アツイナミダ

頬から零れ落ちる熱い涙を、その指がそっと。
そっと拭って、くれた。

気付かなかった事が、分からなかった事が見えた時。
怖いほどに臆病に、そしてひどく優しい気持ちになれた。


その大きな手が、そっと頬を撫でてくれた瞬間。私はきっと。きっと泣いていたのだろう。
「―――そなたは……」
大きな、手。この手が全てを護る。この手が全ての痛みと、全ての哀しみを受けとめて。そしてそれ以上の優しさと暖かさを、私に与えてくれた。
「どうしてこんなにも」
見上げて、見つめる瞳。蒼いその瞳に映る自分の顔がひどく不器用な顔をしていて。ひどく不器用だったから、何だか少しだけ可笑しかった。
「優しい手を、しているのか?」
口許だけで微笑って瞬きをしたら、ぽたりと。ぽたりとひとつ、瞼から雫が零れ落ちた。暖かい涙、だった。
「それはお前に触れているから」
指先がそっと涙を拭う。そのまま頬を包み込み、そして。そして優しく抱きしめられて。広い力強い腕に、抱きしめられて。
「お前といるから…俺は優しくなれる……」
そのままゆっくりと口付けられて、私はただ目を閉じる事しか出来なかった。


他人の事にはひどく鈍感だった。
廻りがどう思おうが、私は『芝村』で。
そう言う生き方しか知らなかったから。
だから自分がどう思われようが、どう言われようが気にも止めなかった。
―――気に止めなかった筈なのに。
ふとした瞬間に、気が付いた。ほんの些細な瞬間に気が付いた。
自分が廻りにどう思われ、そしてどう言われているのかを。
私の事を何も知らない人間に何を言われても、と思っていた。
別にどうって事はなかった。なかった筈なのに。

―――何故かひどく傷ついている自分が、いた。


「…気の利いた言葉が、言えればいいのに……」
抱きしめられながらそっとベッドの上に押し倒された。初めてこの行為を受け入れた時は、ただ痛みしかなかったのに。ただの痛みしか感じなかったのに。今は。今はこうされる事が一番、安心出来るようになっていた。
「お前が泣いているのに俺は…何も言ってやれない……」
「―――言葉なんて、いらない」
背中に手を廻す。広い背中に触れているだけでひどく安心出来るのは。こうしているだけで安心出来るのは全て。全て、そなたがいたから。何時もそばにいてくれたから。
「言葉なんてなくても…私には分かるから……」
独りでいるのが当然だと思っていた私に、気付けばそなたが何時もそばにいてくれた。それはごく自然に、本当に自然に私の周りにいて。そして。そして暖かい空間を感じさせてくれたから。
「…銀…河……」
分からなかった、気付かなかった。人を好きになると言う事が、こんなにも不安でこんなもしあわせで。他人からどう見られようとも気にならなかったのに、そなたにどう見られているのかは気になって。それが気になったら…廻りの視線も自然に見えてきた。
「…私はそなたの…優しさが…好きだ…見えないけどここにある優しさが……」
「優しさだけか?」
「……他も…全部……」
「ああ」
「…全部好きだぞ……」
それ以上言葉を紡げなくなった私にそっと。そっと唇が降りてくる。そのキスを受け入れながら私は戸惑いながらも唇を薄く開いた。その中に舌がゆっくりと忍び込んでくる。
「…んっ…ふぅっ…ん……」
逃げないように必死に、私はそなたの舌に絡み付いた。自分からした事はなかったけれど、今は。今は自分からこうしたいと思ったから。
「…はぁっ…ふ…」
根元を吸い上げられて、私は耐えきれず背中に廻した腕に力を込めた。口中を蹂躙する舌の動きは、私の口許に飲みきれない唾液を伝わせた。
「…んんんっ…ん……」
けれどもそれすらも次第に気にならなくなってくる。求められる舌の動きに必死に答えているうちに、そんな違和感も忘れてしまった。ただ今は夢中に。夢中になって、そなたの動きに付いてゆくだけで。
「…はぁ…ん……」
やっとの事で開放されて、私は思わず息を大きく吸った。そんな私にそなたはくすっとひとつ微笑う。優しい笑みだった。優しすぎる笑み、だった。
「…銀河……」
名前で呼ぶようになったのは何時からだっただろうか?綺麗な名前だと思った。何時か呼んでみたいと思った。そなたの名前、を。
「―――舞……」
大きな指が服のボタンに掛かるとそのまま一つづつ外された。こんな風に男の人に服を脱がしてもらうのは、父親以外にはいないと思っていた。
「…あっ……」
全て脱がされ剥き出しになった胸をそっと揉まれる。初めは柔らかく、次第に強く。その強弱が私を刺激した。
「…あぁ…あん……」
乳房の外側を揉みしだかれながら、突起を指の腹で転がされる。くりくりと指で弄られ、耐えきれず私は首を左右に振った。
「…あぁっ…あ…はぁんっ……」
乳首に生暖かい感触を感じる。そなたの舌が当たったからだと分かった頃には、突起は既に口の中に含まれていた。そのまま嬲られ、突つかれる。生き物のように蠢く舌の動きに奔流され、何が何だか分からなくなってくる。
「…ふぁっ…んっ…あぁんっ……」
たっぷりと胸を弄られてやっと開放された。けれどもほっとする間もなく指先は私の弱い所を攻め立てる。私の身体を全て知り尽くした指先が。
「…あぁっ…やぁっん…ぁ……」
耳たぶを噛まれながら、身体を滑ってゆく指。私がぴくんっと跳ねた個所を集中的に攻め立てる指。何時も私は。私はそうやって追い込まれてゆく。
「―――ああっ!!」
茂みに辿り付いた指が、そのまま最奥へと忍び込んでくる。入り口をそっと指で広げてから、中へグイッと挿れられた。
「…ああっ…あん……」
ぐりぐりと掻き回されながら、時々的を得たように一番敏感な部分に触れる。触れたと思ったら別の場所を弄り、そしてまたソコを攻められた。
―――もう、何も考えられなくなってゆく……
「…ああ…あん…はぁぁんっ……」
私は何時しか無意識に腰を押し付けていた。それに答えるようにそなたの指の動きは激しくなる。媚肉を押し広げられ、入り口をなぞられて。中を掻き乱され、内壁を抉られて。もう何も。何も、考えられなくなっていた。


