―――君は俺の、小さな恋人。
手を、繋ぐだけで。
指を、絡めるだけで。
それだけで、伝わるだろう?
それだけで、感じるだろう?
―――身体なんて繋がなくても、もっと違うものが繋がっているだろう?
「たかちゃん」
舌っ足らずな声で、俺の名前を呼ぶその声に振り返れば、小さな君が懸命に駆けて来た。
「…たかちゃん?」
目線を同じ高さに合わせるために身を屈めて、その大きな瞳を覗き込む。真っ直ぐな瞳。決して反らされることのない大きな瞳。
「うん、たかゆきだから『たかちゃん』」
にっこりと笑って小さな手を差し出した。そう言えば速水は『あーちゃん』だったなぁと改めて思い返してみる。
「ののみ」
「ん?」
差し出された小さな手をそっと握り返す。それだけで、しあわせだなと…ふと思う。
セックスなんて、出来ない。
君はとても小さいから。
けれども、こうしているだけで。
こうしているだけで、セックスよりももっと。
もっとずっと深いモノを得ることが出来るから。
手を、繋いでいるだけで君を感じることが出来るから。
「ごめんね、たかちゃん」
「どうして?」
「ののみ、おおきくなれなくてごめんね」
「いいよこのままで。ののみはこのままで」
「でもののみはたかちゃんをまんぞくさせられないもの…」
「いいんだ、そんな事」
「身体が繋がらなくても、こころは繋がっているだろう?」
その言葉に君は哀しそうに俯いて、それでも懸命に笑おうとする。それがどうしようもない程に切なく、愛しい。
大きくなんてならなくていいよ。このままでいいよ。このまま、小さいままでいてくれれば…君を誰にも取られることはないから。
こうやって腕の中に小さい君を閉じ込めて、誰にも見せないで、そして。
そして俺だけのものに出来るから。だからこのままで、いいんだ。
「…たかちゃん……」
小さな、手。俺の手で包み込んだらすっぽりと隠れてしまう手。可愛い、俺だけの手のひら。その手が俺の頬にかかり、そっと触れる。
―――柔らかい、手が。
「うん?」
「ちゅーして」
「ああ」
目を閉じて唇を突き出す君に小さなキス。触れるだけの優しいキス。
「…ちがう…もん…」
「ののみ?」
「…そんなちゅーじゃ、ない…もっとちがうの…ちがうの、して……」
今にも泣きそうな顔で君は言ってきた。現に瞳からは今にも大粒な涙が零れてきそうだ。
「――悪い子だね、ののみは…誰からそんな悪知恵入れられた?」
「わるぢえじゃないもんっ!ののみ…ののみはっほかのおんなのこみたいにたかちゃんに……」
耐えきれず君の瞳からは大粒の涙が零れて来る。ぽたぽた、と。ぽたぽた、と。そしてそのまま俺の服をぎゅっと掴むと、顔を埋めて泣き出した。
「…だって…たかちゃん…おおきなおんなのひとと…そういうちゅー…してるもん…なのに…なのに…ののみがちいさいっていうだけで…いうだけで…してくれないのは…」
「…ののみを…ひとりのおんなのことして…みていないの?……」
君のその一言が…俺の中にあった何かを壊した。そうだ俺は…俺は君が小さいと言う理由だけでただ大事に、大事にするだけで。まるで壊れ物を扱うかのように大切にするだけで。君がひとりの『女の子』で、俺の『恋人』だと言う事を何時しか忘れていたのかもしれない。君が俺と『対等』であると言うことを…。
「…見ているよ…ののみ…君は俺だけの恋人だ……」
「…だったらちゃんとちゅーして…」
「―――ああ……」
もう一度君の唇に触れた。今度は触れるだけのキスじゃない。舌で唇をなぞりながら、そのまま口中に忍ばせる。そしてそのまま小さな舌を絡め取った。
「…んっ…ん……」
薄く目を開ければ苦しそうに眉をしかめながらも、懸命に俺に答えようとする君。どうしていいのか分からずにぎゅっと握り締めた手を、そのまま俺は自らの背中へと廻させた。
「…たか…ちゃん……」
「こうしていれば…怖くない、だろう?」
「…うん……」
小さくこくりと頷く君の髪をそっと撫でながら、もう一度俺はその唇にキスをした。触れるだけじゃない、恋人のキスを……。
背中に廻る腕の力が強くなる。
それでも俺はキスを止めなかった。
何時しか君は独りでは立っていられずに。
俺の身体に体重を預けていた。
「…んっ…ふぅ…ん……」
絡め合う舌の音だけが室内を埋める。ぴちゃぴちゃと、それはひどく淫らに俺の耳に届いた。何時しか飲み切れなくなった唾液が君の小さな唇を伝ってゆく。俺はそっと舌を伸ばしてそれを舐めた。
「あんっ」
それがくすぐったかったのか、首を竦めてイヤイヤと首を振る。それでも俺はこの行為を止めなかった。何度も舌を行き来させ、唾液の痕を舐め取った。
「…たかちゃん……」
うっとりとしたような声が俺の耳に届く。その顔を見下ろせば頬はほんのりと朱に染まり、目が微かに潤んでいる。
―――そうだね君は確かに女の子だ……
こうやって大人のキスで感じているのも、その証拠だね。こうやって俺に媚びるような目で見つめるのも。
「ののみ…なんかへん…あたまがぼーっとして…あしがふわりとういているみたい……」
「気持ちがよかった?」
「…わかんない…でも…でもへんなかんじ……」
