激しい想いと、苛烈な心で戦場を駆け抜けた。
前を見続けなければならなかったから。振り返ってはいけなかっから。
常に前だけを見つめて、真っ直ぐに前だけを見つめて。
ただひたすらに向かってくる敵を切りつけて、そして駆け抜ける事。
戦場と言うこの場所をただひたすらに。ひたすら、に。
ひたすらに駆け抜け、そして。生き残る事が。
―――それだけ以外、考える事が許されなかったから……
こうして肌を見せるのはひどく嫌だった。街にいる娘達のように綺麗な肌をしてはいなかったから。日に焼けて白くはない肌。剣を振りまわしていたせいで華奢とは縁遠い身体。
そして何よりも戦場で出来た無数の傷跡。それをこうして明かりの下に見せるのは。
「…マチュア……」
「…あまり見ないで…ブライトン…」
身体を重ねるのは初めてではなかった。でも何時も私は貴方に頼んでいた『明かりは付けないで』と。どうしても全てを曝け出すのが恥ずかしかったから。でも今は。今はこうして貴方の前に全てを見せている。
「どうしてだ?」
それでも両手で胸を覆い、貴方に見えないようにしている。お世辞にも丸びを帯びている女らしい身体ではないから。それが何よりも私のコンプレックスになっていた。それでも。
「…私…あまり綺麗な身体じゃないから…」
「――綺麗だよ」
それでも貴方にはその想いを告げる。コンプレックスでも、貴方になら曝け出す事が出来るから。
「全部綺麗だ…愛している…」
「…ブライトン……」
「愛している、マチュア」
そしてそんな私の全てを、貴方は受け入れてくれるから……。
戦いが終わって、初めて。
初めて私は向き合った。
今まで切り捨ててきたもの全てから。
全てから向き合った。そして。
そして見付けたものは。見つけ出したものは。
貴方へのただひとつの想い、だった。
―――貴方を愛していると云う…その想い、だった……
口付けはひどく甘いものだった。私を労わるように優しく、そして次第に深くなってゆく口付け。
「…んっ…んん……」
舌を絡めあい、互いの吐息を奪い合った。ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てながら本能のままに口中を弄りあった。
「…ふぅっん…はぁっ…ぁぁ……」
唇が離れたと同時にとろりとした唾液が口許を伝う。それを貴方の指がそっと拭ってくれた。貴方の、指。大きな手のひら。そこには無数の傷があって、一生消えないものもある。
でもその傷一つ一つが、私にとっては何よりもかけがえのないもの。貴方が戦いで得た、その傷が。大事な、大事なものだから。
「――マチュア……」
私はその手を取って、そっと舌で舐めた。傷ひとつひとつを逃す事無く。小さな傷ですら私は逃さないようにと。
「…ブライトン…好きよ…」
「俺もだ。誰よりもお前が」
「…あっ……」
胸に置かれていた手が解かれて、貴方の前に乳房が曝け出される。そのまま貴方の指が胸に触れると、突起を指で転がした。
「…あぁっ…ん…はぁっ……」
ころころと指の腹で転がしながら、膨らみを鷲掴みにされる。指先は柔らかく、手は強く。その正反対の刺激に私は身悶えた。口からは甘い息が零れるのを止められない。
「…あぁぁん…あん…あぁ……」
唇が胸に吸い付き、突起を舌で転がされた。何時しかソコは痛い程に張り詰め、些細な刺激ですら逃さないようにと敏感になっていた。
軽く歯を立てられれば堪えきれずに私は貴方の髪に手を伸ばして、くしゃりと掴んだ。
「…あぁ…あ…ブライ…トン…はぁ……」
無意識に私は胸を貴方へと寄せて、刺激を求めていた。もっと、もっとと。それに答えるように貴方の指の、舌の動きが激しくなる。何時しか私は目尻に快楽の涙を零していた。
