―――これが最期の恋でありますように。
何時もそう想いながら、ひとを愛してきた。
何時も、何時も。どんな時でも。
貴方が最期の相手であるようにと。
何時もそう思って、私は愛してきた。
……貴方が最期の恋の相手でありますように、と。
ずっと一緒にいられると、信じていたから。ずっとしあわせだと、信じていたから。
「善行くん」
貴方の眼鏡を強引に奪った。その先にある鋭い瞳が私は好き。強くて冷たくて、でも本当は優しいその瞳が。優しいその瞳、が。
「返しなさい、どうして君は何時も」
「だって見つめたいもの」
近付いて、そして抱き付いた。キスをして、みつめあう。貴方の瞳に私だけが映っている瞬間が、大好き。この瞬間が何よりも好き。
「貴方の瞳、見ていたいんだもの」
笑ってもう一回キスした。いっぱいいっぱい貴方とキスしたいから。数え切れない程のキスを。キスのシャワーを降らせて欲しいから。
「…全く君は…猫のようだ」
「くすくす、貴方の飼い猫がもう一匹増えたら、イヤ?」
「でも君は猫よりも柔らかいだろう?」
「何言っているのよ、バカ」
もう一回見つめあって、ふたりで笑った。穏やかな時間。ずっと続けばいいのに。ずっと続いてゆけたらいのに。ずっと、ずっとずっと。
「ならばその違いを試してみる?」
「でも爪で引っかかれるのは同じだ」
「くすくす、噛み付くのも一緒よ」
「怖いな、君は」
「そうよ怖いのよ。だから私だけを愛してね」
見つめあってまた、キスをした。
今度は恋人同士のキスを。噛み付くような、キスを。
―――何度も、何度も、した。
ぴちゃぴちゃ、と。舌が絡まり、濡れた音がする。室内を埋めるのは淫らな音と、甘い吐息だけ。
「…んっ…ふぅんっ…ん……」
背中に手を廻して、きつく抱き付いた。自ら縋るように引き寄せ、深く舌を絡めた。根元をきつく吸われ、舌裏を舐められる。そのたびにざらりとしたヒゲが当たり、ぞくっとさせた。このヒゲの感触が好き。貴方だけの感触。私だけが知っているこの感触。
「…はぁっ…ふ…んんん……」
蕩けるような甘いキス。貴方はキスが何よりも巧い。何時も私の意識はキスだけで溶かされてゆく。甘く危険な快楽へと。
耐えきれず私は身体を貴方に摺り寄せた。胸が潰れるほどに、ぎゅっと。ぎゅっと貴方へと。
「…んっ…んん…ん……」
それに答える変わりに貴方は私の服を脱がし始めた。私も縺れる手で貴方のシャツのボタンを外してゆく。着痩せする貴方の厚い胸板が私の前に現れる。
「…善行くんのココ…好き…」
「あ、こら」
逞しい胸板に頬を摺り寄せ、乳首を指先でぴんっと跳ねた。そのままそれを口に含んでぺろりと私は舐めた。
「…んっ…あんっ!」
しかえしとばかりに貴方の指が私の胸の突起を弾く。それだけで敏感な身体はぴくんと跳ねるのを止められない。
「…やん…意地悪……」
「君が先にやったんだろう?」
「…でもぉ…バカ……あぁんっ……」
胸を鷲掴みにされて強く揉まれる。その上に乳首を摘まれぎゅっと捩られた。その痛みとも快感ともつかない感覚に私は甘い息を堪える事が出来ない。
「…やぁん…もぉ…あぁ……」
「イヤと言いながら胸を押し付けてくるのは何処のどいつだ?」
「…そう言う事言わないのぉ…あぁぁん……」
身体は正直だった。私はもっと刺激が欲しくて無意識に貴方に胸を押し付けている。そんな私にくすりとひとつ微笑うと、そのまま乳首を口に含んだ。
「ああんっ!」
ちゅぷちゅぷと吸われながら、もう一方は相変わらず指で嬲られる。歯を立てられるたびに胸の柔らかい部分にヒゲが当たって、それがたまらなく…よかった……。
「…あぁ…ん…はんっ…あぁぁ…善行…くぅん……」
頭を抱いて、引き寄せた。刺激が欲しくて。もっともっと、欲しくて。何時しか私の秘所がじんっと痺れてまだ触れてもいないのに蜜を零し始めていた。
「…はぁぁ…あん…もっとぉ…もっと……」
「もっとどうして欲しい?」
「―――あっ!」
指と唇が胸から離れたと思った瞬間、私の最奥に指が埋められる。パンティーを付けたまま布をずらして、ずぶずぶと指がめり込んで来た。
「…ああんっ…やぁんっ…ぁぁ……」
ぐちゅぐちゅと音がする。指が花びらを掻き分けて奥に進むたびに、私のソコからはいやらしい液体が溢れてくる。
「イヤか?こっちのがいいのか?」
「やあっああんっ!!」
パンティーを付けたまま、貴方の楔が入ってきた。濡らされたとはいえまだ心の準備をする前にそ凶器は私の中に侵入してくる。奥へ、奥へと。
「ああああんっ!!はぁっあああっ!!!」
―――ズズズ…と、音がする。抵抗する媚肉を引き裂き、硬い楔は私の中に埋められる。びりっと音がして、パンティーの布が破れてゆくのが分かった。それでも貴方の動きは止まらない。パンパンと音を立てながら腰は進められてゆく。
「ああぁ…はぁぁぁ…ぜん…ぎょう…くんっ…あぁ…」
浅ましい私のソコは、この熱い肉棒を逃さないようにときつく締め付ける。子宮がじゅんっと鳴ったのが…分かった。
「…あぁ…深い…深いよぉ…ああんっ…あぁ……」
ズンズンと一番深い場所が突き上げられている。激しい快楽に意識が飛びそうになる。私は貴方の背中に爪を立てて必死で堪えた。猫のように、爪を立てて。
――――私は貴方の、一番愛されている猫になる………
「―――あああああっ!!!」
子宮に届きそうになるまで深く突き上げられて、私の意識は真っ白になった。
何時も、最期の恋だと。
これが最期の恋だと。
そう思って、恋をしてきた。
―――これが最期の恋でありますように、と。
「…帰れないじゃない、バカ…」
「どうして?」
「……下着、こんなになっちゃった……」
「ならば付けなければいいだろう?」
「貴方はそう言うのが好みなの?」
「―――悪くはないね」
「…バカ……」
ちょっとむかついたから、鼻をぎゅっとつねってみた。
貴方の眉が歪んで痛そうな顔をする。けれども。
けれども次の瞬間、くすりと笑って私にキスしてくれた。
そんな貴方の笑顔を見ながら私は祈った。
『これが最期の恋でありますように』と。
END