綺麗なその指にひとつ唇を落とした。俺が本当に触れていいものなのかを確認するために。そっとひとつ、キスをした。
綺麗な笑顔がそこにはあって、それを見つめていたら今まで駆け巡っていたものが全部。全部、綺麗に消えていった。
「―――いいのか、本当に?」
問いかけた言葉に、こくりとひとつ頷いた。その瞬間に柔らかい碧色の髪がふわりと揺れる。それを追いかける前に、白い手がそっと頬に触れた。
「…それは私が貴方に尋ねたいです…私で…いいですか?……」
月明かりに照らされる横顔はひどく綺麗で。血まみれのこの腕が本当に触れていいのかと戸惑うほどの。けれども。
「…シヴァさん…私は貴方が好きです…神に仕える身でありながら、貴方に恋をしました」
けれどもお前から、触れている。お前の手が俺の頬に触れている。陶器のように白く儚いお前の指先が。
「…シスター……」
「…サフィと…呼んでください…私はもうシスターじゃない…今ここにいる私は…貴方を愛したただの一人の女です……」
それだけを告げるとそっとお前は瞼を閉じた。その目尻がほんのりと朱に染まっている。こうして想いを告げる事すら、お前にとっては精いっぱいの行為なのだろう。こうして、想いを告げる事が。
「―――ああ、サフィ…俺もだ…俺もお前を…愛している……」
その言葉を合図に開かれた瞳は今まで見てきたどんなものよりも綺麗だった。綺麗過ぎて壊したくなかったから、瞼の裏に焼き付けて、そっと。そっとお前の唇を塞いだ。
――――生きてください…お前が告げた言葉は…俺にとっての生きる意味になった……
月明かりだけが頼りのこの室内で、お前の白い肌だけが浮かび上がってくる。まるで絹のような柔らかい肌が。
「…あっ……」
初めて他人に触れられる行為に戸惑いながらも、その唇は甘い息を零させる。柔らかな胸の膨らみに触れれば、そこから白い肌がほんのりと朱に染まっていった。
「…はぁっ…やぁっ…んっ……」
乳房を手で掴み、尖った乳首を指の腹で擦ってやる。それだけで組み敷いた身体はぴくんぴくんっと跳ねた。
「…やぁんっ…ぁぁんっ……」
空いた方の胸の突起を口に含み軽く歯を立ててやれば、声が零れるのが抑えきれなくなってゆく。それを堪えようと口を手で覆い、押し寄せるものから必死に耐えていた。
「―――サフィ……」
名前を呼べばおずおずと瞼が開かれる。その瞳は夜に濡れていた。しっとりと濡れた瞳で俺を見上げてくる。そんな彼女の髪をひとつ撫でてやって、形の良い額に唇をひとつ落とした。そこから広がるぬくもりをひどく暖かいものに感じながら。
「…隠さなくていい…全部見せてくれ。俺に、見せてくれ……」
「…シヴァさん……」
「さんはいらない、シヴァでいい」
綺麗な白い指が、俺の髪に絡まる。そしてそのまま。そのまま引き寄せられ唇が重なった。重なったら止まらなくなる。止められなくなる。そのまま唇を開かせ、舌を絡め取った。根元まで吸い上げ、唾液を分け合った。濡れた音と零れる吐息だけが室内を埋めるまで、互いの口内を貪った。そして。
「…はぁっ…シ…ヴァ……」
そしてふたりを結ぶ唾液の糸がぽたりと口許に落ちた瞬間、お前は俺の名前を呼ぶ。俺の名前だけを。
「―――ああ、サフィ…そう呼べ」
「…シヴァ…シヴァっ……」
「愛している、サフィ」
名前を呼ばれるたびにきつく抱きしめ、そのまま脚を開かせた。誰も触れた事のない蕾を下界に暴き、そのままずぷりと指を埋める。その瞬間、しがみ付いていた腕に力がこもった。
「―――っあっ…くふっ…ふ…」
「痛いか?」
耳元で囁いた言葉に首を左右に振って答える。それを確認して、俺は指を奥へと進めていった。そこはじっとりと濡れ、俺の指を迎え入れた。
「…ふぁっ…あぁっ……あっ!」
「ココか?ココがいいのか?」
声の色が明らかに変化する。今触れている所が一番感じる場所なのだろう。それを確かめるように中を掻き乱すと、まるで嬌声のような声が零れた。我慢出来ないのだろう。この未知の快楽に。
「だめぇ…っソコは…ソコはっ…あああんっ!」
中を掻き乱す指先が濡れる。その液体を密部に擦りつけ、蕾を開かせた。指なんか比べものにならないモノを受け入れさせるために。
「―――あっ……」
指が引き抜かれる感触に腕の中の身体が、びくんっと跳ねた。それはまるで失われた快感を追いかけるようで。
「サフィ、辛かったら言ってくれ。無理強いはしたくない」
「…シヴァ…あ……」
濡れぼそった入り口に硬くなった自身をあてた。蕾から溢れる液体を自身に擦りつけると、そのままゆっくりと侵入をした。
「――――ひっ!あああっ!!!」
どんなに指で慣らしても処女の入り口は狭く閉ざされていた。先端の部分を入れるだけで、口からは悲鳴のような声が零れた。そんな痛みを少しでも和らげるために額に口づけ、胸の膨らみを愛撫した。下半身を襲う痛みを少しでも快楽にすり替える為に。
「…ああっ…ああぁ……」
動きを止めて胸の愛撫を繰り返してゆくうちに、声に艶が含まれてゆくのを感じた。それを確認して、少しずつその体内に肉棒を埋めてゆく。
「…ひぁぁっ…ああぁっ……」
中に挿ってゆくたびに零れるのは苦痛とも快楽ともつかない狭間のような喘ぎだけで。だから。
「…サフィ…愛している…サフィ……」
名前を、呼んだ。愛しいその名前を呼んで、キスの雨を降らせて。そして指を絡め合わせて貫いた。繋がっているんだと、全部繋がっているんだと、そう伝える為に。
「…ああっ…あああっ…あぁぁっ!……」
擦れ合う肉からする濡れた音と、悲鳴のような喘ぎが室内を埋める。それに溺れながら、思いの丈を吐き出した。その体内に、欲望を吐き出した。
――――指先にキスをする。そっとキスをする。ずっとお前だけを愛してゆくと、誓う代わりにキスをする。
汗でべとつく前髪を掻きあげてやれば、重たい瞼がそっと開かれる。そして。そして綺麗な瞳が俺を映し出して。
「…シヴァ…これで…これで私たち…ひとつになれたのですね……」
「―――ああ、サフィ…俺たちは…ひとつだ……」
その言葉にそっと微笑う。柔らかく微笑う。それは何よりも大切なもの。俺にとっては神よりも、誓いよりも…大事なものだった。
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