束縛

『私はこんなに嫉妬深い男だとは思いませんでしたよ』


そう言われて、いきなり口付けられて。そして抱きしめられて。俺は頭が真っ白になった。真っ白になったまま、それでもひとつだけ思った。ひとつ、だけ。

―――口付けられた時に当たった、ヒゲの感触を。

何時しかこの司令室が、二人の逢引の場所になっていた。ネクタイを外され、ワイシャツのボタンを外され、細い指先が滑り込んでくる。
「…善行…待っ…人が…来たら……」
胸を弄られながら、首筋に口付けられる。きつく吸われて、そこに痕が残るほどに。何時からだろう、こんな風に執拗にキスマークを付けられる事になったのは。
「誰も来ませんよ…それに鍵は掛けてあります。それでも心配ですか?」
「…はぁ…だけど……」
「今更ですよ、瀬戸口。ここでどれだけ私に泣かされたか…忘れた訳ではないでしょう?」
善行の言葉に瀬戸口は全身がかああっと朱に染まる。確かにそうなのだが、それを改めて言われればそれはただの羞恥でしかない。それでも善行は言葉を止めなかった。
「何時も貴方はそうだ。口では否定しながらも身体は」
「…あぁっ……」
「身体は、感じている」
胸元に滑り込んでいた手が、胸の突起を摘む。びくんっと肩が揺れて、面白いように瀬戸口は反応を寄越した。そうさせたのは善行だった。じっくりと彼の身体を開発して、そして快楽なしではいられないように、と。
「…あぁ…はぁぁ…善行…あん……」
胸を指で摘みながら、ぺろりと顎を舐めた。整った瀬戸口の輪郭は顎の角度がひどくシャープで、それが善行のお気に入りでもあった。
「…あぁ…ん…はぁ……」
胸を指で弄られ、空いている方の突起も口に含まれる。舌でちろちろと舐められて、耐えきれずに瀬戸口は手を机の上に付いた。何時も善行が執務をしているその机に。
「…あぁ…駄目だって…止めろ…あぁん……」
瀬戸口はここで抱かれる事に何時もひどく罪悪感を覚えている。二人が抱き合う場所などここ以外にありえないのに。それなのにどうしても瀬戸口の罪悪感は消えなかった。
「今止めたら貴方が辛いでしょう?」
耳の裏を舐められながら、そう囁かれた。それを否定する事は今の瀬戸口には出来なかった。口では否定を述べても身体が求めている。もっと深い快楽を。もっと、もっとと。
「…あぁ…善行……俺は……」
「俺、は?」
うっすらと睫毛が開いて、瀬戸口は善行を見つめた。快楽の為かうっすらと瞳が濡れている。それがひどく善行には魅惑的に感じた。
―――そのまま食らいついて、噛みきってしまいたいほどに……
「…ココが…イヤなんだ……」
「ココが?ああ執務室か…でもここ以外に私達がふたりでいられる場所はないでしょう?」
「…でも…ここは…学校で…そして…」
「そして?」
「…戦場…だから……」
「―――貴方も今更何を言っているんですか…何処へ行っても…戦場ですよ」
それ以上の言葉を塞ぐように善行は瀬戸口の唇を塞いだ。


