監禁



―――誰にも、渡さない。お前はわしだけのもの。


逃げないようにまず、鎖で足首を繋いだ。
次に、首輪を掛ける。わしだけのものだと示すように。そして。
そして、二度と逃げられないように身体に快楽を刻む。


永遠に続く、儀式のように。



初めてその身体を犯したのは、お前が14歳の誕生日を迎えた日。逃げるお前の腕を掴んで、ムリやり衣服を剥いだ。
「やだっ、止めてくださいっ!!」
今まで自分が誰よりも信頼していた人間が、突如獣となって襲いかかる。お前にはどうしようもない程の恐怖だっただろう。
発達の遅い小さな身体を床に押し倒して、そして後ろ手にロープで縛った。そのまま下着ごとズボンを下ろして、足を強引に開かせた。まだ大人になりきっていない性器が恐怖に縮こまっている。それとは正反対にわしの股間はこれから起こるであろう行為に限界まで膨れ上がっていた。

――――セイラム…わしの可愛い、可愛い玩具。

「いやっ!」
嫌がるお前を押しつけてその胸の突起に歯を立てる。そしてわしはその器官にむしゃぶるように吸い付いた。ずっと欲しかったもの。ずっと手に入れたかったものが、今。今この腕の中にある。
「やだっ、止めてください、マンフロイ様っ!」
止めるものか。ずっと、ずっと欲しかった。こうして抱きたかった。その身体に自らを埋めて、そして自分だけのものにしたい。―――自分だけの、ものに……
「怯えなくてもいい、セイラム。可愛いわしの、セイラム」
「やあっ!」
未熟なお前の性器を擦り抜け、その最奥へと強引に指を突っ込んだ。そこは予想通り狭過ぎて、わしの指を受け入れようとしない。それでも構わずにわしは中へと突き入れた。
「止めて…くださいっ…お願い…痛いっ……」
「こんなんで痛がってどうする?これからもっと大きいモノが入るのにな、フフフ」
そう耳元で囁くと目にも分かる程に身体が震える。恐怖怯えている。それで、いい。怯えるだけ怯えろ。お前はもうわしから逃げられはしないのだから。
―――もう二度と、わしから逃げられないのだから……。
「誰にも渡さんよ、忠実なロプト教のしもべとして…お前はわしに選ばれたのだから」
指を引き抜いて、そして代わりに自分自身をあてがった。その途端に最後のあがきとでも言うように、その身体を暴れさせる。けれどもわしはその動きを封じ込めると、一気にその身体を貫いた。


「――――ひぃ!!」


指とは比べ物にならない衝撃に、セイラムは悲鳴を上げる。それでもマンフロイはその凶器を止めようとはしなかった。
「ひぁっやあっ!痛いっ!痛いっ!!」
その大きさに耐えられなくなった器官が紅の血を流した。ぐちゅぐちゅと血が零れる。しかし逆にそのせいで滑りがよくなった事をいい事にマンフロイはより深くセイラムの身体を求めた。
「ああっ…やあっ痛い…痛い…抜いて……」
首を左右に振ってその凶器から逃れようとするが、マンフロイの老人とは思えない強靭な腕がセイラムの腰をしっかりと掴んで離さなかった。
がくん、がくんと身体が揺らされる。ずちゅずちゅと接続部分が淫らな音を立てる。それがマンフロイをより一層快楽へと導いた。
「セイラム…凄いぞ…お前の中熱くて溶けそうだ…」
「いや…抜いて…お願い…抜いて……」
「最高だ、セイラム。わしはもう我慢出来ん…出すぞ」
「ああーーっ!!」
セイラムの悲鳴がより一層恐怖に上がると、マンフロイはその中に欲望の証を吐き出した。


―――ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ


「ああっ…あああ……」
セイラムの足に紅と白の液体が交じり合って滴る。もう何度その中に精液が注ぎ込まれたか、分からない。けれどもまだマンフロイによる攻め苦は許させる事はなかった。
「…やあっ…もお…もお許し…あああ……」
どくんどくんと、今日何度目かの液体が注がれる。そしてやっとの事でセイラムの身体が解放された。
身体中を精液まみれにされて、やっと。けれどももうセイラムには立つ気力すらもなかった。
「―――やっと、わしのものになったな…フフフ、お前はわしだけのものだ…」
うっとりとした声が耳元に囁かれる。けれどもその声はもう、自分にとって恐怖の対象でしかならなかった。
「わしだけのものだ。わしだけの…」
「…マンフロイ様…やだ…止めて…ください……」
動けないセイラムの足にマンフロイは銀色の冷たい金具を嵌めた。カチャリと冷たい金属の音が、セイラムの恐怖を煽った。底知れぬ、恐怖を。そんなセイラムにマンフロイは満足げに笑った。老人特有の皺が刻まれた顔で、深い嫌らしい笑みを。
―――これで、もう。もう何処にも逃がさない。
「わしだけのものだ」
そして尚も逃げようとする、セイラムの顎を捕らえて強引に口付けた。



気付いていた。お前が何処かでロプト教に、わしに疑問を持ち始めていたことを。心の何処かで不信感を覚えていたことを。
だから捕えた。だから逃げられないように拘束してやった。そう、逃がしはしない。決して逃がしはしない。
幼い頃からずっと。ずっとわしのしもべになるように、全てがロプト教に捧げられるように、お前を育ててきた。お前だけを、育ててきた。


…誰にもお前は渡さない。わしだけのものだ。わしだけの…忠実な玩具だ……。



遠ざかる意識の中、しゃがれた声が狂気混じりに聴こえてくる。それはかつて自分が心から心酔した教祖の欲望に満ちた声だった。醜い欲望と、狂気が混じった声だった。
その声に埋もれながら、セイラムは唇をきつく噛み締めた。意識が途切れる前に忘れないようにと。決して今心に刻まれたこの憎悪を忘れないようにと。


――――自分の目の前の男は、ただの欲望に塗れた豚だという事を…



強く心に刻んでセイラムは意識を飛ばした。必ず何時か自分は彼の前に立とうと。どんなことをしてもここから抜け出して、そして。そして真実を見つけようと。
今まで信じてきたものを全て打ち砕かれた絶望感を、決して。決して忘れないようにと。



脚に繋がれた冷たい金属の感触を感じながら、セイラムは意識を失った。