カチャリと音がして、扉に鍵が掛けられる。
そうする事で、この場所が。この公共である筈の場所が。
誰にも見られることのない密室になる。
日常から区切られた、背徳だけが存在する空間になる。
―――誰にも渡しは、しない……
「出来ないことは、ないでしょう?」
閉鎖された空間に善行の声だけが、静かに響く。閉じられた窓からは日が零れて、まだ明るい時間である事を告げていた。そして校庭から聞えてくる、声。何時ココを覗かれるか分からないのに。それなのに。
「…って誰かが来たらどうするんだよ…」
「くす、皆今ごろは教室で勉強をしていますよ」
「―――お前はっ!」
きっと瀬戸口は善行を睨み付ける。けれども彼は相変わらず何時もの笑顔を浮かべるだけだった。静かに、そして冷静とも言える瞳で。
「やりなさい、これは命令です」
善行は一歩、前に足を進めて執務室の机に座らされている瀬戸口の前に立つ。ワイシャツのボタンは胸元まで外されて、そこには無数の紅い痕…無論善行が付けたものだ。
次の日が体育の授業だと分かると、必ず善行は瀬戸口の身体に痕を付ける。そうしておいて授業をさぼらせて、ここへと呼ぶのだ。それが何時もの彼の手だった。そして瀬戸口はその手を拒むことが、出来なくて。
「嫌だっ」
うっすらと涙目になって瀬戸口は拒否をした。唇をぎゅっと噛み締めて。けれども善行が自分を許しはしないだろうと、また何処かで分かっていたが。
「聞き分けのない人ですね…まあいいでしょう。嫌だと言うのも今の内ですよ」
「―――あっ!」
瀬戸口の脚が強引に開かせられる。下は何も身につけてはいなかった。ここに来た途端、善行に命令されて仕方なく脱いだものだった。下着もつける事は許さないと言われ、そのまま脱いだ。ワイシャツ一枚になって、机の上に座れと言われてその通りにした。
逆らえなかった。逆らう事が、出来なかった。心は嫌だと思っても、身体が言う事を聴いてしまう。何度も何度も快楽を教え込まれ、そして。そして逆らう事すら出来なくなって。このまま自分は何処まで堕ちていってしまうのだろうか?
「くすくす、何もしてないのに…勃ちあがってますよ、貴方のココ…よっぽど欲しかったんですか?」
善行の言葉に瀬戸口の身体がさっと朱に染まる。知っている、彼は言葉に弱いと言う事を。恥ずかしい言葉を告げれば告げるほど…その身体が反応すると言う事を。
「…ち、違う…俺は……」
善行の視線に晒されて、言葉とは裏腹にソレは勃ち上がり始めていた。ひくひくと小刻みに震えながら。
「嘘ばかり」
「―――ああんっ!」
そろりと手で撫で上げられるだけで、びくんっと瀬戸口の身体が跳ねた。口からは甘い悲鳴を零しながら。
「そんな声を出していながら…貴方は嘘吐きですね」
再び瀬戸口が善行を睨み付けるが、その瞳に力は入っていなかった。何処か媚びるような色が覗いて…そこにあるモノはもっと刺激を求めている証拠だった。
「…違う…俺は…あ……」
「そうですか、ならばいいのですよ」
と言ったきり善行は瀬戸口に触れなかった。ただ眼鏡越しに彼を見下ろすだけで。冷たい視線が瀬戸口の身体を滑るだけで。そう、舐めるような視線が彼を見ているだけで。
「……ふっ…ぁ……」
視線が唇を辿る。はだけた胸元を滑る。尖った乳首を見下ろして、シャツの中へと入ってゆく。そのまま剥き出しになった下半身に、落ちてゆく視線。
「…ぁぁ……」
触れられていないのに。直にその手が触れていないのに。瀬戸口のソコはびくんびくんと反応する。堪えようとしても堪えきれず口からは甘い息が零れる。
