WHITE SONG



雪が、降る。
ふわりと、白い雪が。
二人の間に降り積もる。

―――でも寒くないよね、一緒にいるから。


手を繋いで、そこから広がるぬくもりにそっと目を閉じた。そうして胸にそっと顔を埋める。とくんとくんと聴こえる命の音。あたたかい、音。
「…神父様……」
少しだけ舌ったらずでいて、そして甘えるような声にクロードはひとつ微笑った。その愛しい翠色の髪を撫でながら。
「寒いのですか、シルヴィア?」
外から聴こえてくるのはしんしんとした雪の音。言葉を紡ぐだけで零れるのは白い吐息。シレジアの雪が、全てをそっと隠してゆく。
「寒い神父様、あたしを暖めて」
華奢な身体がぎゅっとクロードに抱き付いてきた。その身体が少しだけ震えているのは、寒さだけじゃないのだろう。こんな風に彼女から言って来る事は初めてだったのだから。
「―――ええ、貴女がそう望むのならば」
そんな彼女にひどく優しい笑顔を向けて、そして。そしてそっと震える瞼にキスをした。


必要のないものだと思っていた。
こうした行為は自分には必要のないものだと思っていた。
神に仕える身として、他人と肌を重ねる事は。
自分にとっては縁のない事だと思っていた。けれども。
けれども私は貴女に出逢って初めて知りました。
こうした行為は必要だと言う事に。大切だと言う事に。
愛を説く人間ならば、本当の愛を知らなければ。
知らなければ、その言葉は決して他人に響く事はないのだから。

―――貴女に出逢って初めて知りました…人を愛するという事を……


互いの服を脱がし合いながら、くすくすと二人で笑った。
まるで子供のように笑った。見つめあいながら、ふたりで。
―――ふたりで、微笑いあった。

「神父様、この服見て下着だって言ったんだよね」
「…私はその…そう言った事に疎いので…」
「でもそう思わなかったらあたし。あたし神父様と話す事すら出来なかったかもしれないもの」
「シルヴィア?」
「だって神父様とあたしじゃ全然身分も境遇も違うから」
「そんな事関係ありません。命に価値の違いなんて何もありません」
「…うん、神父様…あたし……」

「…あたし…神父様のそんな所が…大好き……」


あたしは踊る事以外何もないけど。
何にもないけど、でも。
でも神父様はそんなあたしを必要だって言ってくれたから。
綺麗なこころを持っているって言ってくれたから。
神父様だけがあたしの踊り以外のものを見つけてくれたから。

―――大好き…神父様……


「…あんっ…はぁっん……」
薄く色付いた胸の突起を口に含まれ、シルヴィアは耐えきれずに甘い息を零す。華奢な身体に小さな胸は踊り子としては少し不充分だったかもしれないが、クロードには何よりも愛しい少女の胸だった。
「…ぁぁ…はふ…神父様…ぁ……」
シルヴィアの手がクロードの金糸の髪に絡まる。指先から擦り抜けそうなほど細いその髪をきつく、掴んだ。
胸を舌で弄りながら、もう一方を指で転がす。そのたびに腕の中の身体が鮮魚のように跳ねた。まるで水面から跳ね上がるように。
「…あぁんっ…は…ぁ…あぁぁ……」
どくんどくんと少女の鼓動がクロードにも届くようで。微かに上気する頬と熱に浮かされたような瞳が、ひどく。ひどく彼女を綺麗に見せた。
普段はくるくるとよく笑う少女なのに、今はぞくっとするほど綺麗な女の顔をしている。
「…神父…さまぁ…あぁ…ん……」
伸びてくる舌を絡めて、強く吸い上げた。ぴちゃぴちゃと音を立てながら獣のように舌を絡め合う。本能のままに生きる動物のように。けれども。けれどもそれが、本当の人の姿。嘘偽りない、人間の姿だから。
「…ふぅん…んん…んんん……」
―――そんな自分も、貴女も私は大好きですよ……