「―――マチュア……」
「ああんっ!!」
胸から唇と指が離れたと思ったら、それは私の秘所へと辿り着いていた。脚を広げられ、貴方がその間に入ってゆく。指先で花びらを広げられて、その中に舌が入ってきた。
「…ああんっ…あぁっ…熱い…ぁぁ……」
ぴちゃぴちゃと音を立てながら貴方の舌が、ソコを舐める。その動きに答えるように私の媚肉はひくひくと震えた。
「…熱い…あぁ…ブライ…トン…あああんっ」
―――ズプリ…と音がして秘所に指が埋められる。それでも舌の動きは止まらなかった。廻りを丁寧に舐めながら指が奥へ、奥へと入ってくる。ぐいぐいと中を掻き乱され、耐えきれずに私の身体は波打った。
「…あぁ…熱い…ああ…ふぁ……」
くちゅくちゅと中を蠢く指の音が、私にダイレクトに伝わってくる。その音が身体を朱に染めさせる。私はなんとか耐えようと貴方の髪に再び手を伸ばした。
こうしていれば安心出来るから。どんな時でも、どんな事になっても私は。
「…あぁんっ…ふぅん…ああ…あ……」
たっぷりと舌と指でそこを濡らされ、離れていった。それが名残惜しくて無意識に私は腰を浮かせて貴方に摺り寄せる。そんな私を貴方はひとつ、微笑った。ひどく優しく、微笑った。
「…ブライ…トン……」
「…マチュア……」
私は目を開いて貴方の顔を見つめた。そしておずおずと手を伸ばして、貴方自身に触れる。それは既に熱く硬く滾っていた。
「…貴方の…コレ……」
手のひらで包み込み、筋をなぞった。それだけでどくんどくんと脈打つのが分かる。それが。それが何よりも嬉しくて。私を求めてこんなになっているのが、嬉しくて。
「…コレが…欲しいの……」
「ああ、マチュア…幾らでも…幾らでもやるよ」
貴方はそう言うと私の腰を掴んだ。入り口に硬いものが当たって、それが私を。私をひどく安心させた。
零れるほどの、想い。
それは静かに私を満たしてゆく。
ゆっくりと、ゆっくりと満たして。
私を溢れさせてゆくから。
「――――あああっ!!!」
ズンっと感じた瞬間に、貴方が私の中へと入ってきた。絶対的な存在感と、熱く硬いものが私の媚肉を引き裂いて、最奥へと貫いてゆく。
「あああっ…あぁぁっ…あああっ!!」
ぐいっと腰を掴まれ、引き寄せられる。中を抉られる痛みと、それ以外の深い快楽が私を襲う。
「…あああっ…深い…深い…ぁぁぁっ…」
中を熱い棒で掻き乱され、食い込むその激しさに意識が次第に飛ばされそうになる。麻痺しそうなほどの快楽が私を襲って…。けれどもそんな私の意識を止めているのもまた、中で自己主張しているその塊だった。
「…あぁぁ…あぁ…ブライ…トン…ああああっ……」
「…マチュア…愛している…マチュア……」
「…あああっ…私も…あぁ…あ…私も…愛している…ぁ……」
ぐちゃんっと濡れた音とともに最奥を抉られる。子宮まで突き破りそうな楔に、私の一番感じる部分がじくじくと汁を滴らせている。もう何が何だか分からなくなって。
「ああああああ――――っ!!!!」
喉を、背中を。仰け反らせて、喘いだ。その瞬間、意識が真っ白になった……。
置き去りにしてきたから。犠牲にしてきたから。
戦争と言う名の元に、私は全てを。
女としての全てを置き去りにしてきたから。
だから今こうして振り返って。振り返って私は。
私は貴方によって与えられた。
貴方によって私の置き去りにしてきたものを。捨ててきたものを。
こうしてゆっくりと、与えてくれたから。
―――静かに私の胸は、満たされてゆく……
「…マチュア……」
そして、私が諦めていたものを。
「…はい?…」
私が置き去りにして、捨ててきた筈のものを。
「―――結婚、しよう」
貴方は私に、与えてくれた。
「…は、い……」
それは私の『女』としての、しあわせだった。