「辛いのなら自分ですればいいんですよ、こうやって」
「やっ、止めろっ!あっ……」
善行の手が瀬戸口の手に重なって、そのまま自身に添えられた。そしてそのまま上からぎゅっと力を込めて握り締められる。その刺激に瀬戸口の肩が、跳ねた。
『自分でやって、見せてください』
鍵を掛けられて、そして言われた言葉。
何時もの表情で言われた言葉。
その言葉に拒否した。したかった。
今までは何時も『される』と言う事で。
そう言う事で自分を納得させていた。
―――これは俺が望んでしている事ではないと……
でも、もう。もうその最期の悪あがきも。
その最後の抵抗すらも、こうやって。
こうやってお前の手によって、崩されていく。
…こうやって全てが…崩されてゆく……
「…あぁ……」
善行の添えられていた手が離されても、瀬戸口はもうそこから自らの手を離す事が出来なかった。もう、後は欲望のままに自らの指を動かすだけで。
「…はぁぁっ…あぁんっ……」
片手で自身を包み込みながら、開いた方の手が胸元に滑り込む。そしてそのまま尖った乳首を指の腹で転がした。
「…あぁぁ…んっ……」
もう、止められなかった。一度付いた欲望の炎は瀬戸口にはどうする事も出来なくて。ただ欲望のまま、自分の求めるままに指を身体中に滑らせる。
「いい眺めですね」
「…はぁ…あぁ…善…行……」
「もっとよく見せてください」
「―――あっ!」
脚を限界まで広げられ、自身よりももっと奥に息づく秘所が暴かれる。そこはひくひくと切なげに震えて、刺激を求めていた。
「こっちも、欲しがっていますよ…ほら」
「…あ――っ……」
前を触れていた指を善行は掴んで、後ろへと廻させた。そのまま指を入り口のラインになぞらせる。柔らかい刺激が瀬戸口にはもどかしい。
「…あぁ…くぅ…ん……」
善行の指が外され、瀬戸口は腰を少し浮かせた。そしてそのまま最奥に自らの指を突き入れる。善行の見ている前で。その視線に晒されながら。
「…くぁ…あぁ……」
くちゅくちゅと中を掻き乱す音が室内を埋める。脚を限界まで広げて、最奥の場所を曝け出し、そして。そして自らの指で中を掻き回して。それを。それを善行の目の前に見せ付けて。
「…はぁぁ…あぁ……」
「貴方もどうしようもない淫乱ですね。前に触れるよりも後ろの方が、感じるのですか?」
善行の言葉に瀬戸口は首を横に振った。けれども中を動かす指を止められない。胸を弄っていた指ですら、何時しか秘所の入り口の媚肉を辿るほどに。
「あぁ…はぁぁん…あ……」
自らの指で入り口を広げて、中の指の本数を増やす。ぐちゅぐちゅと掻き混ぜれば、そこからは分泌液がとろりと零れてきた。そして前も…先端からは先走りの雫が零れている。
「…あぁ…あぁん……」
「そのままイッてしまいなさい」
善行の言葉に瀬戸口は抗う事はもう出来なかった。痛い程に中の肉を抉って、そして。
「――――あああんっ!!」
―――そして瀬戸口は自らの欲望を吐き出した。
ぴちゃっと音がして、瀬戸口が吐き出した精液が飛び散る。彼の白い腹に、顔に、そして机の上にも。
「こんなに汚して…後で掃除しないといけませんねぇ」
机の上に散らばった精液を指で掬うと、そのまま瀬戸口の口の中へと突っ込んだ。ぺろぺろと瀬戸口はその指をただ舐めた。快楽に支配された身体は、思考すらも奪ってゆく。
「…ん…ふむぅ…んん……」
顔に掛かった液体も、善行は瀬戸口に舐めさせる。彼の口で、自らのモノを掃除させる。
「美味しいですか?貴方もしょうのない人だ…自分の出したものが美味しいなんて……」
「…ん…ふ…はふ……」
「じゃあ私のも…飲んでもらいましょうか?」