気が、ついた。そなたの愛撫が何時もより激しいのは。
そなたの動きが何時もより性急なのは。
――――今、気がついた。
私が考えてしまう余計なものを、そうやって。
そうやって、取り除いてくれているのだと。
そうやって私が何も考えなくてもいいようにと。
そして。そして何よりも。

―――そなたがこうして、そばにいてくれると言う事を…伝えてくれているのだと……。


「あああああんっ!!!」
ぐちゃんっと音がして、熱い塊が私の中に入ってる。全ての思考を奪う激しさで、そなたは私の中を掻き乱す。熱く硬いモノは、容赦なく私の中を征服してゆく。
「…あああっ…あああ…あぁんっ……」
けれども今は。今はそれが何よりも嬉しかった。そなたの存在を直に感じて。そなたの想いを、感じて。熱く激しいその想いを。
「…舞……愛している……」
「…銀…河…あぁぁっ…あぁ……」
感じる、そなたを。こんなにも求めてくれるそなたの想いを、感じる。それはこうして抱かれるまで知らなかった想いだった。気付かなかった想いだった。何よりも苦しいけど、何よりも嬉しい想い。他人に愛されると言う事が、こんなにも私を強くし、そして弱くするのだと初めて知った事。でもそれは。それはそなた以外からは教えてはくれなかった。そなた以外からは知りたくはなかった。
「…あぁぁ…もぉっ…ああんっ…あん……」
「もっとしがみ付け、俺に」
「…銀河…銀河…あぁぁぁっ……」
「この背中はお前だけのものだ」
「―――ああああああっ!!!!」
最奥まで抉られて、熱い液体が注がれたと感じた瞬間。私は意識を失った。



お前がどんなに優しいか。
お前がどんなに不器用か。
俺が、知っているから。
例え誰に何を言われても。
俺には分かっているから。

―――お前ほど、優しい女は何処にもいない…と。


誰よりも俺は、お前を。
お前だけを見ていたから。
お前だけを愛しているから。

―――お前だけをずっと、愛しているから……



気を失ったお前の身体をそっと、抱きしめた。その瞬間。
「…ん……」
寝返りを打ったお前は、擦り寄るように俺の腕の中に入ってくる。けれども口許から聴こえてくる寝息が、意識のないものだと伝えていたが。
―――伝えていたけれども……


眠るお前の顔は、まるで子供のように微笑っていたから。



その優しい夢を邪魔しないように、俺はお前の後を追った。
頬に流れていた熱い涙は、何時しか。

―――何時しか乾いて、そして消えていた。


END

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