「…神父様……」
潤んだ瞳がクロードを見上げ、そしてゆっくりと起き上がった。そして前に屈み込むと、微妙に形を変化させたクロード自身に手を添える。
「シルヴィア?」
「…神父様…のココ…あたしの…大事なもの……」
そのままそっと包み込むと、ぎこちない手で愛撫を始めた。こんな行為に及ぶのは彼女は初めてだった。クロードは決してこう言った事をシルヴィアに、強要する事はなかったのだから。
「…んっ……」
小さな口が充分な硬度を持ち始めたクロードのソレを包み込む。生暖かい感触がクロードに伝わり、口中のモノをより大きくさせた。
「…んんんっ…ふぅ……」
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、ソレを舌で舐める。先端の割れ目の部分をつつき、側面を撫で上げる。それはどれも上手いとは言えないものだった。けれどもシルヴイアがソレをしているのかと思うとそれだけで。それだけでクロードの分身は拡張していった。
「…神父様…あんっ……」
充分な硬度を持ったのを確認して、シルヴィアはソコから口を離した。そして触れていた手を自らの秘所へと運ぶ。そこはもうすでにぐっしょりと濡れていた。
「…くふぅっ…あふぅ……」
自らの指で一番感じる場所を探り当て、普段クロードがしてくれるようにソコを掻き乱した。爪で強く引っかけば耐えきれずに身体が跳ねた。
「…ああんっ…はぁっんっ……」
どくんどくんと、ソコが熱いのが分かる。子宮がじゅっと感じているのも。シルヴィアは指を引き抜くと再びクロードのソレに手を充てて、彼の膝の上に跨った。
「シルヴィア、その姿勢では―――」
「はああああああっ!!!」
クロードの、静止の声の前にシルヴィアは自ら腰を落とした。ずぷりと先端がシルヴィアの蕾に突き刺さる。
「…はぁぁぁんっ…あぁ……」
充分に濡れているとはいえ無理な体制での受け入れにシルヴィアの顔が苦痛に歪む。それを見かねてクロードは細い腰を抱きかかえると、そのまま胸の飾りに口付けた。
「…ああんっ…あぁぁぁ…しん…ぷ…さまぁ…っ……」
胸を嬲られてびくびくと身体が跳ねる。そしてそのままの勢いでシルヴィアは腰を落としていった。ずずずっと蕾に楔が呑みこまれてゆく。接合部分は濡れた音を立てながら。
「大丈夫ですか?シルヴィア」
「…へぇき…あたしは…へぇきだよぉ…あぁ……」
目尻からぽろぽろと涙を零しながらも、シルヴィアは首を横に振った。そしてクロードの肩に手を掛けると、そのまま腰を揺さぶり始めた。
「…あああっ…あん…はぁぁぁっ!!」
ずぶずぶと音を立てながら抜き差しする楔。淫らな媚肉はそのたびにきつく締め付け、絡み付いてくる。それは堪らない快楽だった。
「…あああんっ…はぁん…あぁ…ああ…しんぷ…さまぁ……」
「シルヴィア、シルヴィア」
「…あああああっ…だめぇ…もぉ…もぉあたし…あああああ……」
「……私も…もう……」
「――――あああああっ!!!!」
シルヴィアの背中が綺麗なアーチを描き、ふたりの意識はその瞬間真っ白になった。


聴こえるのは、胸の鼓動と。そして雪の降る音。
それだけが世界の全てになった瞬間。

―――しあわせだな、と思った………


「…神父様…」
「何ですか?シルヴィア」
「…手…」
「はい?」

「…手、繋いでいて……」


冷たい雪。凍える雪。
けれどもこうやって。こう、やって。
手を繋いでいれば寒くない。
肌を重ねていれば寒くない。
ふたりでいれば、寒くはない。


「はい、シルヴィア…幾らでも…この手は貴女だけのものです……」



――――ふたりでいれば…あたたかい………