月の缶

子供のような笑顔で、大人の残酷さを持つ人。そのアンバランスさが、好きなの。


「速水くん」
歩いている背中をつつつっと、指でなぞってみた。ぴくんっと肩が揺れる。それがひどくおかしかった。
「は、原さん…何するんですか…」
少しだけ呆れながら振り返って私を見下ろす瞳。その瞳が憎たらしくて鼻をぎゅっと抓ってみた。憎たらしくて、でも大好きよ。
「――もう…何子供みたいな事を…」
「いいじゃないたまには、ね。そんな私は嫌?」
「嫌じゃないですよ、大好きです」
ここが渡り廊下でなかったら今貴方に抱き付くのにね。上目遣いに貴方を見たら、考えている事が分かったのか手を引かれて。
「ここなら誰も、いないよ」
と、無人の教室に連れて行かれた。――そんな貴方が、大好きよ。


「私達ってケモノみたい」
「どうして?」
「だって逢えば何時もえっちしている」
「それだけ原さんが好きだから」
「上手いわね。でも私も好きよ」

「貴方が、大好きよ」


首に手をかけて、そしてそのままキスをした。いっぱいいっぱい、キスをした。


「…んっ…ふぅっ…ん……」
絡めて。指を、絡めて。舌を、絡めて。ぐちゃぐちゃに絡め合って。そして。そして溶け合えたならば。
「…キス…上手くなったわね……」
繋がっている指は離したくないから、そのまま。そのままにしながら、私は机の上に座った。そうして私の元へと貴方を引き寄せる。
「原さんが、教えるの上手いから」
「くす、言うようになったわね」
「貴方と付き合う男だから、それくらいは言わないと…大好きですよ」
指が離れた。そしてそのまま制服のボタンに指が掛けられる。プチンと音を立てながら、ボタンが外されていった。
「―――誰かが来たらいい訳出来ないわね」
「いい訳なんて必要ないですよ。ばれたらそれまで」
「ふふ、そうね」
フロントホックの前を外されて、胸が外へと零れる。全部脱がされるよりもこう言う格好の方がえっちよね、ってちょっと思った。
「…あんっ……」
剥き出しになった乳房に指が触れる。ひんやりとした指先が気持ちいい。でもそれはすぐに熱を伴っていったけれども。
「…あぁっ…ん…速水…くん……」
「原さんの胸大好きです。柔らかくて、大きくて…気持ちいい」
「…胸…だけ?…」
「もちろん他の所も、大好きですよ」
「…あぁ…あん……」
指先で乳首を捏ねられながら、一方の乳房を口に含まれた。ちろちろとした舌が胸の突起をいたぶる。それが凄く気持ちよくて。
「…はぁぁっ…あんっ…あぁん……」
貴方の髪に触れた。柔らかい癖のあるその髪に。指を絡めて引き寄せて、そして。そして胸を押し付けて、もっともっととねだる。
――――浅ましい女かもしれない…でも…私は女である自分で貴方の全てを感じたい。
「…ああ…ん…イイ…速水…くぅんっ……」
ぴちゃぴちゃと舌が突起を嬲っている。先端で突つかれ、歯を立てられる。その痛みを伴うほどの刺激が私には堪らなかった。
「…あぁっ…ん…ぁぁ…速水…くん…は……」
「原さん、可愛いですよ」
「…あ、…んっ!…」
胸から唇が離れたと思ったら、今度は私の唇を吸われた。私はそれに答えるように唇を薄く開いて、再び舌を受け入れる。
キスは、好き。いっぱい、いっぱいしても。全然足りなくて。足りないからもっと求めてしまう。
「…んんんっ…んんん…ん……」
その間にも貴方の手は私のスカートの中へと入ってゆく。私は脚を広げて少し腰を浮かして、貴方の手を迎え入れる。
「―――んっ!!」
指がパンティー越しに触れた。割れ目を布越しでなぞりながら、くいっと指を突き入れる。私のソコはすでにじわりと濡れて、布に染みを作っていた。
「もう湿ってる、原さんのココ」
「…あぁっ…ん…だって…待ってたんだもの…」
「僕を?」
「…そうよ…ココに貴方が欲しくて…ずっと……」
「そんな可愛い言葉言わないでください。僕どうしていいのか困りますよ」
「…困らないでよ…っあんっ!」
会話の間中軽くソコに触れていた指が、パンティーの隙間から直に触れてくる。それだけで、私のソコはじゅんっと潤った。
「…あぁっ…ん…ぁ…やぁん……」
ぐりぐりと指で掻き乱され、私のソコからはとろりとした蜜が溢れ出す。耐えきれずに背中に廻した手に力を込めて、そのまま抱き付いた。
「イヤって言っている割に身体を押し付けてくるのは、どうしてですか?」
「…もぉ…そう言うコト…言わないのぉ…ばかぁ…ああんっ……」
「そんな所が…可愛くて仕方ないんですよ……」
「…ふぁっ…ひゃんっ……」
引っかかれるようにクリトリスに爪を立てられ、一瞬意識が飛びそうになった。このままイッてしまいそうな程に。
「…ぁぁっ…あぁん…もぉ…イッちゃ…う……」
「駄目です、イク時は一緒ですよ」
貴方はにっこりと微笑うとズボンのベルトを外して、熱く滾った自身を取り出した。
「…速水…くぅん……来て…ねぇ…ココに……」
私は腰を上げて自らパンティーを脱いだ。そして濡れた秘所を貴方の前に見せる。指で押し広げて、剥き出しになったクリトリスを。
「…ココに…貴方の…挿れ…て……」
「ええ、いっぱい。いっぱい、上げますよ」
―――ぐちゃんっと濡れた音がして、私達はひとつに繋がった。


狭い入り口を引き裂き、熱い塊が私の身体を引き裂く。それが。それが狂うほどに気持ち良くて。
「…ああああっ!!…あぁ……」
先端の尖った部分がクリトリスに触れる度に、感じる個所が擦れ合うたびに、私は。私はもうどうにもならなくなって。
「…あああっ…あぁぁ…速水…はやみ…くぅんっ…あああ……」
「今日の原さん…何時もよりも締め付け凄いです…ここが教室だから?」
「…そんなのっ…関係…あああんっ!!」
「こんな淫らな姿誰かに見られたら…って見せたくないですけどね」
「…あぁぁっ…あああんっ……」
「僕だけのものに、したいから」
「――――あああああっ!!」
私は貴方の言葉に、イッてしまった。まだ私の中に熱い液体が注ぎ込まれる前に。その前にぎゅっと貴方を締め付け、大量の蜜を分泌させる。
「もうイッちゃったんですか?僕まだイッてないのに…」
「…あああんっ!!……」
腰を掴まれ、揺さぶられた。私は達した筈なのに、また背中からじわりと快感が這い上がって来るのを止められなくて。
「…ああああっ…ああぁぁ…あんっ……」
がくがくと腰を揺さぶられ、そして。そして最奥まで抉られて。
「―――出しますよ、いいですか?」
その言葉に私は無が夢中で頷いていた。


ケモノのように抱き合う。
何度も何度も重ね合って。
何度も何度も繋がって。
繋がって、交じり合って。
そしてぐちゃぐちゃになって。

―――ひとつになれたならば、しあわせ。




「…原さん…可愛い…大好きです……」



その言葉を言われる為だけに。
その言葉を言ってもらう為だけに。
生まれて来たって言っても、私は。

私は信じられるから。



―――私も貴方が…大好きよ……

 


END

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