永遠なんてないと、知っていても。
それでも願うのは『永遠』で。
変わることのないもの。変わらない、もの。
それをずっと。ずっと、願っていた。
―――永遠なんてないと、知っていても……
冷たくなった身体を抱きしめて、そして声を上げて泣いた。僕がこの手で、殺したのに。
「―――狩谷……」
ぽたり、ぽたりと。頬から零れ落ちる涙が君の頬を滑ってゆく。白い陶器のような頬に。でもそれは留まる事無く、流れてゆくだけだった。
「…狩谷…狩谷……」
殺したのは、僕なのに。この手で、この指で。君の首に手をかけ、そして。そしてきつく締め付けたのに。なのにどうして僕は。
―――僕はこんなにも…泣いているの?……
永遠だと、信じていた。
違う、信じたかった。
君と僕の中にあるものは。
君と僕が繋がっているものは。
永遠だって、そう。
そう、ずっと信じたかった。
――――繋がっている指先は…離れる事はないのだと……
本当は全て、知っていた。
『ねえ、速水』
君の運命を、僕の運命を。
『僕があしき夢に捕らわれたら』
ふたりの結び合う運命の意味を。
『その時は、殺してね』
僕等が惹かれあったのは、殺し合う為なのだと。
『…君が…殺してね…』
それでも。それでも僕は、君を愛している。
真っ白な翼が背中に見えて、ふわりと君が空を飛んだ。その瞬間君は俗世と言う抜け殻を全て捨てて、一番綺麗な場所へと飛び立って行った。
―――もう二度と、僕の手の届かない場所へと……
「…狩谷…狩谷……」
―――君といる未来を、望んだけど……
「…どうして…抵抗しなかった?……」
―――わずかな希望でそれを望んだけれど……
「…どうして…抵抗…しなかった?……」
―――やっぱり運命には勝てなかったね……
僕は君が『HERO』になる為の捨て駒。
君が選ばれし者になる為の、捨て駒。
それでも、いいんだ。それでも、よかった。
―――君が綺麗な道を、歩めるのならば……
でも、それでも。結ばれし糸と、絡まった指が。
違う場所へとふたりを運ぶ。ふたりのこころを運ぶ。
ただ殺されるだけの存在ならよかった。
ただ殺すだけの存在ならよかった。
それだけならこんなにも。こんなにも僕等は苦しくはなかった。
…ねぇ…速水…どうして僕等は…愛なんて…持ってしまったんだろう……
永遠を、願った。
君といる未来を願った。
君と共にいる事を。
君が存在する事を。
君が隣に、いる事を。
―――僕は永遠を、願った……
「狩谷、好きだよ」
ずっとともにいたかった。ずっとずっと、ずっと。
「…君が誰よりも……」
永遠を願って、永遠を望んで。
「…誰よりも…愛しているよ……」
永遠なんてないと、知っていても。
この大きな運命の流れの中では、僕等はあまりにもちっぽけだ。
君の冷たい唇に口付けて。
君の冷たい頬に手を当てて。
君の冷たい指先を包み込んで。
―――そして、君を……
永遠が叶わないのなら、このまま全てがなくなってしまえばいいと思った。
END