La Pluie

―――どうしたら…俺だけのものになるの?


初めて見た時から、その綺麗な瞳が欲しかった。
欲しくて、どうしようもなくて。どうにも出来なくて。
どうしたら俺だけものになるのか。どうしたら手に入れられるのか。
それだけを。それだけを、考えていた。


その髪を指に絡めて、そして。そしてその腕で眠りたい。



繋がれた鎖の冷たさが、ひどく心地よかった。このままずっと。ずっと、このままでいい。このままお前の手に結ばれていたい。
「――来須……」
髪に触れたかったけれど、手首を繋がれていたからそれも叶わなかった。口付けたかったけれど、首輪が皮膚を締め付けるからお前に触れることが出来ない。
―――手を伸ばして、指を絡めて。そして。そしてお前に口付けたいのに。
「…瀬戸口……」
大きな手が伸びてきて、そっと俺の頬に触れる。しあわせ。このぬくもりを感じられることが、しあわせ。
そのまま髪を掴まれて、噛みつくように口付けられた。その激しさが、何よりも俺の瞼を震わせる事を…お前は気付いているのだろうか?



――――これがお前の、望み…だったんだろう?

こうして鎖に繋がれて。がんじがらめに縛り付けられて。
そして。そして俺に拘束される事が。俺に閉じ込められる事が。
お前の望み、だったんだろう?

だから、俺は叶えてやった。

逃げられないように手足に鎖を繋いで。
首輪を付けて、俺のものだという証を与え。
こうして閉じ込められれば、お前は。

…お前は…満たされる…のか?……



「…んっ…ふぅっ…ん…」
唇をこじ開けられ、強引に舌を絡め取られた。顔を上げさせられたせいで、首輪の皮が首に食い込んでくる。その痛みが、瀬戸口の眉を歪めさせた。それでも。それでも、口付けを止めることはなかった。それどころか、自分から。自分から求めた。
「…はぁっ…んん……」
首輪が締め付けても、それでも瀬戸口は求めた。自ら舌を積極的に絡め、来須の全てを貪ろうかとでも言うように。深く深く口付ける。
「…来須…くる…す…はぁっ……」
ぴちゃぴちゃと濡れた音が室内を埋める。その音が全てを忘れさせた。痛みも切なさも苦しさも。

――――ただ。ただ欲しいと。欲しいと。お前だけが…欲しいんだと……。

「―――瀬戸口……」
唇を離して、来須はその顔を見下ろした。潤んだ紫色の瞳が自分を見上げる。それは明らかに雄に媚びる目、だった。欲しがっている、瞳。その瞳を拒みながらも何処かで望んでいる自分がいる。
「お前のその目が、何時も」
手を伸ばし、もう一度その髪を掴んだ。そうする事で首輪が擦れて、消えない痕を作る。けれども。それすらも。それすらも……。

「何時も、俺を狂わせる」

痕が、消えなければいい。お前が付けたものだから、永遠に消えなくていい。
噛みつくように口付けられて、瀬戸口はうっとりと目を閉じた。これがしあわせだなんて、誰にも分からないだろう。誰にも理解できないだろう。でもそれで、いい。それで構わない。自分だけが知っていて、そして目の前に男にだけ、伝わればいい。



願ったことはただひとつ。ただひとつ、お前をしあわせにしてやりたいと。
ただそれだけを願った。ただそれだけを叶えるために、俺は。
けれどもお前の瞳が。お前の瞳の先が見つめるものが。お前が欲しがっているものが。
それが何なのか。それが何を求めているのか気が付いた瞬間。

