そこに刻まれた誓約の証が、僕の身体を絡め取ってゆく。見えない鎖に繋がれて、もう何処にも。何処にも逃げられない。もう、何処にも……
僕の手首には見えない手錠がかけられている。それは決して外す事の出来ない、強固な呪いだった。
「…ああっ…ああ……」
何時ものように後ろから抱きしめられ、膝に座らせられた。こうやって自ら体重を掛けさせられ、グロテスクな性器を飲み込まされる事で、誰が支配しているか嫌というほどに思い知らされる。
「ほら、もっと腰を使うんですよ、ペレアス殿」
「ああ――っ!!」
腰を突き上げられ最奥まで抉られる。ペレアスの媚肉は幾度も抉られているのに、初めてのように狭かった。その絡みつく熱さに、堪え切れずにルカンははぁはぁと荒い息を漏らす。
「ほら、もっと動くんですよ、私を楽しませなさい」
「あああっ…ああんっ……」
敏感な乳首に指を添えながら、ルカンはわざと腰の動きを止めてペレアスを煽った。軽い愛撫を与え、もどかしいほどの軽い刺激を与えて。その刺激に諦めたようにペレアスは腰を動かし始めた。がくがくと上下に揺さぶり、自らその楔を飲み込んだ。
「イイですよ…ペレアス殿…たまらない…もっと動くんですよ…」
「ああっ!はああっ!!」
喉をのけ反らせて夢中になって腰を振った。もう今はただ。ただ少しでも早くここから逃れたいだけで。早く解放されたいだけで。
「最高ですよ…貴方は…最高ですよ」
激しいピストン運動にルカンの欲望も限界だった。自らも腰を動かし、ペレアスを激しく突き上げる。そのたびに肉の擦れ合う音が響いた。ぐちゃぐちゃ、と。
「――――ああああっ!!」
きつく締めつける媚肉の感触にルカンは耐え切れずに、熱い精液を流し込む。こうする事で、確認させる。教え込ませる――――貴方はもう逃れられないのだという事を……
逃げられない、何処にも逃げられない。手首にも足首にも、この首筋にも、見えない鎖でがんじがらめに縛られている。この穢れた身体は、血と精液で縛られている。
「…はぁ…はぁ…」
繋がっていたモノを引き抜かれ、ペレアスはほっとしたようにため息をひとつ零す。それと同時にはぁはぁと荒い息が口から自然と零れてきた。けれども、まだ。まだ、許されはしなかった。この狂気の儀式はまだ…まだ、終わらない。その瞳の奥にまだ、抵抗の炎がある以上。まだ反抗の光がある以上。
「まだですよ、ペレアス殿」
「あっ!」
柔らかい癖のある髪をルカンは引っ張ると、そのまま自身の股間へと向けさせる。それは先ほどから続けられた凌辱のせいで、精液でどろどろと白く濁っていた。
「舐めるんですよ、貴方の舌で綺麗にするのです」
「…やあっ…」
弱々しく首をいやいやとして無駄な抵抗を見せるペレアスのその髪を掴んで、無理やりその口に自らのペニスを捩じ込ませた。生暖かい感触が再びルカンの雄を刺激する。
「んんっんぐっ!!」
「ほら、ちゃんと舌を使うんですよ」
拒否権はなかった。拒む事は許されなかった。捻じ込まれる肉棒を言われた通り舐めるしか、ペレアスには選択権はなかった。このグロテスクな欲望を口で奉仕する以外には。
「んぐっんぐぐっ」
髪を掴みながらルカンは何度も抜き差しを繰り返した。ペレアスの目からは堪え切れずに大粒の涙が零れてくる。
そう、もっと。もっと流すがいい…そうして絶望の淵に落ちてゆくがいい…堕落して、壊れればいい…
「やっぱり貴方は最高ですよ…まるで生まれながらの娼婦ですね」
「…んぐぐ…ふぐっ……」
「さあ、出しますよ。全部飲み干すのです」
「―――――っ!!」
―――どくどくどく……熱くて生臭いものがペレアスの口中に広がってゆく。それを吐き出す事は決して許されない。噎せ返る程に口内に広がる液体を飲み干す以外、許されなかった。
