―――こころに、リボンを掛けて。
目を閉じてと云われたからその通りにしたら、小さな唇が俺のそれに触れた。そっと、触れた。
「…ののみ……」
触れた唇が離れてゆっくりと目を開ける。そこにはひどく真剣に俺を見つめる君がいた。真っ直ぐな瞳。そらされる事の無い瞳。そんな君の瞳が俺は苦しいほどに、好きだった。
「たかちゃん、すき」
「うん俺もののみが好きだよ」
「だいすきだからね、たかちゃんにののみをあげる」
小さな手が俺の背中にしがみ付いてそう云った。俺が抱きとめるとその身体は小刻みに震えている。それが切なくて俺はそっと髪を撫でて。
「もう充分貰っているよ。どうした?誰かに何かを吹き込まれたのか?」
俺の言葉に君は首を左右に振った。その仕草があまりにも一生懸命だったから。一生懸命だから。
「ちがう、もん。ちがうよ…ののみ…たかちゃんのたんじょうびだから…だから、なにをあげたらたかちゃんよろこぶかなっておもったから…だから…」
「ののみの言葉だけで充分だよ」
そう云って額にキスをした。けれども君はまた首を振る。そうして大きな瞳からぽたりとひとつ涙を零して。
「たかちゃん、ののみじゃいやなの?」
「―――ののみ?」
「ののみ、ちいさいからいや?むねもないからいや?えっちなこと、ののみとじゃいや?」
「…違うよ…そんな意味じゃあ…」
「だってたかちゃん、いろんなおんなのひととそういうことしてきたでしょ?でもどうして…どうしてののみにはしないの?ののみのことなんともおもっていないの?」
耐えきれず君はぽろぽろと泣き出した。大きな声で泣く君は。君はとても小さくて、そしてとても幼い。そっと君を抱きしめながら、髪を何度も何度も撫でてやった。
―――誰よりも大事なひと、だから……
君は誰よりも俺にとっては大切な人で、大事な人だから。小さいから、幼いから、じゃない。だから俺は、君を傷つけたくはなかったから…でも……。
「違うよ、ののみ。君が大事だからだよ。そんな事しなくても…俺達は繋がっているだろう?こころが」
「…いや…そんなの…ののみわからない……わからないよ…たかちゃん……」
泣きながら、それでも懸命に俺を見つめる瞳に。―――俺は拒む事が、出来なかった。
「…んっ……」
「…口…開くんだよ……」
君は俺に言われた通りに唇を開いた。その中に舌を忍ばせてゆく。最初びっくりしたように逃げたそれを絡め取って、きつく吸い上げた。
「…んん…ふぅっ…ん……」
何度も絡めながら、舌裏を舐める。その刺激に耐え切れず小さな手が俺の腕にしがみ付いてきた。
「…はふぅっ…ふむ…ん……」
それでも君は逃げなかった。俺の動きに懸命に合わせているのが分かる。そんな君がどうしようもなく、愛しかった。
「…はぁっ…あ……」
唇が離れ、君の口許に唾液の筋が伝う。俺はそれを舌先で掬ってやれば、ぴくんっと君の肩が揺れた。
「大丈夫か?ののみ」
とろんとした顔で俺の声に君は顔を上げる。けれどもその表情は首を懸命に振って俺にぎゅっとしがみ付いた。
「…へいき…だから…だから…やめちゃ…いやなの……」
「―――分かった…止めないよ」
そんな君の髪をそっと撫でて、俺はちょこんっとその小さな身体を膝の上に乗せた。そのまま上着のボタンを外すと、柔らかい肌に指を這わす。子供特有のきめの細かい、ぷりんっとした肌だった。
「…あっ…あんっ……」
背中を支えながら、もう一方の手で胸の突起に指を這わす。まだ膨らみの無い胸。でも俺にはただひとりの愛しい人だった。
「…あんっ…あ…たかちゃ…ん……」
きゅっと突起を摘めば綺麗なピンク色になる。そのまま口に含んで舌で転がした。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながら舐める。
「…あぁ…んっ…たかちゃん…なんか…へん…へんだよぉ……」
大きな瞳からさっきとは違う涙が溢れてくる。抱きしめている身体に熱さが灯る。それを感じながら、下着事スカートを脱がした。
「―――あんっ!」
まだ毛すら生えていないその割れ目に指をつつつと這わした。それだけでびくんっと震える身体が愛しかった。
「…あぁんっ…あん…やぁっん……」
「イヤなら止めるよ?」
「…やだぁ…やめちゃ…だめなの…あぁぁんっ…」
「じゃあ脚、開いてののみ」
言われた通りに君は脚を開くと、そこに指を侵入させる。他人の指など知らないソコは、中々異物の侵入を受け入れてはくれなかった。
「…ぁ…あぁ…たかちゃ…ん…あんっ!」
それでも辛抱強く繰り返してゆけば、何時しかソコは指をくぷりと受け入れた。ゆっくりと奥へと侵入させ、君の一番感じる個所を探り当てる。ソコに軽く爪を立てた。
「あああんっ!!」
