LOVE BRACE

君のまっすぐな、気持ち。

反らされる事のない瞳に、突き刺さるような気持ち。
剥き出しの、想い。そこには駆け引きも飾りも何もない。
ただひとつ。ひとつだけの、綺麗な想い。
何時しかこの想いが、何よりも心地よいものになっていった。


「遠坂の目って、綺麗だね」

自分の言った言葉に思わず苦笑してしまった。あまりにも僕が言う言葉には相応しくないから。あまりにも僕らしくない言葉だから。君を誉める事事態僕はなくて。何時も、何時も君に言葉を与えられるばかりだった。君の言葉の雨を降り注がれるだけで。

「貴方の方が、綺麗ですよ」

伸ばした手が、君の髪に触れる。さらさらの長い髪。指を擦り抜けるのがイヤで、ぎゅっと掴んでみた。すると君の形のいい眉が少しだけ歪む。けれども優しい君は何時も。何時も僕のしたいようにさせてくれる。多少痛がろうとも、僕の手を離すような事はしない。

「何を子供みたいな事を」

そう言っても君は僕を決して責めはしない。苦笑しながらもその瞳は何処までも優しい。君は僕がどんな事をしてもそうした瞳で僕を見てくれる。
僕がどんなに我が侭を言っても。僕がどんなに皮肉を言っても。僕がどんなに自虐的になっても。
そっと大きな手が僕の頬を包み込んで。包み込んで、そして。そして何よりも優しい顔で微笑んで。
――――僕を包み込んで、くれる……


独りが、好き。誰も僕を傷つけないから。誰も僕を裏切らないから。
だから独りが、好き。自分の世界に閉じこもっていれば、誰も僕を殺しはしない。
独りが、嫌い。誰も僕を見てくれないから。誰も僕を見つめてはくれないから。
だから独りが、嫌い。自分の世界に閉じ込められて、社会から抹殺されてしまうから。

僕は弱いから、救いの手を求めずにはいられない。
全てを否定して、全てから絶望しながらも。
本当は誰かが手を差し伸べてくれる事を何よりも望んでいたんだ。


「子供っぽいか?」
「ええ。でもそんな貴方も大好きですよ」
「どんな僕でも?」
「ええ、どんな貴方でも。貴方なら僕は恋をします」
「人間でなくても?」
「はい、貴方に恋をします」


バカなヤツと言ったら、君は嬉しそうに笑った。バカだと言われて喜ぶなんて変なヤツだ。変だけど…でも…。
…でもそんな君を好きな僕は…もっと変なのかもしれない……
変、かな?変でも、いいよ。僕は君が好きなんだ。君だけが僕に気付いてくれた、とか。君だけが僕を救ってくれた、とか。そう言う事じゃない。君が僕の孤独に気付いてくれたからじゃない。それだけだったならこんなにも僕は君を好きになったりしないから。
―――こんなに君を好きになったりしない。


「恋する男は何時でもバカなんですよ」
大きな手が伸びて眼鏡が外される。そうしてそのまま僕にキスをした。何時も君が与えてくれるキスは優しく甘い。瞼が震えて、こころから蕩けそうなキス。不思議だった。どんな女の子とキスをしてもこんな風にならなかったのに、君から与えられるものは全て。全て甘く、優しくて。
「…うん、バカ…遠坂のバカ……」
唇が離れて零れる言葉は、やっぱり素直じゃないものばかりだけど。それでも君は相変わらず微笑っている。そしてやっぱり僕は、この顔がどうしようもない程に好きなんだ。
「…でも……」

「…でも…好きだよ……」


孤独の羽。折れた翼。
空に飛び立つ前に無残に折れた僕の翼。
空に飛ぶ事はもう二度と出来ない。
地上を歩く事ももう二度と出来ない。
でも翼をなくしても、脚をなくしても。
僕は他に手に入れたものがあるのだから。

―――こうして、手に入れたものが………


睫毛が触れるくらいに、傍にいて欲しい。
「貴方からそんな言葉を聴けるとは思いませんでした」
吐息が分かるくらいに、傍にいたい。
「―――君からばかり…言わせているから……」
胸の鼓動が重なり合うくらいに。頬が触れ合うくらいに。
「貴方が言ってくれるなら…僕は何度でも言いますよ」
君の近くに。君の傍に。君の隣に、いたい。
「貴方が好きだって」


ねえ、遠坂。君がね。
君が真っ直ぐに僕を見てくれたから。
僕の脚がどうとか関係なしに。
―――皆と同じ目で、ね。
僕初めて言葉を交わした時、君だけが。
君だけが僕の顔を反らさずに見てくれたんだ。
皆真っ先に、僕の脚を、車椅子を見るけれど。
君だけは僕の顔を、真っ直ぐに見てくれたんだ。

…決して君にも言わないけど…僕は涙が出るほど…嬉しかったんだ……


僕は手を伸ばして、君の背中に抱き付いた。それを感じながら君は、僕をそっと抱き上げる。遠い空に少しだけ近付く瞬間。ひどく心地よい、瞬間。
「このまま貴方を抱いたまま遠い所に逃げてしまいたい気分です」
唇が僕の髪に、触れる。その顔が嬉しそうに笑っている。釣られて僕も笑ってしまう程に。
「君なら本気でやってしまいそうで、怖いよ」
「貴方が望むなら、本当にしますよ」
君の言葉に僕はぎゅっと髪を引っ張った。やっぱり眉を顰めたけど、僕の行為を否定したりしない。
「そんな事、言うなよ。本当に」
「はい?」

「…本当に…僕は望んでしまうかも…しれないから……」


少しだけ困った顔を君はして、そして少しだけ僕の身体を強く抱いた。ぎゅっと、僕を抱きしめた。
「貴方が本気で望めば、僕はどんな事でも叶えてあげるのに…あえて望まないのですね」
「…君と対等でいたいから……」
君の言いたい事は、君の思っていることは、口にしなくても分かっている。うん、分かっているよ。でもそれだけじゃダメなんだ。僕自身がダメになるから。
「―――やっぱり貴方はそう言うんですね。でも少しくらいは」
「うん?」
「…少しくらいは…甘えて…くださいね」
「……うん………」
君の言葉に僕は小さく頷いた。少しだけ、頬を染めながら。


君の鼓動を感じる為にそっと目を閉じた。
耳元から聴こえてくるとくんとくんと言う甘やかな音に。
僕はゆっくりと全てを預けた。
こんな風に甘えるのは…いいよね…と、心の中で呟きながら。


END

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