―――多分俺達は…もう戻れない場所まで来ていた……



「―――あっ」
手に持っていた鎖を、来須は引っ張った。そうする事で瀬戸口の首輪が引っ張られ、そのまま身体が前に倒れた。手をついて支えようとも、両腕は縛られていてそれは叶わなかった。ドサリと音とともに身体が床に落ちてゆく。
それを寸での所で、その身体を来須の逞しい腕が引き上げる。そうしてそのまま、よつんばえの格好をさせると顎に手を置いて自分へと向かせた。
「解いて、欲しいか?」
そのままそっと耳元に囁かれた言葉に、瀬戸口は微笑って首を横に振る。解かなくていい。このまま縛られていたい。どこにも逃げないようにと、縛られていたいから。
「…このまま…お前のもので…俺をずっと……」
ずっと俺をこうして繋いでいて。ずっと、お前のだけのものでいさせて。何処にも行かないように、何処へも俺を行かせないように。ずっとお前に閉じ込められていたいから。
「何処にも戻れなくてもいいのか?」
「…戻る?そんな場所俺には何処にもないよ……」
キス、したい。その唇が欲しい。何処でもいいからお前と繋がっていたい。こんな冷たい鎖じゃなく、もっと。もっと違うもので。
「…何処にもないよ…お前以外…俺の場所なんて…ない……」
「―――瀬戸口……」
「だからお前が俺を捨てる時は…俺をちゃんと、殺してくれ」
―――瀬戸口はそう言って、微笑った。何よりも綺麗な顔で、微笑った。


瀬戸口の口が伸びて来て、そのまま来須のズボンのファスナーへと辿りつく。限界まで舌を伸ばして、それを口に咥える。そしてそのまま歯で噛んで、ファスナーを降ろした。
「―――欲しいのか?」
来須の言葉に瀬戸口の口許が淫蕩な笑みを浮かべる。その顔を来須はずっと見てきた。彼にしか見せない、雄を求めるその顔を。
「…欲しいよ…お前だけが……」
何時も冷めた目で『雄』を見下ろしていた。どんな男に抱かれようとも、何時もその相手を見下していた。そんな場面を来須は何度も見てきた。
わざと、男に抱かれる。わざと、それを見せる。そういう事を繰り返し、何度も繰り返し。そしてずっと瀬戸口は待っていた。来須が自分を閉じ込める瞬間を、自分を逃げられないようにする為に、縛り付ける瞬間を。

…そして今。今こうやって、自分の望みが叶えられたから……

「…何もいらない…お前だけ……」
外に出された来須のソレを、愛しそうに瀬戸口は舌を這わした。両手は使えなかったから、口だけで奉仕した。堅さを持ち始めたソレを口に咥え、そして頬張る。中で舌を絡めながら、先端を吸い上げる。
「…ふっ…んんっ…んんん……」
きつく眉を寄せ、それでも懸命に瀬戸口は奉仕した。口中の来須自身はその存在を誇示し始め、瀬戸口を苦しめても。それでも決して舌は止まることはなかった。
喉もとに届くその熱さですら、瀬戸口には愛しかった。自分のした行為で彼が変化する事がなによりも嬉しかった。
「…んんんっ…んん…はぁっ…ん……」
咽かえるほどの存在感で、口内が満たされる。それがどんなに幸福なことか。どんなに望んでいたことか。このまま。このまま全てを取りこんでしまいたいと、そう思った。
「―――瀬戸口……」
快楽のためか微かに来須の声が掠れた。その微妙な変化ですら瀬戸口には嬉しかった。嬉し、かった。
「…来…須っ…んん…んんん…ふっ…んっ!!」
髪を掴まれ、乱暴とも思える動作で引き寄せられた。首輪に締め付けられて、喉に食い込む。息を吸おうにも口にはみっしりと来須自身が埋め込まれていて、それも叶わなかった。
「…んんんっ!…んんんんっ!!」
目尻からぽたりと、雫が零れる。苦しさのために、零れてゆく。その涙がひどく綺麗で、切なかった。白い陶器のような瀬戸口の頬から零れ落ちる透明な雫。
「こんなにしてもお前は…俺からは逃げないんだな……」
この状態にされても、瀬戸口の口の動きは止まらない。息苦しさに涙を零そうとも、懸命に瀬戸口は愛しいモノに奉仕をする。何度も咽せかえりそうになりながらも、愛しい人のモノを。
「…んんん…ん…あ―――っ!!」
髪を再び掴まれ、そして顔を剥がされた。その瞬間に、瀬戸口の顔に大量の精液が飛び散った。