「それが気持ちいいって言うんだよ…もっと、よくしてあげる」
俺の言葉に君はこくりと頷いた。もう俺には…迷いはなかった……。
制服のリボンを外して、上着を脱がせた。人形のような身体が現れる。薄い、胸。当然膨らみなんてない。飾りのようにピンク色の乳首が肌の上に乗っかっているだけだ。それでも俺にとってはどんな女よりも欲情する身体だった。
「たかちゃん…ののみ…はずかしい……」
「大丈夫、俺に任せて」
「…うん…あっ!」
薄い胸に口付けて、そのまま胸の果実を指で転がした。それはたちまちぷくりと立ちあがり、朱に染まっていった。
「…あっ…たかちゃん…やだ…なんか…なんか…」
「大丈夫だよ」
「…なんか…あ…あ……」
人差し指と中指で摘みながら、舌でぴちゃぴちゃと舐めた。そのたびに小さな身体はぴくぴくと小刻みに震える。
「…あ…あぁ…ん…はん…ののみ…のの…み……」
「可愛いよ、ののみ」
「…やだ…あつい…よぉ……」
胸を弄っていた手を、その小さな身体へて滑らせてゆく。唇と同時に余す所なく触れると、耐えきれずに君の手が俺の背中をぎゅっと掴んだ。
「熱いの?ココが?」
「あんっ!!」
スカートの中に手を入れて、そのまま君の小さな花びらに布越しに触れた。こんな所を触られるのは初めてだろう、一瞬君の身体が硬直する。
「…やぁ…そんな…ところ…さわらないで…やん……」
割れ目をなぞるように行き来させると、じわりと指先が湿ってくるのが分かる。子供の身体でもちゃんと。ちゃんと女の身体、だった。
「…やぁっ…ん…あぁんっ……」
下着を足首まで下ろさせると、その花びらに直接触れた。まだ毛も生えていないソコに触れるのはひどく罪悪感を憶えた。けれどもそれ以上に…それ以上に触れたいと言う欲求が勝った。
「…ああん…あん……」
花びらを掻き分け、秘所に指を忍ばせる。ゆっくりと掻き分けながら、君のヴァギナを探った。
「指、痛い?」
耳元で囁いた言葉に君は首を横に振った。挿れられる痛みよりも、触れている快楽の方が勝ったらしい。びくびくと小刻みに身体を震わしながらも、君の口からは甘い吐息が途切れることはなかったから。
「…あぁ…あつい…よぉ……」
「うん、熱いね…ののみのココ」
「…とけちゃうよぉ…ののみ…とけちゃ…」
「うん、溶けちゃっていいよ」
探り当てたクリトリスを執拗に指で弄った。剥き出しになったソコが君の快楽の度合いを表している。俺は君がイクまでそこを集中的に嬲った。
「ああああんっ!!」
びくんっと大きく身体が弓なりになって、君は愛液を大量に分泌させた。
はあはあと肩で息をしながらまだ何処か虚ろな君の瞳を見つめた。まだ快楽の余韻は冷めていないらしい。まあ無理もない…初めてのことだったのだから。
「…たかちゃん……」
「何?」
それでもののみは懸命に頭を振って意識を取り戻すと、ぎゅっと俺の服を掴んで自分から起き上がってキスをした。
「…もっと…さきが…あるんでしょう?……」
ののみの言葉に俺は一瞬戸惑った。確かに俺の分身はズボンの下でののみを求めて息づいている。けれども。けれどもこの幼い身体を貫くには…あまりにも負担が大き過ぎる。
「これでおしまいだよ」
「うそ…ののみ…ののみちゃんとしってるもん……」
「けれどもそれだけは出来ない。君を傷つけられない」
「…で、でも……」
「いいんだこれで。ののみが良ければ俺はこれで」
「…じゃあ……」
君はこくりと一回つばを飲んだ。そして震える手を俺のズボンのファスナーに掛けるとそのまま降ろした。
「ののみっ?!」
「…ここがだめなら…ののみ……」
剥き出しになった俺自身を掴むと、そのまま君はその小さな口で頬張った。君の口では俺のソレは大きすぎて入りきらないだろうに…君は懸命に飲み込もうとする。
「…ののみ……」
その行為を止めさせようとして手を伸ばしたが君は首を横に振って拒否をした。そしてそのま懸命に俺のソレをしゃぶり始める。決して上手いとは言えない。それでも君の生暖かい口に含まれていると言うだけで、俺のソレは感じ始めていた。
「…んっ…んんん……」
苦しそうな表情で、それでも懸命に俺をしゃぶる君。ぴっちりと君の口に突き刺さった俺は息苦しいはずがないのに、それでも君は…。
「…ふぅ…んん…んんんん……」
何時しか限界を迎えた俺は、その小さな口の中に白い欲望を吐き出していた。
ののみ、ね。
ののみおおきくなれない、から。
だからせめて。
せめてたーちゃんの。
たかちゃんのよろこぶことが、してあげたいの。
たかちゃんにきもちいいことしてあげたいの。
だってだってののみ。
―――ののみたかちゃんが、だいすきなんだもの……。
「…ねえ…たかちゃん……」
裸になって、ふたりで抱き合った。それ以上はしない。きっと俺は一生君の身体を繋ぐことは出来ないだろう。それでも。
「うん?」
それでも、こうやって。
「…だいすき……」
こうやって、俺達は、繋がっているから。
「俺もだよ、ののみ」
「…愛しているよ………」
何時しか腕の中で寝息を立て始めた君の身体をそっと抱きしめて。
―――抱きしめて君の後を追った……。
END