堕ちてゆくのが、分かる。
何処までも堕ちてゆくのが。
抱かれて、犯されてそして。
そして何時しかそれを求めている自分が。
お前の腕を、指を、求めている俺が。

―――もう戻れない場所まで、きっと来ている……


「…ああんっ…あぁ…ソコは…あぁ……」
ズボンを下ろされ、下半身が剥き出しにされる。既に熱くなり始めた自身に、善行の指が絡まるとそのまま手のひらに包まれた。強弱をつけて握られると、それだけで瀬戸口の身体はぴくんぴくんと跳ねた。
「…あぁ…やあ…あぁ……」
「いい加減正直になりなさい…こんなになっているのに」
「…そんな事…言うな……あぁ……」
「本当に貴方は言葉で攻められるのが弱いですね」
「…違っ…はぁ……」
「嘘を言いなさい。もう先端からはイヤラシイ液体が零れてますよ」
「…あぁ…言うなよぉ…あぁぁ……」
イヤイヤと首を振りながら瀬戸口は押し寄せてくる快楽から逃れようとする。けれども執拗な善行の愛撫と言葉に、意識は溶かされていって。
「こんなにさせて…しょうがないですね」
「―――あっ!」
前の愛撫から開放されたかと思ったら、次の瞬間に指が最奥へと忍び込んでいた。前の愛撫で敏感になっていたソコは、ひくひくと切なげに震えながら善行の指を飲み込んでゆく。
―――ズプズプと…濡れた音を立てながら……
「…あぁっ…やあ…ダメだ…ソコは…ああっ!」
「何を言っているんですか…こんなに奥まで飲み込んでおいて」
「…止めろ…指…動かすなよぉ…あぁ…」
ぐちゅぐちゅと中を掻き乱す音。指の本数が増やされ、勝って気侭に中を掻き乱されて。もうどうにかなってしまいそうだった。
けれども瀬戸口は知っていた。この先にあるもっと深い快楽を。そしてそれは。それはこの目の前の男によって教え込まれたものだと。
「…あぁ…善行…もう…はぁぁぁ……」
「――もう、どうしたのですか?」
「…もお…ダメ…だ…変に…へんに…なるっ…ああっ…」
言葉通り瀬戸口自身の先端からは先走りの雫が零れている。このまま少し刺激を与えてやれば達するだろう。けれども善行は寸での所でその入り口を塞いだ。
「――!止めっ…塞ぐなっ……」
「駄目ですよ。貴方は堪え性がないから…しばらく我慢しなさい」
「ああっ!」
入り口を止めなれながらも、先端を指で弾かれる。それだけでも今の瀬戸口には、気が狂わんばかりの刺激だった。無意識に腰を振って、出口を…開放を求めてしまうほどに。
「いい眺めですよ…貴方の恥ずかしい所が丸見えで」
「…い、言うなよ…そんな事は……」
「ひくひくと震えていて…欲しがっていますよココは」
実際に今の瀬戸口の格好は冷静になれば物凄く恥ずかしい格好だった。執務室の机に両手を掛け、上着はボタンを外されぷくりと立ちあがった胸が覗いている。
脚は広げられ腰が浮いて、一番際奥の場所がこうして善行の前に暴かれていた。日の沈んでいないこの執務室で。そうして立ちあがった自身の先端を指で塞がれながらも、秘所の内壁は媚びるように蠢いている。
「…ぁぁ…ふっ…善行…もぉ…もぉ…許せよ……」
一番恥ずかしい場所が視線に犯されている。視姦されている。それだけで瀬戸口は反応し、じゅんっと秘所が蠢く。先端の雫も溢れそうだった。
「くすくす、見られているだけで感じましたか…本当…淫乱ですね、貴方は」
「…誰の…せいだよ…お前が…お前が…こうしたんだろうっ?!」
「―――そうですね、私のせいですね……」
涙目になって訴える瀬戸口に善行はひどく自虐的な笑みを浮かべて。そして。

―――そして瀬戸口の腰を掴むと、そのまま一気に貫いた。


手に入れたかった。
自分だけのものにしたかった。
誰にも渡したくなかった。
だから手に入れた。逃れないように。
逃がさないように深い快楽を刻んで。
この手から、決して。決して逃れないように。
この腕から、逃れないように。


「―――あああっ!!!」
貫かれた瞬間に、瀬戸口は善行の手のひらに欲望の証を注ぎ込んだ。真っ白な液体が手に飛び散る。それを善行は掬い取ると、そのまま瀬戸口の口に突っ込んだ。
「舐めなさい、貴方が出したものですよ」
「…んっ…ふむ……」
瀬戸口は言われた通りにその指を舐めた。もう何も分からなかった。貫かれた熱い塊が瀬戸口の秘所を攻め立てて、思考すらも奪っていったから。
「…ふ…はぁ…ああっ!!」
ある程度舐めた所で指が引き抜かれる。それと同時に中に収まっていた善行が激しく動き始めた。
「…あああっ…ああんっ…あぁぁっ!!」
がくがくと腰を揺さぶられ、机を持つ瀬戸口の手が強くなる。けれどもそれすらも無駄なほどに善行は激しく彼の中を貫いていった。深く、深く、捻じ込んでゆく。
「ク、相変わらずキツイですね」
「あああっんっ…あんっ…あああんっ!!」
再び立ちあがった瀬戸口自身に手をかけながら、善行は腰を進めてゆく。奥へ、奥へと。
―――このまま貫き殺せたらと、ふと思った。このまま貫いたまま、殺せたら。そうたら彼は自分だけのものになるのではないかと。自分だけの、ものに。
「…やぁぁっ…ああ…もお…駄目…ああああ……」
でも殺してしまったら、もう二度とこの身体を抱けない。もう二度とこんな顔を見る事が出来ない。もう、二度と。
「やっぱり駄目ですね…私は生きて貴方の全てを…手に入れたい……」
「――――あああああっ!!!」
どくんっと何かが弾けるような音がして、瀬戸口の中に熱い液体が注がれる。それを感じながら瀬戸口も善行の手のひらに欲望を吐き出した。


貴方を見ている人間は私だけではない。
こんなどす黒い欲望を持って、見ている人間を。
私は他に知っている。だからこそ。
だから、こそ。私は先に手に入れた。
奪われる前にこの手に。でも。でも『彼』は。

…何時しか私から、貴方を取り返しに来るかも…しれない…。


気を失ってしまった瀬戸口を抱きしめながら、善行は意識のないその唇にひとつ口付ける。柔らかい感触が何よりも切なく感じられた。そして何よりも愛しく感じられた。
「―――愛していますよ…と言ったら…貴方は信じるでしょうか?……」
こころの中でずっと呟いていた言葉。決して声に出して言った事はなかったけれど。いや言ってはいけないのだ。そうしてしまったらこの関係は全て破綻してしまうのだから。
「身体と心、両方欲しいと思うのは贅沢なのでしょうかね…」
そう呟いて善行は目を閉じた。これ以上呟きは虚しいだけでしかなかったから。ただ今は。今は奪われる前に手に入れた彼をただ。ただ繋ぎとめておくしかなかったのだから。



―――がんじがらめに束縛して逃れられないように……



END

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