左回りの時計/CHAIN

左回りの時計



―――時間なんて、いらないと…思った……


逆に廻る時計が欲しいと思った。針を逆回転させる時計が欲しいなって、思った。そうしたら、もっと。もっと昔のお前を…お前の全部を見られると思ったから。

口付けは何時も切なさを伴い、そして。そして零れるのはただひとつの涙。


ただずっとここにいて、お前を待っている事が俺の全てになっていた。待つと言う行為は嫌いじゃない。お前に関してだけは嫌じゃない。帰って来る事が…分かるから。お前はどんなになろうとも、ここへと帰ってくる事が分かっているから。
だから待っている。ずっとお前を、待っている。それだけが、俺の全て。


足音がして、そして扉が開かれる音。
俺はよつんばえのまま、首輪も鎖もそのままに。
そのままに猫のようにお前の傍へとゆく。


「お帰りなさい」
ずっと猫になりたいと思っていた。そうしたらずっとお前は俺を閉じこめてくれると思ったから。俺が逃げないように、閉じ込めてくれると。
「―――瀬戸口……」
大きな手が伸びて来て、俺の頬に触れる。その手がひんやりと冷たい。きっと外の空気もこんなに冷たいんだろうね。冷たいなら俺が…お前を暖めてやりたい。
ぺろりと、お前の手を舐めた。やっぱり、冷たい。それが嫌で何度も俺はその手を舐めた。
「もういい」
手を口から引き剥がす。それだけでどうしようもない淋しさが俺を包みこむ。離さないで、と。ただそれだけを思った。
「…来須……」
お前が着けてくれた、首輪。そして手足の鎖。俺が望んだもの。俺がお前に望んだもの。縛り付けて永遠に、閉じ込められる事。それが、望み。それだけが、望み。
「―――他人の匂い…しないよね……」
手を伸ばしてお前の身体に抱きついた。そののもつれ合うようにその場に倒れこむ。フローリングの床は素肌にはひんやりと冷たかった。
「俺以外の匂い、付けないで」
髪に顔を埋めて、指で背中を辿って。唇を首筋に這わして。そして感じるお前だけの薫り。そこに少しでも他人の匂いが混ざってはいないかと…それだけを確認して。
「今日、速水に言われた」
指先が、辿る。お前の服のボタンを外して、その素肌に触れて。外の空気で冷たくなっているお前の肌に、そっと触れて。触れてその筋肉を辿って。
「何て?」
耳たぶを噛みながら、お前の言葉を聴いた。小さな傷がお前にはたくさんある。それは戦闘で傷つけられた傷と…そして俺が噛んだ痕。
「―――背中に『猫』の毛が…付いていると……」
俺だけのものだと見せつけたいから、何時も。何時も消えない傷を俺はお前に付ける。



『お前の猫に、なりたい』
深い紫色の瞳。夜に溶ける紫色の瞳。俺にしか見せないその瞳。
『首輪を付けられて、鎖に繋がれて…そして閉じ込めて』
他の全ての人間に対して鏡のような瞳をするお前が唯一。唯一感情を剥き出しにするのが。
『そうしたら俺…もうこんな事しないよ…』
剥き出しにするのが俺だけだと気付いたその瞬間に。

――――それ以外の方法を…思い付かなかった……

言われた通りに首に手足に鎖を掛けて、そして。そして閉じ込めた。
歪んだ時計が刻む時の中に、こうして。こうして俺が閉じ込める。
それがお前をここまでにしてしてしまった俺の責任。俺の、贖罪。


