伝えたい気持ち

一緒にいられるだけで、しあわせとか。
そう言う気持ちって…気持ちって大事だよな。
小さな気持ちの積み重ねが、こうやって。
こうやっと降り積もって、そして。
そしてそっと、伝えることが大事だよって。


―――真っ直ぐに、伝えたい気持ち。それが大事だから。



こうやって隣に座っているだけでどきどきする自分が、ちょっとお子様っぽくて嫌だと自己嫌悪に落ちてしまいそうになる。でも。でもそう思わずにはいられない程、俺にはカッコ良く見えるから。
「―――どうした?」
隣に座って穴が開くほど見ていたせいか、少し怪訝そうに言われてしまった。俺はそんな先輩に耳まで真っ赤になりながら意味不明にこくこくと頷いてしまった。
「あ、いやーその…」
真っ直ぐに俺を見る先輩の蒼い瞳。物凄く綺麗で、綺麗でどきどきしてしまう。こうやって反らされる事なく真っ直ぐに見つめられる、と。
「うん?」
普段は帽子に隠れていて、見えない瞳だけど。こうやって間近で見つめあえば。こんなし近距離で、見つめれば。
「…先輩…そのカッコイイです」
ぽろりと、零れた本音。言ってみてから、俺の方が驚いた。幾ら普段から考えているからって、こんなにも。こんなにもあっさりと出てきてしまった事に。
…って先輩…気、悪くしないかな?……
「……お前は………」
怖くてぎゅっと目を瞑ってしまった。先輩がどんな顔でその台詞を言っているのか考えるのも…怖かったから。でも。
「あ、あの俺何言って…」
でもそっと。そっと先輩の大きな手が。大きな手が、俺の頬を包みこんで。そして。
「直球だな」
そしてそっと目を開けたら。間近に…本当に近くに先輩の顔が、あって。あった、から。
「…はい…でも先輩カッコイイです」
なんか少しだけ勇気が出た。想っている事をちゃんと言ったから。そんな俺に先輩はくすりとひとつ微笑って。


「悪くないな、お前に言われるのは」


と言って、そっと。そっと俺を抱きしめてくれた。
暖かくて広い、その腕で。俺を、抱きしめてくれたから。


―――伝えたい気持ち。
何時も思っている事。
思っていて、けれども。
けれども、言えない事。
何時も喉の前で止まってしまう言葉。
でも今、こうして。
こうして少しずつ、告げるから。

少しずつ、想いを伝えるから。


「…先輩の腕…暖かい、です…」
「――お前を抱きしめているからな」
「……あ、あの……」
「どうした?」
「…あ、それは…その俺がガキみたいに体温が高いって事…ですか?」
「それもあるな」
「〜〜ひ、ひどいです先輩っ!」
「でも、それだけじゃないだろう?」


「―――お前の身体が、熱いのは」


両手で頬を包まれると、そのまま顔を上げさせられた。間近に先輩の顔が、あって。そしてそんな顔にぼーっと見惚れているうちに、額がこつんと、重なった。
「…先輩…その…あの…」
「顔が、真っ赤だ」
「〜〜〜」
言われた通りだったから反論が出来なかった。俺、きっと今耳まで真っ赤になっている。だって自分でも顔がかああって熱いのが、分かるから。
「こうしたらもっと…なるかな?」
「―――え?……」
俺がその言葉の疑問符を投げかける前に。その、前に。そっと唇が、塞がれた。


「…あ…あの…あの…その…」
「甘い、な」
「…せ、先輩…その…」
「お前の唇は、甘いな」


そっと微笑う、その顔が。柔らかく微笑う、その瞳が。
物凄く綺麗で、物凄くカッコ良くて、俺は。俺はただ。
ただずっと、先輩に見惚れていた。


伝えたい気持ち。伝えたい、想い。
口にしなくても、伝わるかもしれない。
口にしなくても、分かってくれるかもしれない。
けれどもやっぱり。やっぱり、この口で。
ちゃんと、伝えなくちゃいけない想い、だから。


「…せ、先輩…俺……」
ちゃんと、伝えないといけない想いだから。
「何だ?」
ただひとつの、想いだから。


「…先輩が…好きです……」


耐えきれずに俯き、そして黙ってしまった俺に。
そんな俺の頬にもう一度。もう一度、その手が。
その手が、俺に、触れて。そして。
そして、真っ直ぐに瞳が、視線が、あって。



「―――俺も、だ……」



伝えたい、気持ち。ただひとつの、気持ち。
しあわせだと、想う気持ち。大好きだと想う気持ち。
そっと降り積もり、そして積み重なって。
ただひとつの、大切な想いになって。



「お前が、好きだ」


ゆっくりと、ふたりのこころに、ふりつもる。



END

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