がくんっと君の身体が跳ねて、そのままがくがくと脚を震えさせる。一人で立っていられずに俺の身体に体重を預けてきた。そんな君を支えながら、一番感じるソコを攻めたてる。
「…あああんっ…あん…へん…だよぉ…ののみ…へんに…へんになっちゃう……」
身体はまだ子供だったけれど、ソコは充分に女のソコだった。指にとろりと蜜が零れて来る。それをクリトリスに擦り付ければ、また愛液が溢れてきた。
「…へんだよぉ…あついよぉ…ああん…あぁ……」
びくびくと跳ねる身体。零れる甘い息。口許から耐えきれずに唾液が伝ってくる。それを舌で舐めてやりながら尚も俺はソコを攻める。
「…あぁんっ…あつい…あつい…たかちゃ…ん……」
「大丈夫ののみ。大丈夫、俺がいるから」
「…たかちゃっ…あああんっ!!」
びくんっと喉が仰け反って、君は俺の指に愛液を大量に分泌させた。
ぐったりとする君の身体を抱きしめながら、何度も何度も髪を撫でた。それに答えるように君は顔を上げて、俺にキスしてくる。
「…んんんっ…んん……」
自分から口を開いて舌を絡めてきた。さっき俺がしたように、懸命に君は答えてくれる。それが。それがどうしようもなく愛しくて、そして。そして俺は君を……。
「…たか…ちゃ…ん…ののみ…ののみ…」
「うん?」
「…ののみへいきだから…ね……」
「いいのか?…どんなことするのか…分かっているのか?……」
「…うん…わかってる…だいじょうぶ…だもん…だから…ね…たかちゃん……」
ぎゅっと抱きつき、震える君を。俺はもう拒む事なんて出来なかった。
おとなに、なりたかった。
そうしたらたかちゃんとけっこんできるから。
ずっとしぬまでいっしょにいられるから。
たかちゃんと、ずっと。ずっと、いられるから。
―――でも、ののみはおとなにはなれないの………
だから、ののみはほしかった。
いつかたかちゃんとさよならになっても。
さよならに、なっても。
ののみがひとりになっても、ずっと。
ずっとたかちゃんをかんじていられるように。
ずっとたかちゃんがののみのなかにいるように。
ののみは、しょうこがほしかったの。
すきってね、いっぱいあるの。
いろいろあるの。たくさんあるの。
でもただひとつだけのすきは。
ただひとつだけのすきは、たかちゃん。
たかちゃんだけの、ものなの。
これからさきいっぱいのひとにあっても…たかちゃんだけのものなの……
「―――いっ…あああっ!!!」
先端を侵入させただけで、苦しそうに顔が歪むのが分かる。一端動きを止めて、君を見下ろしたらその小さな手を俺の腕にぎゅっとしがみ付いて来て。
「…だ…だめなの…やめちゃ…だめ……」
「―――ののみ……」
「いやなの…ののみは…ののみは…たかちゃんのものだけ…になりたいの……」
「…止めないよ…ののみ…うん、止めない」
「…うん…たかちゃん…だいすき……」
「俺もだよ」
君の胸の突起に指を這わしながら、俺は身体を進めていった。端から見たら俺達は相当奇妙に見えるだろう。もしかしたら俺は許されない事をしているのかもしれない。それでも。それでも俺のこの気持ちは、本物なのだから。
―――可笑しいなら、笑ってもいい。狂っていると言われてもいい。
でも俺は誰に何を言われても君を。君だけを、愛しているんだ。誰にも分からなくていい。誰にも理解されなくていい。君だけが、分かってくれれば。君だけが、分かってくれればそれでいいんだ。
「あああああっ!!!」
血が足許に伝ってくる。それでも俺は行為を進めた。それは俺が求めて、君も求めてくれた事だから。
「…あああっ…あぁ…たかちゃ…たかちゃんっ……」
「…ののみ、ののみ…好きだよ……」
「…愛して…いる……」
かみさま、もしもいるならおしえてください。
ひとをすきになることに、いけないことはありますか?
ゆるされないことはありますか?
おしえて、ください。こどもだから。
こどもだからひとをすきになることは、いけないことなのですか?
罪とか、許されない事とか。
モラルとか、倫理とか。
そんなものなど及びもしない場所で。
そんなものなど届かない場所で。
俺達は、求め合い、想い合った。
もしもそれが罪だと言うのなら千の剣で俺の身体を貫いてくれ。
そうなっても君を。
君だけは俺の腕の中で。
俺の腕で、護るから。
…こころにそっと、りぼんをかけて……
君の中に白い欲望を吐き出した。
その瞬間になってやっと。
やっと、君は微笑った。零していた涙を。
零れていた涙を止めて、君は。
―――君は、そっと、微笑む。
「…たかちゃん…たかちゃん…だいすき……」
「うん、ののみ。俺もだよ。俺も」
「…ずっと、ずっとすきだから……」
「…ずっとののみのなかに…たかちゃんはいるからね……」
君が、俺にくれたもの。
君だけが俺にくれたもの。
…それはリボンを掛けた、ただひとつの君のこころ……
END