああっ…あぁぁ…あああんっ……」
身体を揺さぶる度に揺れる胸が愛しくて、シャナンは手を伸ばしてそれを掴んだ。指に余る柔らかい乳房。そしてきつく締め付ける熱いラクチェの中。
「…あああんっ…あんっ…ぁぁ……」
―――全てが、シャナンの理性を奪ってゆく……
ズズズと音を立てながら、パティはレスター自身を飲み込んだ。自ら上に跨って、腰を落としてゆく。
「…ああんっ…レスター…あんっあんっ!」
下から突き上げる絶対の重量感にパティは我を忘れて喘いだ。何時も、こうだった。パティはレスターとのセックスで何時も…何時も自分を忘れるほどに気持ち良くなってしまう。
「…レスターが…いっぱい…いっぱいだよぉ…ああんっ……」
「もっとやるよ、ほら」
「あん、あん、ああんっ!!」
がくがくと腰を突き上げられて、その動きにパティも自ら積極的に腰を振った。心の相性も最高で、そして身体の相性も最高の相手。もう二度と誰もこんな相手には互いには巡り合えないだろう。だからこそ。だからこそ、二人は恥らうこともせずに全身で求め合う。
―――そんな自らを覆うことなど、このふたりには必要のない事だから。
「…ああんっ…あああんっ…レスター…レスタぁ…ああ……」
自らを飾ることも、偽ることも、必要のないふたりだから。
「ああああああ――――っ!!!!」
二人の声が重なるように響いて、そして。
そして中に熱い欲望が、注がれた…。
「お前何時もより、燃えてたな」
「…だって…やっぱちょっと対抗心が、ね」
「実は俺も、ちょっとな…だってよ…」
「シャナン様…巨きかったから?」
「――お前はっきり言うなぁ…」
「まあまあ、いいじゃん。アタシはこっちのが…好きだもん」
猫のように笑って、そしてパティはレスターのソレを口に含んだ。そんなパティの髪をそっとレスターは撫でた……。
髪を優しく撫でる指と、包み込む腕の暖かさにラクチェは意識が覚醒した。覚醒して、そしてさっきまでの事を思い出して、頬がかぁぁっと赤くなる。
「大丈夫か?ラクチェ」
「…は、はい…シャナン様……」
さっきまでこの腕が肌を駆け巡って、そして熱いモノが…熱いモノが自分の中を貫いて…。
「よかった」
その言葉に小さく頷いて、ラクチェはシャナンの裸の胸に顔を埋める。そこから聴こえるのは心臓の音。とくん、とくんと、聴こえる心臓の音。そっと瞼を閉じてその音を感じた。暖かい命の、音を。
―――連れて行って…くれた……
ふとそんな事を思ったら涙が零れそうになった。バカみたいだけど夢を見ていたから。自分を大人にしてくれるのはシャナン様であったらと。ずっと、ずっと願っていたから。他の誰でもない、貴方に連れて行って欲しかったから。
またシャナンの耳に悩ましげな声が聞えて来る。少々呆れながら視線を移せば、ばっちりと二人と目が合ってしまった。そんなシャナンに事もあろうか二人は、にっこり笑って目配せをして来る。そんな二人にシャナンは小さく、呟いた……。
「…感謝、なのかな?……」
ふと呟いたシャナンの言葉にラクチェは疑問符を浮かべたが、それ以上は聴かなかった。優しく抱きしめる腕に。そっと髪を撫でる指先に今は全てを委ねたかったから。
連れて行ってね。
ずっと、ずっと、一緒に。
一緒に連れて、行ってね。
その後何故かパティとレスターに突っ込まれていると言う珍しい現象が、暫くセリス軍の中で繰り広げられたことは言うまでも…なかった。