――――何時も願っている事。何時も祈っている事…負けないで、と。
背中の傷は消える事はないけれど。それでも癒される事は出来るから。少しずつ、少しずつ。
「…何時か、さ……」
端から見たらままごとみたいな二人。子供で、ちっぽけで、そして。そして小さな二人。世界の片隅に取り残されて、そして何処にも行けないふたり。でも。でもこうやって生きているから。
「俺が護ってやるって言えるくらいに強くなれたらって思ってる」
向き合って、二人で制服を脱がしあった。一枚ずつ脱いで、私達はそうやって一つずつ覆っていたものを外してゆく。覆っていたもの、心を護る為に作っていたもの。
「…強く…なりたいね……」
全部脱いで、そして見せた。貴方に見せた、背中の火傷の痕を。消える事ない私が背負った傷。身体と、そして心に刻まれた傷を。
「私達…強くなりたいね……」
不器用な手が私の後ろ髪を上げて、剥き出しになった痕にそっと。そっと小さなキスをくれた。ぎこちないキス。でもね、伝わるから。そこから暖かいものが…伝わるから…。
「…なりたいね…もうちょっとでいいから…強く……」
「―――なるから…必ず俺強くなって…お前、護るから……」
うん、と言おうとして言葉が出なかった。背中に舌が、触れたから。火傷の痕を辿るように舌が這わされ、それと同時に指先が触れる。それだけで、ぴくんっと私の肩が震えた。
「…滝川…くん…あ……」
ぎこちなく、けれども大事に。大切に触れてくれる指と舌。ざらついた感触が肌に当たるたびに、そこからじわりと熱が広がった。広がって、そして何時しか私の息を乱して。
「…石津……」
「…あんっ……」
舌が背中から首筋へと這い上がり、そのまま首の付け根の部分を強く吸われた。吸われてびくんっと身体を震わせれば、背後から手が伸びて来る。その手が私の胸の膨らみに触れ、そのままやんわりと揉まれた。
「…あぁ…ん…はっ……」
外側の柔らかい部分を手のひらで鷲掴みにされて、ぷくりと乳首が立ち上がるのが自分でも分かった。その立ち上がった胸の果実に指の腹が触れる。そのまま転がされ、ぎゅっと尖った胸を潰された。
「…ああんっ…あ…滝川…くんっ……」
「強くなる。俺、もっと」
何時しか唇が耳元に当たり、耳たぶを軽く噛まれた。その間も胸を弄る手の動きは止まることなかった。何度も何度も胸を鷲掴みにされ、尖った乳首を指で摘まれる。その痛いほどの刺激に、私の身体は鮮魚のように跳ねた。
「―――絶対に、強くなる」
「あああんっ!!」
脚を開かされた。私はがくがくと震える脚を堪えながら、されるがままに脚を開く。その中心に貴方の手が伸びてきた。薄い茂みを掻き分け、一番奥へと指が忍び込んで来る。冷たい指の感触にぞくりとしながらも、割れ目をなぞり中に侵入した異物に私は喉を仰け反らせて喘いだ。
「…ああんっ…あん…はぁっ……」
一人では立っていられずに体重を貴方の身体へと預ける。それを受けとめながら、貴方の指が何度も何度も私の花びらを掻き乱した。決して巧みとは言えない指先だったけれど、でも動きよりも貴方がそうしてくれているんだという事に、感じた。感じて私の花びらは蜜を零す。
「…あっ…あぁ…滝川くん…あぁ……」
こんな風に子供の私達がこうする事を、きっと大人達は咎めるだろう。けれども、私達は。私達はこうやって。こうやって確認している…生きている事を。
ちっぽけで、傷ついてばかりで。何時も何時もただ壊されてゆくだけの私達。それでも生きている私達。たくさんの傷を背負いながら、それでも生きたいと願う私達。
だから確かめる。だから、確認する。こうやって命が私達にあるんだという事を。
不器用で、何時も上手く出来なくて。
でも。でも懸命に生きている貴方を。
一生懸命傷を隠して、前を見ようと精一杯で。
わざと大きな声で明るく振舞って、子供のように。
子供のように無邪気にしている貴方が。
――――誰よりも一番近くにいるんだと…気が付いた……
俯く事しか出来なくて。誰にも気付かれないようにと。