僕は、奴隷だった。見えない鎖に繋がれ、何処にも逃げる事が出来ずに。ただルカンの欲望を受け止めるだけの、ただの奴隷。毎日、毎日、飽きる事なく犯される。足を開かされ、穴と言う穴を塞がれる。逃げられない。逃げる事が出来ない。―――助けて…誰か…助けて……
そして、また今日も僕はその凶器に抉られる。支配者であるルカンの手によって、自分が奴隷だと思い知らされるために凌辱される。
「さあ、足を開くんですよ」
その言葉に睨み付けて、否定しようとした。けれども僕は許されずに、その手で足を限界まで開かされる。僕に…逃げる道は、ない……。
最も恥かしい部分が明るい場所に照らされる。足を閉じようとしても許されない。足首に繋がれた鎖をベッドの端に結ばれて固定させられてしまう。
「イイ格好ですよ…堪らない…くくっ」
布の上からも股間が膨らんでいるのが分かる。醜く鋭い凶器が僕を犯すために。―――いや…もうそれを僕の中に入れないで……
「いやです…ルカン様…もう……」
「ダメですよ、ペレアス殿…もう私は我慢出来ませんよ…」
下半身を覆う布が外されグロテスクな性器が剥き出しにされる。それはもう充分過ぎる程に硬さを保ち、生き物のように僕を見て蠢いていた。
「お願い…もう…それは…それは入れないで……」
涙が、零れそうになる。どうして?どうして、こんな事になってしまったの?誰か。誰か助けて…誰でもいいから…助けて……
「ふふ、いい顔ですよ。ペレアス殿。もっともっと請いなさい。そして、絶望に堕ちなさい」
「いやぁーーーっ!!」
双丘の入り口に硬いモノが当たる。いや、いや、いや…もういやなの…いやなの……もうそれは…
―――――ズンっ!…ズブズブズブ………
なんの準備も施されていないそこに熱い肉棒が捩じ込まれる。その硬さに堪えきれずに血が流れた。その艶めかしさに、ペレアスを傷つける凶器がより巨きく鋭くなる。体内で膨れ上がり限界まで媚肉を押し広げて。
「ひぁぁ―――っ!!」
「凄いですよ…ペレアス殿…こんなに締めつけて…凄いですよ…」
「いやぁ、いやぁ、あああっ!!」
「…流石の私も…参りましたよ……出しますよ……」
「いやああああ―――っ!!」
腰を動かす事もなく、ルカンはペレアスの中に精液を注ぎ込む。溢れるほどに、注ぎこむ。どろどろの白い液体と紅い液体が混じり合って、ペレアスの白い脚を汚した。
「…ぬ、抜いて…出したなら…もぉ…痛い…痛いぃ……」
「まだまだこれからですよ。ほら、感じるでしょう?貴方の中で大きくなってゆくのを…貴方の身体がいやらしいせいで…」
「いやっ…いやぁ…もおっ…もぉっ……」
「動きますよ、ペレアス殿」
「ああああっ!」
引き抜かれる事なく凶器は再びペレアスの中で膨張し、媚肉を傷つけてゆく。尖った痛みが全身を蝕ばんでゆく。腰を揺さぶられるたびに、奥を貫かれるたびに、脳内まで犯されてゆくのを止められない。
「やあっああっああああ―――」
「もっと、もっとですよ。もっと感じなさい」
「いやあ…壊れる…壊れちゃうっ!!」
もう分からない。何も分からない。全身を襲う闇が、快感が、そして傷が。尖った透明な糸が僕の身体をばらばらに切り刻む。切り刻んで、そして意識すらも。
「…感じてそして…そして壊れてしまいなさい…」
「壊れるっ助けてっ助けてっ!!ああああっ!!!!」
意識すらも、粉々に。心すらも、ばらばらに。僕を、僕を、壊してゆく。壊して、そして、僕は……
…僕は…僕は…ここから…逃げられるの…この場所から…この印から…ねえ…助けて…誰か…助けて……
――――遠くで硝子が粉々になる音が聴こえた気がした。それはまるで僕の心のようだった。