CUTY



―――言葉より確かなものが、欲しかったから……

身近で見るその顔は、ヘタな女の子よりずっと綺麗だなぁって思った。こんな時にあたしは何を考えているんだろうと思いながら。
「…ティルテュ…その僕……」
「な、何よ…なんであんたの方が緊張しているのよっ!あたしの方が普通緊張するものでしょっ?!」
心臓がどきどきしているのが分かる。もう本当は無茶苦茶に恥ずかしくて、この場所から逃げ出したいくらいなのに。なのにあんたまで緊張しちゃったら…どうしようもないじゃない。
「ごめんティルテュ…僕…こう言う事は初めてで…」
「バカっあたしだって初めてよっ!!酷いアゼルはあたしをそんな女だと思っていたの?」
「違うよ、ティルテュ…その…こんな時どうしていいか分からなくて」
「…バカ…あたしだって…分からないよ…」
耳まで真っ赤になりながら上目遣いにあんたを見たら…少しだけ困った顔をして。そしてひとつ、微笑って。
「そうだね、分からないなら…分かるようになれば…いいんだよね」
そしてゆっくりと、唇を重ねてきた。


好きという言葉よりも確かなもの。
言葉よりももっと伝わるもの。
それが欲しかったから。あんたから欲しかったから。
他の誰よりもあんたから欲しかったから。


「…んっ…」
初めのキスは、何時ものキスだった。何時もしている甘い甘い、キス。それから唇を舌で突つかれて薄く開けば、あんたの舌がそっと忍び込んでくる。
「…んん…ふっ……」
ぎこちなく舌を絡めながら、互いの舌裏を舐め合った。そのたびに頭がぼーっとしてきて、変な気持ちになる。ベッドの上にいるはずなのに、何だか空を飛んでいるような感じで。ふわりと空を、飛んでいるようで。
「…ふぅっ…んん……」
次第に絡め合う舌の動きが激しくなる。あたしは何も考えずにただ。ただあんたのソレに絡み付いた。ぴちゃぴちゃと音が耳に聴こえてくる。それが背筋をぞくりとさせた。
「…ティルテュ……」
唇が離れて、あたしの顔を見るあんたの目。それは確かに『男』の目で。初めて見るあんたの顔にどきりとしながらも…凄くカッコイイと思った。
「…好きだよ…」
「…うん…アゼル…あたしも好き……」
アゼルの手が伸びてきてあたしの服を脱がし始める。おかしいよね、子供の頃は裸になってお風呂とかに一緒に入っていたのに。なのに今は上半身を見られるだけでどきどきするのは。ドキドキ、している。自分でも分かるくらいに心臓が高鳴っている。
「…あっ……」
あんたの手があたしの胸に触れる。ちょっと胸が小さいから…恥ずかしい。アイラとか、エーディン様とか、一緒にお風呂は入るたびに羨ましいなぁと思っていたから。
―――アゼルは胸の小さい子…イヤかなぁ?
「…あぁ…あんっ……」
指が胸の突起に触れてそれを転がす。その間にも空いている方の手は胸をきゅっと揉んだ。そのたびにびくびくと身体が震えるのを押さえきれない。
「…あぁ…ん…アゼ…ル……」
「ティルテュ…可愛いよ」
「…ホント?…あたし…胸…小さい…し……」
「可愛いよ、ティルテュ」
「ああんっ」
胸を弄られる指の動きよりも『可愛い』って言われた方が、身体が火照るのが分かった。そのまま尖った乳首をあんたは口に含むと、そのまま舌でつつく。ぺろぺろと舐めながら、軽く歯を立てた。
「…ああん…はぁぁ…あぁ……」
唇は胸に吸い付いたまま、手が下へ下へと降りてゆく。わき腹を辿り腰に掛かっていた衣服をそのまま下着ごと降ろされる。これで自分を身につけているものは全てなくなってしまった。
「…あぁ…アゼル…ずるい…」
「ティルテュ?」
「…あたしだけ…裸…ずるいよぉ……」
「ごめんね」
ちょっと困った顔をして、でもあんたは微笑った。その顔を見たら全部。全部許してあげようと思った。


