――――ふわりとひとつ、甘い薫りが鼻孔をくすぐった。その漆黒の髪から零れる柔らかな薫りが。
微かに聴こえてくる寝息に少しだけ口許が和らいだ。こうして目を閉じて眠っていると、普段の凜とした強さが隠れて年相応の少女のような顔になる。それはひどく。ひどく、愛しいものだった。
「………リ…ン………」
寝言ともに微かに身体が身じろぐ。起こしてしまったのかと思いその顔を見下ろせば、穏やかな寝顔がそこにあった。穏やかで幸せそうな、少女の寝顔が。
「…こんなお前も……可愛いな……」
思わず漏れた本音にホリンは彼にしては珍しく微かに頬を朱に染めた。普段告げる事のない言葉を思わず、零してしまった事に。そしてそんな本音を思わず言葉にしてしまったその寝顔と、そして。そして零れ落ちた寝言に、そっと。
――――そっと盗むようにひとつ、キスをした。
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