ジィーと金属音がして、善行のズボンのジッパーが外される。そこから充分に硬度を持ったソレが瀬戸口の前に向けられる。
「あ―――んぐっ!!」
髪を掴まれて、そのままソレが口中に突っ込まれた。指とは比べ物にならない大きさに、瀬戸口は咽かえる。けれども善行は決して許してはくれなかった。
「…んんんっ…ふぅっ…ん……」
髪を掴まれたまま、ソレを押し付けられる。喉の奥まで挿入されて、瀬戸口の瞳から涙が零れ落ちた。けれども中のソレは段々大きくなって、ただ瀬戸口を悩ませるだけだった。
「ちゃんと舌を使ってくださいね」
「…ふぅ…んんんん…んっ……」
この息苦しさから開放されるには、言われた通りにするしかなった。舌を使い、中の楔を舐めて開放を促す。歯を立てないようにしながら、何時も自分がされている事を思い出しながら。
「たっぷり味わってくださいね」
「―――っ!!!」
どくんっ!!と弾けた音がしたかと思うと、大量の精液が瀬戸口の口に吐き出される。飲み切れずにとろりと口許に液を伝わせながら。
「ダメですよちゃんと全部飲まないと」
「…あぁ…ふ……」
零れ落ちる液体も善行の指に掬われ、その全てを口に入れられる。それを夢中で瀬戸口は舐めた。美味しいとかそう言った感覚は何処にもなくて、ただ。ただ収まらない熱をどうにかしたくて。
「貴方の口はまだ足りないみたいですね」
「…あっ……」
再び脚を広げられて、息づく蕾を暴かれる。そこは刺激を求めてヒクついていた。そして果てた筈の瀬戸口自身も再び勃ち上がっている。
「下の口も、たっぷりと味わいたいんでしょうね」
「―――あんっ!」
入り口を指でなぞられ、そのままぷつりと入れられる。軽く中を掻き乱され、瀬戸口は仰け反って喘いだ。
「…あぁっ…ああんっ…善…行……」
欲しかった、刺激が。もっともっと欲しかった。こんな指じゃ足りない…もっと熱く硬いモノで中を掻き乱して欲しい……。
「いいですよたっぷりココで、私のを飲ませて上げますよ」
「―――ああああっ!!!」
指が引き抜かれたと思ったら、次の瞬間に指とは比べ物にならないモノが瀬戸口の中に入ってくる。ぐいっと腰を引かれて、中へ中へと侵入してくる。
「…あああっ…あぁ…あああっ!!」
やっと与えられた刺激に瀬戸口は、満足げに声を上げる。自分を押さえる事無く、激しい刺激に身を震わせながら。
「…善行…善…あぁぁぁ…あ……」
瀬戸口の手が善行の背中に廻り、腰を押し付けて刺激を求めた。深く中へと彼を取り込み、自ら腰を揺すって。
「…ああああっ…あぁ……」
接合部分がぐちゃぐちゃと淫らな音を立てている。それすらも、瀬戸口の快楽を煽るだけでしかなかった。もう何も考えられない。何も分からない。ただその熱い楔を追い求めるだけで。
「本当に貴方の中は最高ですよ。熱くて、きつくて…」
「…あああんっ…はぁ…ぁぁぁ……」
「このまま貫き殺してしないたいと思うほどに」
「…あぁぁ…善…行…あん…あんっ……」
「本当に貴方のココは、最高だ」
「―――ああああっ!!!」
ぐいっと最奥まで貫かれて、善行は瀬戸口の中に欲望を吐き出した。それと同時に瀬戸口の意識も真っ白になった……。
鍵が、掛けられる。
部屋に、身体に、心に。
見えない鍵が掛けられて。
そして、俺は。
俺は閉じ込められる。
お前の腕の中に、お前の中に。
―――俺は、閉じ込められる………
「誰にも渡さない」
抱きしめて、髪をそっと撫でて。
「貴方を、誰にも」
その栗色の髪に顔を埋めて。
「…貴方に…ずっと鍵を掛けて…閉じ込める……」
END