見上げてくる笑顔はまるで悪魔のようだと思った。その癖カリスマ持ちのせいか何なのか、やたら魅惑的な笑顔で目が離せなくなったりするから質が悪い。
「腰が疎かになってるぜ、もっと動けリフィス」
言われてはいそうですかと出来る状況じゃない事は下でふんぞり返っているお前が一番分かっている癖に、なのに無茶な要求をしてくる。昔から、こいつはそうだ。
「…そんな事、言われたって…っああっ!……」
不平を述べた途端に下から突き上げられて、顎がのけ反るのを止められなかった。見た目は優男にすら見える癖に、こいつのナニはバカでかい。隣で比べられて何度俺が落ち込んだ事か…そんなモンが今自分の中に突っ込まれていているんだから、簡単に動けと言われても無理なものは無理なのだ。
「動かねーとこのままだぜ」
「そ、そんな…無理っ…だっ……」
涙目になって訴えても許される筈はなく、自らの体内に埋められたペニスはひたすら存在感を主張している。こちらは中を抉られるだけで達してしまいそうになるのだが、いかんせんその指で自らの出口は意地悪にも塞がれていた。イキたくてどくどくと脈打っているのに、吐き出す事を許してくれない。それどころか、そんな状態意のまま腰を振ってイカせろと無体な事を言ってのけるのだ。
「無理じゃねーだろ?この間はあんなに俺が欲しくて腰振りまくってたくせに」
告げられた内容に肌がさああと朱に染まってゆくのを止められない。それどころかその時の情景がまざまざと浮かんできて、消えてはくれなかった。
「…だって…あの時はっ……」
もどかしい愛撫だけを与えられ、イキそうになると止められて…もう耐えきれなくなって夢中で腰を振った。自ら肉棒の感触を求めて、そして。そして真っ白になってイッた。
「ならば今も出来るだろ?俺を満足させろ」
ふんぞり返る程偉そうに告げてくる相手を睨みつけても意味はない事は分かっている。それでも睨まずにはいられなかった。何処までも自分勝手で何処までも酷い奴で、まるで悪魔のような男。幼い頃から散々酷い目にあわされて、身体まで奪われて、それでも。
「…畜生…この悪魔っ!……」
それでも悔しい事に俺はこいつに惚れている。この悪魔のような酷い、男に。
初めてセックスした時もこんな風に無茶苦茶だった。俺の意思なんて何処にもなくて、とにかく突っ込まれて、喘がされていた。悔しい事に抵抗する間もなく組み敷かれ、触れてくる指があまりにも巧くて気持ち良くて。お陰で与えられる快楽に溺れ、気付けば自分から脚を開いていた。
それからなし崩しに身体を重ねる関係になって、気付けばお前ナシではいられない身体になっていた。俺の全部がお前の指に反応するように開発され、後の穴だけでイケるようになってしまっていた。こうして後だけ、で。
「…はっ…あっ…あああっ……」
好き勝手されて悔しいという思いよりも、解放されたいという願いが勝った。限界まで膨れ上がった自分自身が出したいと訴えている。それを拒む事はもう俺には出来なかった。
「…ああんっ…ああぁっ…あん、あん、あんっ!!」
前を塞がれたままで腰を振った。上下に振って、下から突き上げてくる楔に抜き差しを繰り返す。そのたびに形を巨きくさせてゆくソレに、蕾は悦んで喰いついた。まるで全部を飲み込もうとでもするように。
「…イイか?リフィス…お前はもうコレなしじゃあ生きられねーだろ?」
違うと首を左右に振っても無駄だった。そうしながらも俺は腰の動きを止められなくなっていた。気持ち良くて。気持ち、良くて。自分を貫き抉る肉棒が。深く奥まで突き刺さるその楔が。引き裂かれそうな程広げられる媚肉が気持ち良くてぐちゅぐちゅと濡れた。
「…あああっ…イイっ…イイよぉっ…パーンっ…気持ちイイよぉっ……」
止められない、止まらない。頭が真っ白になる。けれどもそれを寸での所で止めるものがある。それはイキたくてもイケない出口を塞がれた自分自身で。
「…イカせて…もおっ…もぉっ…俺っ…!」
「―――全くしょうがねー淫乱だなお前は…ほらよっ」
「ああああああっ!!!」
先端をギュッと擦られてきつく閉じられた入り口は解放された。その途端に弾けるように俺自身は精液を勢いよくどぴゅどぴゅっとお前の腹の上に吐き出した。そして。
「――――っああっ!!」
それと同時に俺の中に注がれた。熱くて濁った白い液体が、体内の奥深くへと…。
優しくない。酷い事ばかりする。俺を好き勝手して、自分の都合のいいようにする。けれども、そんなお前に俺は悔しいが惚れている。悔しいくらいに―――惚れている。
「全くお前は本当にどうしようもねーな」
身体は繋がったまま、上に乗せられたままで。引き寄せられ裸の胸に顔を埋められて、そのまま髪を撫でられる。その手は予想よりもずっと優しい。
「…お前のせいだろ…パーン……」
快楽の名残の消えない声は、ひどく掠れていた。喘ぎ混じりの声では恨み節も意味がない。それでも悔し交じりに告げれば。
「ああそーだな。俺のせいだ。だから……」
悪魔みたいな笑みを浮かべながら、俺に、告げた。
「…ずっと俺のそばにいろよ……」