俺が閉じ込めなければまた、お前は。お前はどうでもいい男達に身体を開くだろう。そうして自分をぽろぽろにし続ける事でしか、俺を繋ぎ止める方法を考えられないのならば。



「―――背中、冷たいだろう?」
そのまま腕を引いて、身体を起した。カシャンと音とともに床に鎖が落ちる。乾いた音だと、思った。乾ききった音だと。でもお前の瞳はそれとは正反対に濡れている。夜に、濡れている。
「…優しいね、お前は…何時も優しい…その優しさが俺を何時も……」
「傷つけていた、そう言いたいんだろう?」
その言葉にお前は微笑う。何よりも綺麗に、微笑う。この顔も俺にしか向けない。俺の前でしか…お前は本気で微笑わない。
「そうだよ、何時もその優しさだけが俺を傷つけるんだ」
髪に絡まる指。唇は首筋から離れない。俺が起き上がりそしてその場に立てば、お前は俺に絡み付いてくる。一瞬でも離れたくないと…無言で告げている。
「お前以外誰も、俺を傷つけることなんて出来ないよ」
腰に手を廻してそのまま引き寄せた。細い身体。お前は『食べる』と言う事にひどく無関心だった。物を食べるという行為に欲を見出せないお前。眠ることですらお前にとっては大して必要なものではなく、唯一お前が自分の『欲』を満たす行為は。

――――行為はこうして身体を…重ねることだけ……


「優しいのは、嫌か?」
「お前は誰にでも優しい。だから嫌だ」
「―――冷たくして欲しいのか?」
「俺だけに冷たいのならば」


「優しいお前が、俺だけを残酷に扱うのが…怖いくらいに、しあわせ」


紅い唇が、微笑む。俺にだけ見せるその淫蕩な表情。
俺にだけに見せる、しあわせな笑顔。俺にだけに見せる、切ない瞳。
どれもこれも全てがお前の真実で。お前だけの、真実で。


「好きだから、何されてもいいんだ」
「どんな事でもか?」
「どんな事でも。お前のためなら何でもするよ。何でも出来る」
「―――それは嘘だ」
「…どうして?」
「お前には…絶対に出来ない事がひとつあるから」
「…分かっているね……」


それを言った所でどうにもならない事は俺とお前は分かっている。
その先の言葉を告げた所で、決して。決してどうにもならない事が。


カシャンっと音とともに、お前の身体を壁に押し付けた。冷たい、コンクリートの壁に。そしてそのまま背中から抱きしめる。
「…来須…っ……」
剥き出しになった胸に指を這わせた。お前に服は着せなかった。着たら逃げるよと言ったから、着せなかった。そうして欲しいとお前の瞳が、言っていたから。
「…あぁっ…ん……」
首の付け根に唇を落とし、尖った胸をいたぶる。わざと乱暴な動作でソレを摘まんでやれば、白い肢体はぴくんっと跳ねた。
「…はぁぁっ…あぁっ……」
首の付け根から背筋へと舌を滑らせる。指は胸の突起を弄ったままで。白い身体が唇を落としてゆくたびに、少しずつ朱に染まってゆく。
「…来須っ…はぁぁっ……」
胸を押し付けて、刺激を求める身体。ほんのりと汗ばみ、お前の匂いがした。お前の、匂い。ひどく雄を揺さぶるその匂い。
ぺたりと手を壁に付いて、お前はその刺激に必死に耐えた。俺の唇が舌へと滑ってゆくたびに、がくがくと震える脚を堪えながら。そのたびに振動する鎖に乾いた音を立たせながら。
「…あぁっ…あっ!…」
舌がお前の秘所に触れた。突き出した腰を抱え、そのまま媚肉の奥へと舌を滑らせる。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながら、ソコを舐めてやった。濡れぼそる秘所を何度も何度も。
「…あぁん…はぁ…ん……」
耐えきれない手がずるずると壁から落ちてくる。お前の身体が床に落ちる前に、俺は一端動きを止めた。その瞬間刺激をなくした媚肉がひくんと蠢いたが、そのままにした。
「…来…須…っ……」
振り返る瞳が、止めるなと言っている。その瞳に答える変わりにひとつ口付けて、そのまま身体を引き上げた。後ろ向きのまま、もう一度抱きしめる。
「―――後ろだけで、イケるか?」
耳元で囁く言葉にお前はこくこくと頷いた。そんなお前の髪を一度撫でてやって、俺は自らのズボンのジッパーを降ろした。それを感じたお前の手が、俺自身に絡んでくる。
「…来須…俺……」
淫らに辿る指先。どんな事でも俺のためならばするとお前は言った。俺が望めばお前はそれそ幾らでも…『死』すらも俺に与えようとするだろう。ただひとつの事を除いては。ただひとつの事を、除いては。
「…前…向きたい…ね、お前の顔…見せて……」
「―――駄目だ、俺の言う事は何でも聴くんだろう?」
こんな時に優しくしてやれば、お前は嬉しいだろう。そして傷つくのだろう。お前の望みを全て叶えてやれば、お前はもっと壊れるだろう。

