貴方の腕の中で眠る事が、一番幸せな瞬間。
キスしている時よりも、セックスしている時よりも、こうやって。
こうやって貴方の腕の中にいる事が、何よりものしあわせだと気付いたのは…。
気付いたのは、何時だっただろう?
夢に眠る貴方の中で、私はひどく子供になっていた。
「…素子…くすぐったいよ」
腕の中でもぞもぞと動いたら、貴方は微かに目を開けてそう言った。声が少し掠れていてまだ何処か寝ぼけていて。そんな貴方の何処か子供みたいな所が見られて、私はひどく嬉しかった。
「ふふ、ヒゲ」
「ん?」
「伸びている」
貴方の顎に手を当てて、そのまま指を尖ったラインに這わした。ざらりとした感触が指に伝わって。
「…男だからね、一日でも伸びるさ」
「こっちの方がくすぐったいわよ」
「……君は………」
「だからおあいこ、ね」
くすくすと笑って、私から。私から貴方にキスをした。甘く溶けるようなキスに、全ての想いと心地よさを込めて。
腕の中にいて、キスしているのは…眠るよりも気持ちいいかも…しれない。
髪を撫でられるその瞬間が、好き。繊細で綺麗な指先が私の髪を撫でるこの瞬間が。
「…んっ…ふぅっ……」
上から被さるようにキスをして、唇をなぞった。それに答えるように薄く開いた唇に、私の方から積極的に絡め取った。まだ意識がはっきりしていないせいか、何時もよりも反応が鈍い。それが少しだけ新鮮で、私は何度も貴方の舌を貪った。
「…んんっ…はふっ…んんん……」
飲みきれない唾液が私の口許から零れて下にいる貴方の顎に伝う。うっすらとヒゲの生えて来た貴方の顎に、私の唾液が落ちてゆく。けれどもそれには手を触れず、私はまだ貴方の唇を求めた。
「…素子……」
「…はぁっ…ぁっ……」
やっとの事で唇を開放すると、零れた唾液で貴方の顔は濡れていた。私の顎にも同じくらい液体は伝っていたけれども。何だか貴方を汚しているみたいでぞくりと、した。
「君は…寝起きなのに私を襲うつもりかい?」
手が、伸びて来て私の口許を拭う。自分よりも先に、私に触れてくれる指先。綺麗な指先…大好きよ。
「…だって貴方の寝顔みたら…欲情しちゃったのよ、ほら」
貴方の空いている方の手に指を絡めると、私は何も身に着けていない自分の秘所へと導いた。そこは既にしっとりと濡れていて。
「―――本当だ…全く君はとんだ淫乱だな」
「…あんっ!」
くちゅりと音とともに貴方の指が私の中へと入ってくる。濡れぼそった花びらを掻き分けて、奥へと侵入してくる指。窄まる媚肉を押し広げるように、中をかき乱す指。
「…あぁっ…ん…はっ…あぁ……」
「あれだけやっても、まだ私を締め付ける」
「…だってぇ…あぁ…んっ……」
くちゅくちゅと濡れた音が耳元に響いて私の身体の芯を、じいんっと震わせた。わき上がる快感を抑えきれなくて。
「…ふ…くぅっ…ん…は…んっ……」
中を弄られながらも私は舌を伸ばした。そして貴方の顎のラインを辿る。私の零した唾液を舌で掬い上げる。けれども時々的を得たように私の中を抉る指先のせいで、上手く掬い上げることが出来なくて。
「ちゃんと舐め取るんだよ…素子……」
「…んっ…ふっ…んん…ん……」
ぺろぺろと犬のように貴方の顔を舌で舐める。その間も貴方の指は私の弱い部分を攻めたてた。中を抉りながらも空いた方の手で剥き出しになっている乳房を鷲づかみにする。それだけで乳首がぴんっと張り詰めた。
「…んん…ふぁっ…ぁ…もぉ…やんっ……」
「何がイヤなんだい?」
「…意地悪…しないでぇ…これじゃあ…あぁ…舐められ…ないっ…あぁ……」
普段よりも力を込めて胸を揉まれる。その痛いほどの刺激と、優しく中を掻き乱す指と、その正反対の刺激が私を狂わせる。耐えようとしても耐えきれなくて、口からは甘い吐息が零れるばかりで。そのせいで貴方の顔を…綺麗に舐められなくて。
「…あぁっ…ん…やぁ…ん…だめぇ…あぁ……」
「ダメだよ、君が零したんだ。ちゃんと綺麗に舐めるんだよ」
「…ふぅっ…はぁっ…んん…んん…はっ……」
意地悪な、貴方。そう言いながらも、胸を揉む力は強くなって。そして尖った乳首を爪で引っ掻いて。私の中の指の本数も、何時の間にか三本に増やして。ぐちゅぐちゅと、押し広げながら、中を掻き回して。そんな状態で私が。私が声を堪えることが出来ないって知っていて……。
「…あぁっ…ん…あぁ…もぉ…ダメ…私…あぁっ……」
がくがくと脚が震えているのが分かる。もう耐えきれない。このままたと私…私……。
「しょうがない子だね、君は」
くすりと貴方が微笑うと、乗っかっていた私の身体をベッドの上へと位置を逆転させて。そして。
「―――でも好きだよ」
そして腰を掴むと、そのまま私の中へと貴方が挿って来た。
「あああああっ!!!」
挿ってきた、瞬間に。私はその刺激と肉の擦れる感触だけで、イッてしまった。意識が、視界が、真っ白になる。けれどもそのまま私が意識を手放すのは許される筈も、なくて。
「…あああ…あああんっ!」
挿入したきた楔が、奥へ奥へと私を貫く。まるで子宮にまで届きそうなほど深く、私を貫いて。
「…ああんっ…あああっ…熱…い……」
焼けるような熱さが私の身体を貫いて、擦れ合う肉から生まれる熱が、内側から私を溶かしてゆくようで。何度も、何度も、奥まで私を。
「…熱い…よっ…溶けちゃうっ…あぁ……」
「うん、君の中熱いよ。私も…溶けてしまいそうだ……」
「…あああっ…あんっ…あんっあんっ!」
がくがくと腰を揺さぶられ、何度も何度も抜き差しを繰り返されて。再び私は昇りつめていた。意識が白ばんで来て、そして。そして私の中の貴方も自身を激しく主張して。私の中でその圧倒的な存在感を。
「…ああ…もぉ…もぉ…私っ…ダメぇっ…あ……」
「―――私も限界だよ、素子」
「ああああんっ!!」
最奥まで貫かれ、中に白濁した液体を注がれて、その瞬間私はまた意識が一瞬真っ白になった。
「…今度こそ、私を眠らせてくれるかい?」
撫でられる髪と、与えられる柔らかい笑み。ふふ、しあわせ。この瞬間が一番、しあわせ。
「でも私が眠るまで、髪を撫でていてね」
だから貴方とセックスするのが好きなのかもしれないって言ったら、怒るかしら?でもね。でもこうして貴方の腕の中で、髪を撫でてくれる時が、一番好きなんだもの。一番この瞬間が、大好きなの。
「全く君は我侭だ…でも……」
「…私はそんな君が…大好きだよ……」
…しあわせ。貴方の腕の中で眠る…しあわせ……
END