胸の、どきどき。
全部聴かれたら、恥ずかしいけど。
でもホントは聴いて欲しいの。
こんなにどきどきするくらい。
どきどきするくらいあんたが、大好きだって。

―――あんたの事、こんなに好きなんだよ。


「ひゃあんっ!」
膝を立てて恥ずかしい部分をあんたの前に曝け出す。その途端ざらついた舌が中へと侵入して来た。
「あぁっ…やぁ…そんなトコ…舐めないでぇ…あぁ……」
入り口のひだの部分を丁寧に舐められ、ゆっくりと舌は中へと入ってくる。内壁を掻き分け、一番奥の感じる部分に触れた。
「―――ああんっ!!」
身体に電流が走ったような感覚に、耐えれずにシーツに手を掴んだ。びくんびくんと震えるのが止まらない。まるで全神経がソコに集中したように、かぁぁと熱くなるのが分かる。
「…あぁ…ヤダ…熱い…熱いよぉ…ああん……」
どくんどくんと音がするのが分かる。じゅっとなってソコから汁が零れ始めているのも。
「ティルテュ」
「やんっ!」
舌が離れてほっとする間もなく今度は指が中に入れられる。くちゅくちゅと音を立てながら中を掻き乱される。指が中を廻っている間に的を得たように、一番感じる部分に触れる。それがどうしようもなくあたしの意識を乱した。
「…やぁぁんっ…あんっ…ああんっ……」
髪を乱しながらぎゅっとシーツを掴んで必死に耐えた。けれどももう。もう、限界だった。
「――ティルテュ…いい?」
「…あぁ…アゼ…ル……」
指が離れて、何時しかあんたの顔があたしを見下ろしていた。何時ものあんたとは違うぐっと男を感じさせる顔。それにあたしはどきどきして。そして。
「…うん…いいよ…アゼル…来て……」
シーツに廻していた腕をその見掛けよりもずっと逞しい背中へと廻した。


あんたから、欲しいの。
他の誰でもなく、あんただけ。
あんただけから、欲しいの。
他の誰でもなく、あんたからいっぱい。
いっぱい『好き』が欲しいの。


「―――ああああっ!!!」
先端部分が、あたしの中へと入ってくる。まだ先っぽだげたったけど、指とは比べ物にならないその大きさにあたしは眉をしかめるしかなかった。
「…ティルテュ…少し…我慢して……」
「…う…ん…平気…へい…き…あああっ!」
ずずずと、少しづつあたしの中にアゼルが入ってくる。大きくて熱くて硬いモノが。どくんどくんと脈打つそれが。それが中へと入ってくる。
「…あああああっ…ああんっ……」
何時しかすっぽりと全部納められると一端あんたは動きを止めて、あたしを見下ろした。あんたの紅い髪からぽたりと汗が零れる。
「…ティルテュ…好きだよ……」
「…う…ん…うん…アゼル…あたしも…あたしも……」
ぽたりと落ちた汗が、あたしの瞳から零れた雫に重なって。重なってそして。そして頬からシーツへと落ちていった。
「僕だけの、お嫁さんだよね」
「…アゼルったら……」
あんたの手がそっと伸びてあたしの涙を拭ってくれた。優しい、手。あんたは何時も何時も優しい。だからね。だから、大好きなの。誰よりも優しいあんたが、大好きなの。
「…うん…アゼルの…お嫁さんに…してね……」
自分からキスを、した。動いたせいで中にいるアゼルが当たって苦しかったけど。でも今はキスを、したかったから。
「…んっ…んんん…んんんん……」
そしてキスをしながら。キスをしながら、ゆっくりとアゼルはあたしの中で動いた…。

「――――っ!!!!」

どくんどくんと、中に熱いモノが注ぎ込まれる。
それを感じなながら、あたしは意識を失った。


子供の頃の、内緒の夢。
あんたのお嫁さんになること。
ホントに小さな夢だったの。
でもね。でも、今。
両手で抱えきれないほどの想いで。
想いで、それはあたしの中に返って来た。

―――何よりも大切な想いとなって………


目を開けた瞬間に感じたのは、何よりも優しいあんたの笑顔と。そして髪を撫でてくれる指先の感触だった。
「…アゼル……」
「大丈夫?ティルテュ?」
心配そうに見つめるあんたにあたしは微笑った。とびきりの笑顔で、そして。

「…大丈夫じゃない…責任とって…お嫁さんにしてよね……」

あたしの言葉にあんたは微笑って。
何よりも嬉しそうに微笑って。


「―――うん」



何よりも甘いキスを、くれた。