無理をして、背伸びして、



自分がどれだけガキなのかは、他の誰よりも自分自身が一番よく知っていた。それでも、大人ぶった。そうすれば少しでも大人になれるような気がして、時が進むような気がして。無駄な事だと誰よりも分かっていたのに、そんな滑稽な大人を演じてみた。


憧れの先にあるものの正体を知っても、結局どうにもならなかった。どうにもならないけれど、それでも手を伸ばした。
「――――もう俺はガキじゃない…だからセックスだって出来るんだ」
拒まれる前にその唇を塞いで、そのまま舌を絡めた。身体を離される前にしがみ付いて、その広い背中に腕を廻した。
「…サザ…お前はそんな事を俺に望むのか?…」
唇が離れて告げられた言葉に、何故だろう?ひどく泣きたくなったのは。けれども理由を考える前に、唇から言葉が零れていた。
「俺は…団長…あんたの事が……」
好きなんだと告げる前に、再び唇を重ねた。それ以上の言葉が出てこなくなって、ただ。ただもうこうして想いを伝える事しか浮かんでこなかった。

――――あんたのようになりたくて、あんたのように強い心と身体が欲しかった。大事なものを護れる強さが、俺は欲しかった。

憧れだけで想いが終われたら良かったのに、それ以上のものを望むようになってしまった。早く前に進みたくて、大人になりたくて、あんたに追い付きたくて…そう思ったら止められなくなった。そんな風に思うことこそが、ただのガキでしかない証拠なのに。それなのに。
「…団長…んっ…んんっ……」
唇を重ねながら、その身体を押し倒した。厚い胸板の上に乗れば、それだけで自らの身体が熱くなるのが分かる。この逞しい身体に触れてみたい。この力強い腕で触れられてみたい。
唇を重ねながら服の上から胸の突起に指を這わした。指の腹で転がすように弄れば、重なっている下半身が変化するのが分かる。そのまま上着をたくしあげようとしたら、手を遮られた。そして。
「…サザ、お前の望み通り抱いてやる…だから……」
「…団長……」
「――――だから、無理をするな……」
「…あっ!……」
そして大きな手のひらが俺の上着の裾から忍び込み、そのまま乳首を摘ままれた。自分がしたように指の腹で転がされ、きつく摘ままれる。その刺激にびくんっと震えれば、上着をたくしあげられ空いた方の乳首を口に含まれた。上に乗せられたまま。
「…あぁ…っ…団長っ…あぁぁんっ……」
敏感なソレはすぐに反応を寄越し、下半身を変化させる。自分でも分かるくらいにどくどくと自身が脈を打っている。
「…団、長…俺っ……」
自ら腰を浮かせ、ズボンを脱いだ。下着も全て脱ぎ捨て、上着だけをたくしあげたまま。そのまま団長の下半身まで移動し、膨れ上がったズボンのファスナーに手を掛けて、ペニスだけを外に出した。
「―――んっ……んんっ……」
剥き出しになったペニスを口に含み、懸命に奉仕した。自分のとは比べものにならないほど大きく硬いソレに。こうやって頬張るだけで喉に痞えそうになるソレに。
「…ふぅっ…んんんっ…んんんんっ!」
根元まで咥え、顔を上下させソレを飲み込んだ。そのたびに口の中に広がってゆくペニスに、自然と自らの股間が熱くなる。自らの奉仕で感じてくれている事に。
「…団長……俺は……あんたが……」
限界まで立ち上がるのを確認して唇を離した。再び腹の上に乗り、自らの指を唾液で濡らし、秘所に突っ込んだ。
「…あんたがっ……」
濡らして解して、そして。そして蕾に楔をあてがい――――そのまま腰を、降ろした。


本当はセックスをするのは初めてじゃなかった。金を稼ぐために、もう何度も身体を売っていた。見知らぬ男に何回も抱かれてきた。けれども。けれども、自分から望んでセックスをするのは団長が初めて、だったから。


男に跨り淫らに腰を振る俺は、団長にはどう映っているんだろう?
「――――あああっ!!あああっ!!」
女のように声をあげて、子供じゃないからとセックスをする俺は。
「…イイっ…イイよぉっ…あああんっ!!」
団長にとってはきっと。きっと、惨めで哀れなガキなんだろう。


どくどくと中に注がれる熱い液体を感じながら、自分も果てた。全ての想いを吐き出すように……。


あんたのように強い身体と心があれば、大事なものを護れるのに。好きでもない男とセックスなんてしなくていいのに。あんたのように…なれれば……。
「―――サザ…お前を哀れだとは俺は思わん……」
髪を撫でる手のひらは優しい。全てを包み込んでくれるような暖かくて優しい手。普段の武骨さからは考えられないほどの、優しい手。
「…けれども…自分から哀れになろうとするな……」
その優しさに泣きたくなった。ガキみたいに泣きたくなった。子供みたいに、泣きたかった。
「…俺がいるから…ガキのままでいていいから……」
声をあげて、子供みたいに。ううん、俺は、本当はガキだから。本当はずっとずっと子供だから。だから。
「…団長……」
それ以上は何も言えなかった。何も言えずにただ。声を殺して泣くだけだった。


無理をして、背伸びして、大人になろうとしたガキが出来る事は、こうして声を殺して泣く事だけだった。







お題提供サイト様 確かに恋だった