――――ずっと、好きだった。
綺麗な碧色の髪も。風のような瞳も。
全部、全部、大好きだから。
憧れて、近付きたくて。そして。
そして、触れたいとずっと。
……ずっと、思っていた………
―――憧れと恋の境界線は、何処から引けばいいんだろうか?
「…何で…アスベル?……」
脅えきったその瞳が、とても綺麗だった。凄く、綺麗。真っ直ぐに前を見つめている瞳も、何処か不安げな儚い瞳も、今こうして見せる瞳も。全部、全部好きだから。
「貴方が好きなんです。ずっと貴方だけが」
縛りつけられた両腕をセティは振りほどこうと必死に動かす。しかしそれはしっかりと結ばれていて、その細い腕では解くことが出来なくて。
「好きって…何言って……」
首筋から肩へのしなやかなライン。くっきりと浮かび上がる鎖骨。見え隠れする、胸元。無意識のうちに誘う、その紅い唇。
「初めは貴方のようになりたいと言う憧れでした。でも今は…今は、僕は貴方を僕だけのものにしたい」
「―――アスベル?…」
「貴方を誰にも渡したくないっ!」
「止めっ!」
抵抗の言葉は最後まで声にならなかった。強引に口付けられて、言葉を閉じ込められる。抵抗しようにも両の腕はきつく縛られていて、身動きを取る事が出来なくて。
「…んっ…んんん……」
顎を捕らえられて、唇を開かされる。生き物のような舌が口中に忍び込み、蹂躙した。怯え逃げ惑う舌を絡め、そのままきつく吸い上げる。
「――――んっ!!」
ビリリっと音がして、衣服が破かれたのが分かった。けれどもセティにはどうする事も出来ない。動かせない腕、塞がれた唇。全てが、アスベルによって閉じ込められている。
――――怖い……と、思った………
真っ直ぐに自分を見つめてくる瞳。
そらされる事無く真っ直ぐに。
自分のようになりたいと素直に言ってくる彼を。
強くなりたいと、そう言った彼を。
怖いと思った事など、一度も無かったのに。
―――でも今は…今は…ただ恐怖心だけが、支配して……
「綺麗です…セティ様」
唇が離れて真っ先に零れたアスベルの言葉にセティは小刻みに身体を揺らす。それは無意識の恐怖だった。一度『怖い』と言う思いが支配したら、もうそこから逃げられなくなっていた
「やあっ!」
アスベルの指が桜色の突起をぎゅっと摘む。それは見る見るうちに紅く色づいて、痛い程に張り詰めた。
「凄く綺麗。ココピンク色になってますよ」
「…ぁぁ…やぁ…」
アスベルの指は容赦無く、感じやすいそこを攻め立てる。摘んだり指の裏で転がしたり、思いがけないほどに巧みな指先は、何時しかセティの意識を奪ってゆく。与えられる快楽にセティの口は淫らな吐息で解かれていった。声を、堪える事が出来なくて。
「…あぁぁ…あ……」
アスベルの舌が張り詰めた突起をつつく。そしてそのままぺろりと舐め上げれば、さあっと白い身体が朱に染まってゆくのが分かる。それはとても、綺麗で。
「…やぁ…はぁ―――やっ!!」
軽い愛撫が一変して激しいもへと変化する。白い歯が胸の突起を噛んで、痛い程の快楽をセティの身体に刻む。その刺激に思わず身体をビクンっと震わせてしまう。
「…やだっ…やめ…おねが……」
セティの瞳に涙が滲む。その涙があまりにも綺麗で…綺麗過ぎて、だからもっと。もっともっと、その涙を見たくて、セティの胸を攻め続けた。
「…あ…あぁ…ん……」
やっと胸の愛撫から開放されたかと思う間もなく、その指と舌はセティの身体中を滑ってゆく。必要の無くなった衣服を無残にも引きちぎられながら。
「知っていました?貴方の無意識の癖」
「…はぁ…はぁぁ……」
アスベルの指がセティの下腹部に掛かると、そのまま下着ごと一気に脱がしてしまう。
「貴方はねぇ、無意識の内に男を惑わす表情をするんですよ。貴方の瞳や身体は欲望を掻き立たせるんですよ。現に僕も…貴方が欲しくて何度股間を膨らませた事か…」
「―――やあっ!!」
アスベルは見掛けよりずっと細いその足首を掴むと、そのまま限界まで広げさせる。その中心部は微かに息づき、セティの意思とは裏腹に快楽の兆しを見せていた。
「ほら、又そうやって誘っていますね。上手いですよ貴方は…女よりも男を狂わすのが」
全身を舐め廻すような視線を送られて。そのなぶられるような視線を与えられて。セティは羞恥が全身を支配して、そして。
「視姦だけで、ほら」
広げられた足の先でセティ自身が震えながらも立ち上がっている。どくんどくんと、脈を打ちながら。
「…くぅ…はぁ…」
その視線に耐えきれず、逃れようと脚を閉じる。しかし強い力で固定されてしまった脚は、セティの望みを叶えてくれなかった。
「ねえ、セティ様」
「ああっ!」
アスベルの指が自身に絡みつく。それだけで待ち構えていたように、ソコはみるみるうちに熱を帯びて来た。
「はぁぁ…あぁ…ん…」
見掛けよりもずっと。ずっとアスベルのテクニックは巧みだった。的確にセティの弱い部分を攻めてくる。口から零さなければいけないのは否定の言葉の筈なのに、甘い喘ぎ以外零れては来なくて。
「…やぁ…ああ……」
淫らな息のせいでセティの口元から無数の唾液が伝う。それはひどくアスベルの雄を刺激させた。淫らで、そして。そして綺麗で。