ぽたり、ぽたりと。頬から鼻先から、白い液体が伝わる。首筋のラインを流れて、鎖骨の窪みに落ちて。ぽたり、ぽたりと。向きだしの薄い胸に伝い、流れていった。
来須は瀬戸口から手を離すと、そのままズボンのファスナーを上げた。そして瀬戸口の手に掛かっていた鎖を離すと、両腕を自由にしてやる。
「…来須……」
見上げる紫色の瞳がひどく不安定になる。手だけとはいえ『自由』を与えられることが、瀬戸口とっては一番の不安なのだ。来須に縛られている事が、何よりもの幸福だと感じる彼だからこそ。
ただ唯一首輪が掛けられたままだという事だけが…今の瀬戸口の拠り所だった。
「俺が欲しいか?瀬戸口」
その質問に彼が迷わず答えることは、来須には分かっていた。分かっていても、こうして。こうして確認するのはただひとつ。ただひとつ、こうやって自分の罪を心に刻む為だけ。

これは、罪だ。彼をここまで堕としたのは自分以外にありえない。中途半端なまま。全ての想いを受け入れず、けれども引き離すことが出来ず、こうして。こうしてお前の全てを自分で埋める事をしなかった自分が。出来なかった自分が…引き起こした事……。
お前の淋しさを、お前の孤独を、お前の絶望を、誰よりも分かっていたのに。優しさだけを与えて、それだけでお前を満たそうとした俺の罪。お前は優しさだけでは決して埋められはしないと分かっていたのに。お前の乾きはそれだけでは満たされないと分かっていたのに。
求め続ける渇望。俺だけを求めるお前の喉の渇きが…そんなものでは埋められないと…気付いていたのに。

手が、伸びてきた。自由になった、その手が。手首は鎖の痕でうっすらと血が滲んでいたけれど。その痛みすらもう、瀬戸口には感じることはないのだろう。
「…来須……」
ふらつく脚で立ち上がって、目の前にある金の髪に指を絡める。指先をすり抜けるその細い髪が、その髪が愛しい。愛しくて、大切で、そして。そしてかけがえのないもの。
「好き。お前だけが好き。お前だけがいてくれればそれでいい」
カシャンと鎖が床に落ちる音がした。来須と瀬戸口の首輪を繋いでいた鎖が、その手のひらから落ちる。落ちて、そしてそのまま。そのまま瀬戸口の身体が来須の上に覆い被さるようになりながら、二人の身体が床に崩れ落ちた。
「お前だけが、いればそれでいい」
見下ろす瀬戸口の髪からぽたりと、汗が落ちた。そして肌から自分の吐き出した精液が落ちてくる。それが来須の鎖骨に掛かると、それを瀬戸口の舌が舐めた。
「お前の出したものは、全部俺のもの」
再び舌が降りてくる。歯と舌だけで器用に来須のワイシャツのボタンを外した。手が使えるにも関わらずわざと、瀬戸口はそうする。
「誰にも渡さない…絶対にお前は誰にも渡さない」
ボタンを全て外した所で初めて瀬戸口の手が来須の衣服に掛かると、そのまま前を全てはだけさせた。裸の胸が露になる。逞しい、身体。鍛え上げた、身体。この身体を見たらどんな女でも欲情して股を開くだろう。そのくらい逞しい厚い胸板、だった。
「…俺だけの…もの……」
手が、触れる。来須の身体を確認するように、触れる。何度も、何度も、触れる。愛しげに指先が滑ってゆくのを、来須は何も言わずに見ていた。その舌が確認するように、身体を滑っても。
「お前だけのものになれば、お前は満たされるのか?」
猫のように来須の身体の上に乗り、ぺろぺろとその皮膚を舐める。指で筋肉の堅さを辿りながら、舌が味わうように滑っていった。
「…なって、くれる?…俺だけのものになって、くれる?…」
顔を上げて来須を見つめる紫色の瞳は、夜に濡れてそして零れてゆく。それが性欲のための涙なのか、別の涙なのか…来須には分からなかった。ただ。ただ哀しいくらいに綺麗だと、それだけを思った。
「―――もう…俺にはそれしかない…お前にしてやれることは…それだけしか……」
ここまで彼を壊したのは、自分。ここまで彼を追いつめたのは自分。与えた優しさが飢えを益々深めて、そして。そしてコントロール出来なくなるほどの激情が。激情が彼を狂わせたのならば。
「瀬戸口、俺が永遠に」