優しく抱いてやるよりも、欲望のまま犯される方が、愛されていると感じるお前だから。

再び胸の飾りに指を這わした。尖った胸。紅く熟れた果実。俺の指を求めて。刺激を求めて、ぷくりと立ち上がるソレに。
「…何でも…聴く…お前の言う事ならば…俺は……」
目尻から零れ落ちる涙。指で掬ってやりたかったけれど、そのままにした。頬に零れ落ちる涙をそのままにして。そのままに俺は欲望のままお前の身体を弄る。これが、お前が欲しかったものならば。俺から欲しいもの、ならば。
「…あっ…来須…っ……」
胸から手を離して、お前の手首を掴んだ。鎖に繋がれている手首はひどく冷たく、金属の無機質な感触が俺の指に伝わった。そして。
「―――あああっ!!!」
そしてそのまま俺は、剥き出しになった自身をお前の最奥に突き入れた。



壁に、あたる。冷たい壁に、あたる。
頬が、手首が。身体が、脚が。
でも平気。だって背後から抱きしめる身体が。
中を貫く楔が、掴んだ手が。

――――焼けるほどに熱くて…しあわせ………



身体が、ふわりと浮いた。
「ああああっ…あああんっ!!」
手首を掴まれ、そのまま突き入れられ。
「…来須っ…来須っ…あぁっ……」
そのままずずっと身体を浮かされる。
「…あああ…あぁ…はぁぁっ…」
壁に身体を押し付けられたまま。宙に浮く身体。
「ああああっ!!!」
―――もう何も、考えられない。


「…来須…来須…俺は…あああっ……」
突き上げられて欲望を注がれて。それでも離れることのない楔。俺はソレを感じながら、何度も何度も果てる。床を白い液体で汚しながら。
「…あぁぁっ…ああああっ……」
脚が地面に着かない。その前に突き上げられる。の熱さと堅さが、俺にとってなによりも。俺にとって…なによりも。
逃がしたくなくて、きつく締め付けた。お前が欲しくて堪らなくて、全てを飲み込みたくて。離したくなくて、俺は。俺はお前自身を激しく求めて。
「―――このままお前を壊すか?」
壊されたいと思った。無茶苦茶にされて、ぼろぼろになりたいと思った。壊してくれるのがお前ならば、どうなってもいいと思った。お前が俺を、ばらばらにしてくれるのならば。
「…壊して…壊して…くれっ…あぁぁっ……」
壊れたらきっと楽になれるんだと思った。この終わりのない執着と、無限の欲望から開放されるなら。お前だけを求め追い続ける心から。全てが、開放されるのならば。
けれども、俺は。それ以上に。その執着と欲望以上に、俺は。俺はずっと。ずっとずっと。

――――お前を見つめていたい…から……


もうどれだけの間、思っていた?
どれだけの間、考えていた?
どうしてこんなにも、惹かれるのか。
どうしてこんなにも、好きなのか。

…どうしてこんなにもお前を…愛しているのか……


時計を逆廻りにして。そうしてお前の時を。
俺が知らないお前の時を全て。全て俺に見せて。
全部、全部、俺に見せて。俺にちょうだい。
つま先も髪の先も、全て。全て俺だけのものに。
ね、俺だけにちょうだい。全部、全部、ちょうだい。



――――お願いだから神様…このひとを俺にください……



ずるずると身体が落ちてゆく。ずぷりと濡れた音とともに俺の中のお前自身が引き抜かれて。そして。支えるものがなくなった俺の身体は、崩れ落ちてゆく。
「…瀬戸口……」
俺が吐き出した欲望の中へと落ちてゆく。顔に乾ききっていない精液がぴちゃんっとは跳ねて、頬を汚す。
「…来須…好きだよ……」
それでも俺はお前の名前を呼んで。震える脚を堪えながらお前に振り返って、そして。
「…好き……」
そして手を伸ばしお前の髪に触れる。その金色の髪に、そっと触れる。指先が感じるその感触だけが、俺の全てになって。
「…愛している…お前だけ……」
その髪を弄びながら、口付けを交わす。何度も何度も、お前が止めろと言うまで。何度、も。