誰にも気付かれないように、小さく。小さく蹲る私。
一番遠いと思っていた。一番私にとって遠い人だと。
でも、違ったね。でも、違っていたね。
私達は同じものを抱えていた。同じ傷を持っていた。
だからこうして。こうして分け合える事が出来る。
こうして二人で、傷口を開き合って。
そしてゆっくりと、埋めあい癒す事が出来るから。
「…やぁん…はぁっ…あぁ……」
何度も中を弄られて、一番感じる個所を集中的に攻められる。剥き出しになったソレをぎゅっと摘まれ、どろりと私の蕾から蜜が溢れた。それでもまだ。まだ、指の動きは止まらない。
「…滝川…くん…もう…も…う…っ…あ……」
私の背中に硬いモノが当たった。それが貴方自身だと気付くのに時間は掛からなかった。どくどくと脈打つ音が、背中から伝わる。熱く硬くなって私を求めているソレを。
「…これ…を……」
震える指を背後に廻して、私はソレに触れた。充分な大きさと角度を持ったソレを、私は指で包み込み、入り口へと導いた。しっとりと蜜に濡れた花びらに。
「―――石津……」
「あんっ!」
ずぷりと指が花びらから引き抜かれる。そして私の絡まっていた手が掴まれ、そのまま床に身体を押し倒された。よつんばえの格好にされ、腰を掲げられる。ひくひくと恥ずかしく蠢く花びらが貴方の眼下に剥き出しにされ、私は羞恥のあまり肌をさぁぁっと朱に染めた。
「…ちゃんと俺達…大人になろうな……」
「…滝川…くん……」
「…自分の子供を虐待なんてしない、きちんと育てられる大人になろうな…」
「…うん…ちゃんと…ちゃんと…大人になろうね……」
「俺達、立派じゃないけど…それでも知っているから…痛みとか、傷つく事とか分かってるから」
「…うん…そうだよね…そうだよね……」
「…ちゃんと大人に…なれるよな……」
うんと、言葉にする前に。言葉にする前に貴方の身体が私の上に覆い被さり、そして。そしてひくひくと蠢く秘所に、貴方はその楔を埋め込んだ。
大事な事を、大切な事を。
私達は子供だけど知っている。
子供だけど、知っているから。
だから大人達が何を言っても。
どんなに傷つけても。どんな事を言われても。
――――私達は知っている。私達は…知っているから……
生きてゆける。貴方となら、生きてゆける。馬鹿みたいだけど、思っている。ずっと、思っている。
「…あああっ…あぁぁ……」
そんな事を子供の私達が考えるのが変だって、言われるかもしれない。そんな事をろくさま生きてない私達が言うのは間違っていると、そう言われるかもしれない。
「…石津…石津……」
でも私達は考えている。私達なりに一生懸命に、考えている。子供だって、ちっぽけな存在だって、ちゃんと。ちゃんと私達は自分の意思を、気持ちを、持っている。
「…滝川…くん…滝川…くん…あぁっ…あああ……」
気持ち、大切な想い。誰も教えてくれなかったから、私達ふたりで憶えたの。誰も与えてくれなかったから、ふたりで分け合ったの。
精一杯、生きていくことを。一生懸命生きてゆく事を。
繋がって、何度も繋がって。
「…ああ…もうっ…もうっ……」
ぐちゃぐちゃと音を立てる接合部分と。
「…あぁ…もう…私…あぁ……」
甘く溶ける悲鳴だけが。重なり合う鼓動だけが。
「―――あああああっ!!!」
…今の私達が…確認出来る事だから……。
いっぱい、いっぱい、傷つけられてきたね。
ぼろぼろになって、何もかもが壊されていって。
それでも何処かで諦めきれなくて。やっと。
やっと探し出したもの。やっと、見つけたもの。
互いの傷が剥き出しになっても、それを埋め合える手を。
「…いつか…ちゃんと…大人になって……」
「―――ああ……」
「…私達…大人に…なって……」
「ああ、家族作ろう。傷つけあうことない、家族を」
「…うん…うん……」
見つめあい、ふたりの瞳から零れる涙。綺麗な、涙。
それを私達は決して。決してなくしはしない。
どんなになってもこの涙を流せる大人になるように。
―――どんな時も、綺麗な涙を…見失う事がないように……
END