永遠にお前を閉じ込めて、そして。そして俺だけのものにするから…だから、俺はお前だけのものだ。

唇が、重なった。貪り合うように、口付けた。このまま舌を噛み切って死んでもいいと思えるほどに。深く、深く、絡め合った。
「…んんっ…ふぅっん…はぁっ……」
唾液が交じり合う。唇が痺れてゆく。感覚がなくなって、ただ。ただ液体に溶けてゆくようなそんな。そんな錯覚が満たしていって。
「…はぁぁっ…あっ……」
二人の唇を一筋の唾液が結ぶ。唇を離すのが名残惜しいとでも言うように。その唾液を来須は指で掬うと、そのまま濡らした指先を瀬戸口の最奥へと埋めた。
「…くぅっ…んっ……」
乾いたそこに埋められてゆく指。狭い入り口を掻き分けて、奥へ奥へとその指が。その指が、瀬戸口を狂わせそして。そして堕としてゆく。
「…くふう…はぁっ…あぁ……」
貪欲な内壁はさらなる刺激を求めて、来須の指をきつく締め付けた。ココにどれだけの男の欲望を咥え込んだか、数え切れないほどで瀬戸口には分からなかったけれど。
けれども、この指の感触だけは、この節くれだった指の感触だけは、どんなになろうとも感触に刻まれて消えることはない。どれだけ男を咥えこもうとも、その指先を。そして。そして…その熱さを、堅さを…。
「―――瀬戸口」
「…ああんっ!……」
まだ一度も触れていなかった瀬戸口自身に来須の大きな手が、触れる。それは既に先端に先走りの蜜を垂らすほどに、欲望を露にしていた。
「お前を貫きながら殺したら…お前はしあわせか?」
先端を指で擦ってやれば、どくんどくんとそれは脈打つ。同時に中に挿入させた来須の指をぎゅっと締め付けた。口からは荒い息が零れて、髪先から雫が零れ落ちる。それが来須の頬に当たり、彼の綺麗な顔を濡らした。
「…しあわせ…きっと…しあわせ…でもまだ……」
自由な手が、来須の頬に触れて。触れて顔に掛かった雫を拭った。自分の零した汗ですら嫉妬する。自分が感じないものが彼に触れるのが嫌だった。嫌、だから。
「…まだ…もっと…俺を…手に入れて…もっと俺を手に入れて……」
愛しているなんて言葉、どれだけ告げれば気持ちに追いつくのか瀬戸口にはもう…分からなかった。ただ。ただただ、愛しているから。もうどうにも出来ないほどに。出来ないから、こんなにも愛している。
頬に掛かっていた瀬戸口の手が外され、先ほど閉じられた来須のズボンのファスナーへと掛かった。それは外す前からある程度の堅さを布越しに感じて、瀬戸口はどうしようもない程の悦びで満たされた。このまま、全部。全部、繋がりたい。
「…来須…俺をもっと……」
ファスナーを外して来須自身を外へと出すと、ソレを指先で包み込んだ。淫らに指を絡めて、その熱さを感じた。その堅さを感じた。このまま。このままコレに触れているだけで、瀬戸口はイケると思った。彼をこうして指先だけで感じていても、身体の熱は増殖されて。
「…もっと全部…俺を……」
瀬戸口は一端来須自身から手を離すと、そのまま上半身を起した。そしてふらつく脚で立ち上がると、そのままもう一度来須自身に手を当てた。そして。
「…俺を…求めて……」
そして、ソレを自らの入り口に当てると、そのまま腰を落としていった……。



―――愛しているんだと…お前に告げても、その心は満たされはしない……

誰よりも愛を求め、そして誰よりも愛に裏切られてきたお前だから。
だからお前はもう。もう俺の言葉だけでは、信じられないのだろう。
言葉だけでは、足りないのだろう。俺の全てを。俺の全てを取り込んで、そして。
そして俺の全てを手に入れて。そして。そして俺に全てを奪われなければ。

…お前の飢えは、決して満たされはしない……

しあわせにしてやりたかった。孤独と絶望と傷と痛みと。
俺はそれをお前から拭ってやりたかった。そっと、お前から。
けれども、お前は。お前はそれでは満たされない。
お前の全てを満たしてやるには俺の全てで。俺の持っている全てで。
何もかもをお前に差し出さなければ、お前は。

――――お前は決して、満たされはしないのだと……


永い孤独と、時間と、そして傷が。
お前の心を空っぽにして、そして。
そして空洞にして、何もかもを空にして。
そこから染み出す、紅い血だけが。
それだけがお前の『生』だった。


その血を全て俺が飲み干せば…お前は…微笑ってくれるのか?