―――このまま時が止まってしまえたらと…祈りながら……




END


※ 


CHAIN


――――鎖に繋がれる夢を見る。


首に掛けられたその冷たい感触にひどく心地よさを覚え。この金属の冷たいぬくもりに、安堵感を覚え。そして。そして初めて安心して眠る事が出来る。初めて身体を丸めて眠ることが、出来る。
「…来須……」
名前を呼びお前の脚に触れた。上半身だけ身体を起こして、指でその滑らかな脹脛に触れる。無駄な肉のない弾力のあるそれに。
「――――」
俺の言葉に答えることなくアイスブルーの瞳が見下ろしてきた。綺麗で冷たいその蒼に、何時も睫毛が震える程、ぞくぞくとする。
「なあ、しよう」
このまま絡め取られ、そのまま堕ちたい。そのまま溺れたい。何もかも考える事が出来ないくらいに。何もかもを、忘れられるくらいに。記憶も過去も未来も。
「―――お前は本当に……」
その先を告げられる前にしゃがみ込み俺の顔を見下ろしてきたお前の唇を塞いだ。脚に腕を絡めながら。しなやかな肉の感触を指先で確かめながら。
「盛りのついた雌猫とでも言う?」
「その通りだ」
半ば呆れたようにお前は言うとそのまま俺の手を掴み、床に俺の身体を押し倒す。冷たい感触が背中にじかに伝わり、口から無意識にため息を零させた。
「でもお前は、俺を抱いてくれるだろう?」
くすりとひとつ微笑ってお前の背中に腕を廻した。俺だけの背中。俺だけの場所。絶対に他の奴にこの場所を与えはしない。俺だけのもの、だから。
「拒む理由が…俺にはない」
そう言って俺の唇を塞ぐ唇。その生暖かい感触を絶対に俺は誰にもやらない。


迷い込んだ迷路の出口は何処にもない事を知っている。
出口なんて初めからなくて、後はひたすらに巡りゆくだけ。
それでも。それでも俺は自らこの迷路に捕らわれる。
出口なんてなくても。未来なんてなくても。何も、なくても。


