Never Ever

―――貴方をこの腕の中に、閉じ込める方法。

どうしたら、それが出来るか僕はずっと考えていた。
歩けない貴方の脚に鎖を付けて閉じ込めてしまおうか?
それとも貴方の細い首に首輪を付けて繋いでしまおうか?
貴方の綺麗な睫毛を見つめるたびに、僕は絶えられない衝動に駆られる。

――――貴方だけを、愛しています。


腕の中に、抱いて。きつく抱きしめても。貴方の瞳は何処か遠くを見つめている。その瞳の先が知りたくて、そして知りたくなくて、口付けをして視線を閉じ込める。
「…遠坂……」
全てを奪うような口付けで、貴方の吐息を奪う。全て、全て、奪ってしまいたい。
「―――どうしたら……」
滑らかな頬に触れる。白い頬。陶器のような頬。貴方はあまり外に出ない。何時も室内にいるせいか、肌が透けるように白い。
―――それはきっと。きっと貴方が、脚が歩けないから……
「どうしたら貴方は僕だけのものになってくれますか?」
光の下で何の屈託もなく歩く人々に、何処か貴方は嫉妬をし。そして何処か苦しさを見ていたのだから。
「…君だけの…ものじゃないのか?……」
「本当にそうだったらいいのに」
強く、抱きしめた。細い肩。小さな身体。貴方は見掛けよりもずっと細い。この腕にすっぽりと閉じ込められてしまうくらいに。
「僕だけの貴方でいてくれたら…いいのに……」
けれども貴方の瞳は遠くを、見ている。


閉じ込めたい。誰にも見せたくない。
僕だけの貴方にしたい。
口付けて、舌を噛み切って、そして。
そして全ての血を飲み干したなら。

そうしたら貴方は僕だけのものになるのだろうか?


ワイシャツのボタンを外して、その中に手を滑り込ませた。滑らかでそして何処か陶器のような冷たさを感じる肌。ひんやりとしたその素肌に手を触れて、ゆっくりと熱を灯してゆく。
「…遠坂…あっ……」
胸の飾りを指先で弄りながら、鎖骨にきつく口付けた。紅い痕を残して、そして確認する。貴方が僕のものだと。僕だけのもの、だと。
「…はぁ…あ……」
鎖骨から胸へと唇を移し、身体中に紅い痕を残した。何度も何度も肌に口付け、余すところなく貴方を僕で埋めて。誰にも見せないように、誰に見られてもいいように。
―――貴方の全てを、僕で埋める……


好きです、愛しています。
幾らでも言葉に告げられるのに。
言葉では幾らでも、告げられるのに。
この胸の想いの半分も伝えきれていない。
この想いの全てを伝える事など。

―――伝える事など…出来るのだろうか?……


甘い、息。唇から零れるのは、甘く切ない息だけ。そして途切れ途切れに僕の名前を呼ぶ唇。
「…貴方だけを、愛しています……」
抱きしめて、きつく抱きしめて。全ての息を奪うように激しく口付けた。その間も指は貴方の身体を駆け巡り弱い部分を攻め立てる。
「…んっ…んん…ふぅっ…ん……」
僕にとって貴方と言う存在を全て知れるように。触れられる個所は全て指先で記憶出来るように。触れていなくても、貴方の感触だけは憶えているように。
「…はぁっ…ふ…む……」
髪を撫でて、舌を絡めて。目尻から伝う涙の雫を指で受け止めて。貴方の全てを受け止めて。
「…遠…坂……」
唇が離れて見上げるその瞳は、何処か。何処かひどく淋しげで。その淋しさを埋めたくて、僕は貴方の身体を貫いた。


どうしてこんなにも貴方に惹かれるのか。
どうしてこんなにも貴方が欲しいのか。
どうしてこんなにも…貴方だけが、欲しいのか……。
その答えを導き出す事などきっと出来ないのだろう。
考える前に求めたのは、こころ。
導き出す前に求めたのは、魂。
自分の『思考』の及び付かない場所で、僕は。

―――僕はただ独り、貴方を求めた……


爪が、背中に食い込む。きつく、食い込んでそこから血が流れた。ぽたりと、流れた。
「…あぁっ…あああっ!……」
媚肉を掻き分け最奥を突き上げる。そのたびに貴方の淫らなソコはぎゅっと僕自身を締め付けた。
「…あああ…あぁ…ん…はぁぁ……」
焼けるほどに熱くて。重ねあう身体は、熱くて。触れ合う鼓動は、激しくて。喘ぐ声も、零れる汗も、全て。全て今この瞬間は自分だけのものなのに。
―――どうして、全てを埋められないのか?
幾ら抱いても、幾ら抱きしめても。遠い瞳も、淋しげな瞳も、消えないから。消せないから。こんなにも僕で貴方を埋め尽くしても。全てを満たしても。
「―――ああああっ!!!」
―――どうして貴方は、遠いの?


このまま、貴方を食べたいと想った。
僕の中に貴方を全て取り込んだなら。
そうしたら、淋しい瞳も遠い瞳も。
壊れたこころも、刻まれた傷も。
全て全てひとつになれるのに。

―――貴方とひとつに、なれるのに……



このまま死にたいなと、想った。
君に抱かれて、君の腕の中で。
死んでしまいたいと、想った。

そうしたら淋しくないから。


どうして、足りないのかな?なんで足りないのかな?
幾ら君が僕を満たしてくれても。君が僕を埋めてくれても。
どうして、どうして、満たされないの?
与えられれば与えられるほど、もっと。もっとと。
君が欲しくなる。どんどん欲しくなる。

差し出されたもの全てを奪っても、足りないのはどうして?


セックスは好き。君としている時が一番好き。
君のキスが、好き。君の愛撫が、好き。全部、好き。
だってこの瞬間が一番満たされているから。

セックスは嫌い。君としている時が一番嫌い。
君のキスが、嫌い。君の愛撫が、嫌い。全部、嫌い。
だってこの瞬間が一番淋しいから。


ずっと繋がっていられればしあわせ。
ずっと交じり合っていればしあわせ。

でも離れた瞬間に、僕の心はどうしようもない空洞と。
そしてどうしようもない淋しさが襲ってくるんだ。


―――どうして、ひとつになれないの?



「…遠坂…このまま……」
「…夏樹……」
「…このまま…死にたい……」


「……繋がったまま…死にたいな……」


でもそれは実行される事はないのだろう。
それ以上の渇望がふたりにはある限り。
まだそれ以上に求めるものがある限り。

―――それ以上欲しいものが、ある限り。




…僕等が永遠に淋しくて、そして永遠に追い続ける限り……



END

 HOME  BACK 

  プロフィール  PR:無料HP  合宿免許  請求書買取 口コミ 埼玉  製菓 専門学校  夏タイヤを格安ゲット  タイヤ 価格  タイヤ 小型セダン  建築監督 専門学校  テールレンズ  水晶アクセの専門ショップ  保育士 短期大学  トリプルエー投資顧問   中古タイヤ 札幌  バイアグラ 評判