熱い媚肉に、包まれてゆく。きつく締め付け、それでも深く飲み込もうとする。
「あああっ…ああああっ!!」
喉を仰け反らせて喘げば、首輪が首筋を締め付けてゆく。皮膚に傷がつき、うっすらと血が滲んできた。それでも瀬戸口は動きを止めることなく、深く来須自身を求めた。
「…ああっ…ああああっ…あああ……」
身体を引き裂く痛みすら、今の瀬戸口には眩暈を起すほどの快楽でしかない。貫かれ、そして全てを埋められることが。ひとつになって、ぐちゃぐちゃに溶け合うことが。その全てが何よりも。何よりもの、快楽。
「…来須…来須…あぁぁぁっ……」
愛しい人の名前を呼んで。愛する人の名前を呼んで。ただ独りの求め続ける人の名前を。ただ独り、永遠に渇望する人を。
「…あぁっ…あぁぁ…くる…すっ…はぁぁぁっ……」
ずぶずぶと濡れた音が室内を埋める。瀬戸口が腰を揺さぶるたびに、媚肉から楔が抜き差しされる。肉が擦れ合い、その熱が身体を焼くほどに熱い。擦れ合う摩擦が生む、その熱が。その熱が内側から溶かしてゆくような錯覚に陥って。
「…ああぁっ…あぁ…もう…っもうっ!!……」
来須の手が初めてこの瞬間になって瀬戸口の腰を掴んだ。目じりから零れ落ちる涙と、それでも開かれた紫色の瞳が。濡れた瞳が今。今自分に何をして欲しいのか…痛い程に求めていたから。
「―――瀬戸口…お前の孤独は優しさよりも…」
「あああああっ!!」
腰を掴み、乱暴に来須は突き上げた。瀬戸口の意識が一瞬真っ白になる。けれどもそれで終わりではなかった。何度も何度も激しく突き上げて、わざと無茶苦茶なリズムを刻んで。瀬戸口が来須の腹の上に欲望を吐き出しても、それは終わる事はなかった。果てることない欲望を注ぐかのように、何度も。何度も突き上げられて。
「…あぁぁっ…あああっ…来須っ…来…須っ…ああああっ……」
「こうして直接、注ぎ込まなければ埋まらないのか?」
ぐちゃぐちゃと濡れた音が響く。瀬戸口の中に注がれた来須の欲望が、繋がった個所から溢れてくる。それでもまだ。まだ足りないと、媚肉は締め付け求めてくるから。
「言葉で信じられないのなら…身体で伝えるしか……」
「…あああっ…もっと…もっと…あああっ…来須っ…もっと俺を…っ!」
粘膜から伝わる激しさとその熱さが。それが全てを埋めて。それが全てを満たして。それが、全てを。尽きることのない欲望は、尽きることのない想い。永遠の渇きにも似た渇望は、ただ独りだけに向けられる想い。どうして。どうしてその想いが優しさだけで包まれることが、出来なかったのか?どうして優しさだけで…埋もれることができなかったのか?

「…愛している…から…来須……」

泣きながら、告げられた言葉。快楽のための涙なのか、想いのための涙なのか、もうどちらでもいい。どちらでも、構わなかった。ただそれだけが。それだけが、真実だと。


後はもう記憶すらおぼろげになってゆく。
粘膜から伝わる熱さと、絡まる液体と。
繋がり合った個所の激しいまでの熱さと。
そして。そして、唇が痺れるほどの口付け。

――――それだけが、全て……



しあわせなのか、ふこうなのか。
もうそれすらも分からない。
おぼろげになってゆく。
正しい事と、間違っている事と。
その境界線ですら曖昧だ。

――――ただここに存在するものだけが『本物』だという事しか、分からない。




「…来須…好き…好きだ……」
呪文のように繰り返される言葉。それを受け止めながら。
「…好き…好き…好き…お前だけを…」
伸ばされた手に、鎖を掛ける。逃げないようにとその手に。
「…愛している……」
―――その手に、鎖をかける。




こうして目に分かるものだけが、瀬戸口にとって信じられるものならば。


END

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