そこにお前がいる限り、俺はこの迷路に捕らわれるんだ。


繋がれた鎖。見えない鎖。それを永遠に。永遠に俺に掛けて欲しい。お前から離れられないように、永遠に。
「…あっ…はぁっ……」
尖った胸に触れる舌。ざらついたその感触に、俺の身体は熱く火照る。眩暈すら覚える程に。
「…来須っ…あぁん……」
ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながらお前は俺の胸の突起をしゃぶる。その音が全身に広がって俺の身体を煽った。胸が痛いほどに張り詰めて、じんっと先端が痺れるのが分かる。
「瀬戸口」
「――――んっ!」
名前を呼ばれのろのろと瞼を開けば噛み付くように口付けられた。その激しさに眩暈を覚えながらも、俺は口付けに答えた。自ら唇を開き舌を迎え入れると、それに積極的に絡めた。濡れた音を響かせながら、何度も何度も唇を重ねる。
「んんんっ…んっ」
角度を変えながら口付けを繰り返し、その間にもお前の手は俺の感じる箇所を的確に攻め立てる。俺の身体でお前が知らない場所など何処にもない。俺がどうすれば感じるのか、どうすればイイのか全てを。全てを知り尽くしている饒舌な指が。
「…はぁぁっ…あっ!」
唇が解かれると同時にお前の大きな手が俺自身に触れる。それは既に形を変え、お前の指に快楽の印を与えていた。
「…あぁっ…ああんっ……」
どくどくと脈打つソレを大きな手のひらが包み込む。柔らかく揉みながら、先端の割れ目に爪を立てられた。その対照的な刺激が、俺の身体を狂わせてゆく。溺れさせてゆく。
「…あぁ…来…須っ…くるすっ……」
快楽で濡れ始めた視界のままお前にきつくしがみ付いた。腰を押し付け刺激をねだる。そんな俺にお前は無情にも前に触れていた指を外した。そして。
「…くふっ…はっ……」
その代わりに俺の最奥にお前の指が挿ってくる。太く長い指が俺の肉を掻き分け、奥へと導かれてゆく。
「…はぁっ…ぁぁ…っ」
くちゅくちゅと濡れた音を響かせながらお前の指が俺の中を掻き乱す。乱暴とも取れるその指使いに俺は感じた。激しく、感じた。
身体を小刻みに痙攣させながら、お前の指を貪欲に俺の媚肉は飲み込んでゆく。もっと、もっと、刺激が欲しいと。もっともっと、乱して欲しいと。
「…来須っ…もうっ…」
「―――もう、指じゃ足りないか?」
息を吹きかけられるように囁かれた言葉に、睫毛が震えるのを抑えきれない。微かに掠れたお前の夜の、声に。
「…足りない…指じゃなくて…お前のが…お前のが、欲しいっ…」
「――――」
「…あっ!……」
ずぷりと音ともに指が引き抜かれる。その代わりに当たられた入り口の硬いものが。その熱くて硬い感触が、俺の口から無意識に満足げな溜め息を零させた。安堵した、溜め息を。
「コレが欲しいか?瀬戸口」
「…欲しい…欲しいっ来須……」
何時も欲しいものは。何時も、欲しいものはお前だけ。お前だけが欲しい。お前以外何も欲しくない。こうして抱かかれるのも、こうして貫かれるのも、お前がいい。お前以外なら、誰でも同じだ。俺にとっては意味のないもの。お前だけが俺の『意味』。
「…欲しいよ…お前が…お前が欲しい……」
腰を振り入り口に当てられているお前を擦り合わせた。ひくひくと蕾が蠢き、お前が欲しいと告げている。
「…欲しいよっ…来須っ!……」
告げている淫らな身体が。告げている乾いた心が。お前という名の液体を求め、そして潤されたいと、飲み込みたいと。全てを満たされたいのだと。
「――――ならば…充分に味わえ…」
耳元に囁かれた言葉に、その言葉に背筋がぞくぞくするほどに…俺は感じた。



繋がれて、縛られて。何処にも行けなくなったなら。
何処にも逃げられなくなったなら。永遠にお前という名の。
お前という名の鎖に繋がれて、そして。そして堕ちてゆけたならば。


――――それをしあわせだという俺は、狂っているのか?



濡れた音ともに押し入ってくる肉の塊に、俺はあられもなく喘いだ。熱く硬いものが、身体を真っ二つに引き裂く。その痛みに、溺れた。
「…あああっ!…あぁぁっ……」
自ら腰を振り、楔を奥へと誘い込む。媚肉を押し広げる硬さが、全ての思考を奪った。全ての感覚を奪った。そこだけに熱が集中し、そこだけが神経の全てになる。
「…ああっ…来須っ…あぁぁっ…もっとっ…もっとっ!……」
口許からだらしなく唾液を零し、目尻から快楽の涙を零し、そして淫らに腰を振る。俺は何時からこんなにも。こんなにも淫乱な生き物になっていたのか?何時から、こんなにも。

お前が俺を、狂わせた。お前だけが、俺を雌猫に変えた。

セックスも愛もその全てが俺にとってはどうでもいいものだった。
愛を唱えながらも、それは何時も口から乾いて零れる言葉だけだった。
けれども。けれども今。今この俺が愛を口に出したとしたら。


それは迷彩色に彩られた、ただの狂気でしかないだろう。



「…来須っ…来須っ!……」
抱かれながら相手の名前を呼ぶなんて。
「…もっと…俺を…もっと……」
そんな自分は何処にもいなかった。
「…俺を…愛して…いるから…だから……」
そんな自分は、知らなかった。


愛していると告げながら、その身体を開いている自分なんて。


強く引き寄せられ、中に注がれる熱い液体に。やっと乾いた自分の身体が満たされる。けれどもそれはすぐに。すぐにもっと深い飢えへと代わってゆくのを分かっていながら。



夢を見る。鎖に繋がれる夢を見る。
「…来須…愛している…お前だけを……」
逃れられない運命の輪のように、俺は。
「…お前だけを……」
俺はお前から逃れられない。お前に捕われている。



けれどもそれは自ら望んだ事だった。自らこの首に、お前と言う鎖が掛けられるのを……


END

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