―――ずっと、雨のしずくに濡れていた。

頭上から降って来る細かい雨と。
零れ落ちる、雫。その雫を、ずっと。
ずっと、僕は見ていた。



傘を差そうと言う事すら、忘れていた。ただ降り続ける雨を見上げながら、その雫を全身で浴びていた。
「―――狩谷、風邪を引くよ」
その言葉に初めて。初めて自分以外の存在に気が付いた。そこには、僕と同じように傘も差さずに立っている君がいた。
「…速水…君も……」
互いに濡れ鼠になりながら、それでも見つめ合って微笑った。軽く微笑っただけだったけれど。けれどもそれだけで充分だった。
「君が濡れてるから、僕も濡れる」
手か伸びてきて頬に触れる。雨に濡れて冷たいはずなのに、暖かい手だった。とても暖かな手、だった。
「…うん……」
触れ合っている個所の熱だけが、全てになって。全てになったから。


―――僕は降っている雨すらも、忘れた。



瞬きをすれば零れ落ちる雫。それはまるで涙のよう、だった。
「眼鏡、外してもいい?」
聴かれた言葉に僕は小さく頷いた。君の指先が僕の眼鏡を外す。そうする事で視界はぼやけたけれども、間近にある君の顔だけははっきりと見る事が出来た。
「泣いているみたいだよ、これ」
頬にそっと手が伸びて、そこに伝う雫を指先で絡め取る。ぽたりと、零れ落ちる雫を。
「泣いていたかも、しれないよ」
「君が言うと、本当に聴こえるから…イヤだな」
くすくすと微笑う、君。綺麗な君。眩しい君。僕には手を伸ばしても届かないひと。だから。だから君から僕に手を差し出してくれなければ、永遠に届かないひと。
「…速水……」
名前を呼べば君はにっこりと微笑う。ぼやける視界の中で、君の笑顔だけが鮮やかに。鮮やかに僕の瞳に焼き付いて。
「そんな顔して僕の名前を呼ぶと…このまま襲っちゃうよ」
冗談とも本気ともつかない君の言葉に、僕はそっと微笑った。このまま。このまま君に襲われてもいいよって、呟きながら。


一方的に傷つくのは僕だけだって分かっている。
君は決して傷つきはしない。君は誰にも傷つけることは出来ない。
それでも僕は。僕は君に近付かずにはいられない。
君に捕らわれずには、いられない。君に、捕らわれずには。

―――きっとこれが好きだって言う事なんだろうね……


濡れたシャツを掻き分けるように、君の手が僕の服の下に忍び込む。冷えた身体にその手が、触れる。触れた個所だけが、じわりと熱を帯びてくる。
「…ふっ…はっ……」
探り当てるように指が、胸の果実に触れた。それだけで敏感な俺の身体はぴくりっと跳ねる。指の腹で転がされて、ぎゅっと摘まれて。そして、爪を立てられる。
「…はぁっ…あぁ……」
濡れて張りつくシャツがもどかしかった。それがなければじかに、君を感じられるのにと思った。君を、感じられるのにと。
「…あぁ…はふ……」
「―――狩谷、僕を見て」
その言葉にのろのろと目を開ければ、真っ直ぐに僕を見つめる瞳。大きくて綺麗な、その瞳。
「…速…水っ……」
見つめた。君を、見つめた。君だけを、見つめた。この瞳にこれから先映るのは、きっと。きっと君だけ。君だけなんだろう。
「…ん…んん……」
自分から君の背中に腕を廻し、そしてキスをした。唇を開き自分から、舌を絡める。雨が頭上から零れてきて、僕の口から零れる唾液と混じりあった。交じり合った液体がぽたぽたと、零れてゆく。
「…はぁっ…ぁ……」
君に捕らわれてゆく。君に絡め取られてゆく。身体も、こころも、魂も。それは逃れられない絶対的な、吸引力で。
―――僕は君に、捕らわれてゆく……
「…あっ…速水…それ以上は……」
君の手が僕のズボンのベルトに掛かり、そのまま外され下着事ズボンを降ろされた。剥き出しにされる下半身。下界に曝け出されて、僕はぶるっと震えた。
「どうして?もうこんなになってるのに」
「…あっ!……」
指が僕自身に、触れる。僕が動けないことをいい事に勝手気ままに、僕をいたぶる指。でも。でも、それが。
「…あぁ…あっ…はっ……」
どくんどくんと、自身が脈打っているのが分かる。耳元に嫌になるほどに、届く音。それがより一層羞恥心を煽り、僕の快楽を増殖させてゆく。
「…誰か…来たら…どうするっ…あっ……」
人気のない校舎裏。雨の中こんな場所に来るのは君と僕のような酔狂な奴しかいないけれど。それでも。
「いいよ、見られても。別に君が僕のものだって…見せ付けるだけだもの」
指が僕自身の形を辿り、先端から零れ始めた雫を掬い上げた。そのまま割れ目に指を突き立てて、かりりと引っ掻けば。引っ掻いたら。
「―――あああんっ!!」
僕は耐えきれずに、君の手の中に射精、した。


「…速水…あっ……」
脚を持ち上げられる。車椅子の上から、不自然な形に持ち上げられて。そのまま君の肩に乗せられて。
「ちゃんと、僕に掴まっててね」
そのまま君は自らのズボンのファスナーだけを下ろして、自身を取り出した。充分に硬度を持った、ソレを。
「…速…水…っ…あ…待っ……」
入り口に当たる硬くて熱いモノに、僕はゾクリと震えた。そして、ゆっくりと僕の中にソレが入って来た……。


細かい雨が、降り続ける。二人の間に、降り続ける。
「…あああっ…ああああ……」
雨は冷たくて、ふたりの身体を凍えさせるけれども。けれども。
「…ああっ…ああ…速水っ…ああんっ…」
けれども繋がった個所は焼けるほどに熱い。蕩けるほどに、熱い。
「…速っ…水…あああっ……」
全てが、溶けてしまうほどに…熱い……。



目尻から零れ落ちる雫は、雨なのか?快楽の涙なのか?それとももっと別のものだろうか?



「…狩谷…君の涙は……」
「…速水……」
「…僕だけの…ものだよ……」


「…この雨にも…渡さない……」


触れる、舌。熱い涙に触れる、舌。
それがひどく優しくて。優しく、て。



君の鼓動だけが、聴こえる。君の声だけが、聴こえる。
何時しか僕の耳には降り続けている雨の音すら、遠くに。
―――遠くに、なって。



「…僕だけのもの…だよ……」




…君の声だけが、僕の『音』の全てになって……



END

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