「本当に、貴方は男を狂わせますね…そして…残酷にさせる」
「…ぁぁ…やだぁ……」
アスベルはセティ自身から手を離して、その指を足の付け根へと移す。的を外した愛撫を繰り返し、セティの身体から湧き上がった快楽を焦らした。
「…やぁぁ…もう…ゆるし…」
焦らされ続けセティの意識は犯され続ける。気が変になってしまいそうだった。早く、開放されたくて。それだけが意識を支配して。それ以外に何も、考えられなくなって。
「イキたいんですね、セティ様」
「…はぁぁ…やぁ…ん……」
「イカせてあげますよ。僕が、ね」
そう言ってアスベルは開いたセティの脚の間に潜り込んでソレを口に含んだ。そのまま先端を舌でつつく。
「あっ―――!」
ピクンっと大きく身体が跳ねて、セティのソレは快楽の蜜を一気に零した。どろどろと白い液体が大量に出口から溢れてくる。それを一つ残らずアスベルは飲み込んだ。
「…はぁ…はぁ…はぁ……」
汗でしっとりと濡れる、白い肢体。微かに薫る、甘い体臭。その全てが、魅惑的で。そして、扇情的で。
「ずるいですよ、貴方だけ独りで。僕もイキたいです。貴方のココで」
「ああっ!」
快楽の余韻に浸る事無く、アスベルの指がいきなり最奥に進入する。慣らされていないソコは浸入物を拒む為に、逆に皮肉にも指を締め付ける結果となった。
「くすくす、セティ様…そんなに締めつけたら千切れちゃいますよ、僕の指」
「…あぁぁ…やぁぁぁぁっ……」
その羞恥な言葉にすらセティの身体がぴくっと反応する。その反応に満足するとアスベルは中への指の本数を二本に増やしていった。
「…痛い…アスベル…いたぁ……」
勝手な動きをするその指がセティの狭い中を傷つけてゆく。しかしその痛みを訴える表情すら、男の本能を誘ってやまなくて。
「…やめ…おねが…い…痛いっ……」
アスベルにはセティの狭すぎる内壁を、抉って傷つけるのを止められなかった。否、止められない。苦痛に涙を滲ませる彼の顔はひどく本能を刺激し、恐ろしい程に男を雄へと変えてゆく。そのくらい、淫らで。そのくらい、綺麗で。
「もう、こっちが我慢出来ないです、セティ様…いいですよね……」
「ああ…ん……」
アスベルの指がセティの中から、くぷっと濡れた音と共に引き抜かれる。苦痛から逃れてソコは安心したように緩む。しかしアスベルはその隙を逃さなかった。
「―――ひぃっ!」
アスベルは内部の肉が揺るんだ瞬間に、充分に大きくなったその先端をセティの中へと突っ込んだ。
「ああ…ああああっ!!!」
そしてそのままずぶずぶと残りの部分を呑み込ませてゆく。抵抗する内壁を容赦なく傷つけながら。繋がった部分からじわりと紅い液体が零れても、アスベルは侵略を止めようとはしなかった。
「…やあっ…ああっ…あっあっあっ……」
自分の欲望に張り詰めたそれを全て呑み込ませると、アスベルはゆっくりとセティに視線を向ける。先程とは比べ物にならない激痛に涙を滲ませてゆくセティの顔がそこにはあった。壊したい程、綺麗なその顔が。
「…痛…い…助けて…ああっ!」
その顔に、その表情に、次第に自分を抑えられなくなる。滅茶苦茶にしたくて、堪らなくなる。男を銜え込んだセティの身体は、そして表情は。激しく本能と残酷さをゆさぶり起こさずには…いられなくて。
「―――動かしますよ、セティ様」
アスベルの言葉に明らかに腕の中の身体が震える。恐怖に、そして怯え。しかしもうアスベルはこの欲望を止める術を知らなかった。ただ本能の赴くままに腰を激しく動かすしか、なかった。
「―――やああっ……あっあっ」
アスベルの男の武器が、セティの内壁を激しく傷つけ犯してゆく。痛みに目が眩みそうで、もう。もう今は、どうでもいいから早くこの苦痛から逃れたかった。
「…ああっ…やっ…助けて…助けて……」
けれどもその叫びは届かない。欲望と本能に飲み込まれたアスベルには届く事は、なかった。
「あっあっあっ!!」
がくんがくんとアスベルが腰を激しく動かすたびに、その衝撃に身体が揺れる。激しく貫かれ、息すらも出来ないほどに。
「セティ様…僕だけのセティ様…誰にも渡さない…貴方は僕だけのもの……」
「ああっっ――――!!」
アスベルは最奥まで一気に貫くと、セティの中に自らの熱い想いを一気に吐き出した。
好き、だった。ずっとずっと、好きだった。
どんなに追いかけても、追い付かなくて。
どんなにどんなに追いかけても、貴方は手に届かない人で。
ずっと、ずっと僕の上にいたから。
だから僕は、貴方を僕の位置まで引き摺り下ろしたかった。
そして。そしてこの腕に抱きしめて。きつく、抱きしめて。
―――この腕の中に、閉じ込めたかった………
「目が覚めた時、貴方はどんな顔で僕を見るのでしょうか?」
ぐったりと気を失ってしまったその姿を眺めながら、アスベルはそっと戒めていた手首を外した。そこに付いた痕にひとつ、口付けて。
「軽蔑しますか?それとも…憐れみますか?……」
そしてそのままそっと自らの頬にその手を重ねた。苦しいほど切ない表情を消せないままに。
―――どうしようもない切なさと愛しさを…消せないままに………
「…それでも僕は…貴方が好きなんです……」